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154 18歳 night of ザラキエル湖

アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。


『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。


「こちら側はあまり来ないと言っていたね。父の治めたクーデンホーフ領に海は無かったのだが、夏になると一山超え海のある隣領へ保養に出かけたのだよ。両親も妹も、体調が良ければパウルも一緒に。ここはあの時見た景色によく似ている…」


普段遊びに行くのはもっぱらビーチ側ばかり。だからシュバルツが北側に案内してくれたのはちょっと意外だった。


「パームツリーの並ぶ湖畔も良いけど…、僕はこの無骨な、岩場のある北の湖岸が好きだよ。ここはシュバルツみたいだ。飾り気のない硬派な景色。いつでも実直で嘘が無いシュバルツと同じ。だから安心する」


「それは…、褒め言葉ととっても構わないのだろうか?」

「もちろんだよ」


足場といい散策には砂浜の方が向いている。だけどおそらく彼が郷愁を掻き立てられるのはこの北側の風景。

幸せだったころの楽しい思い出がいっぱい詰まった大切な場所。だから大切な話とやらをここでしようと思ったのか。


「ではその言葉に勇気を貰いあなたに告げよう」

「ん?」


シュバルツにしては珍しく声が震えているような気がする…。気のせい…?


「レジナルド殿、どうか…、どうか私と添い遂げて欲しい。もちろんあなたにはアルバート殿下がおいでになる。だから側夫で構わない。私の伴侶となっていただきたい」

「んん?」


今なんか…よく分からない言葉が聞こえたような…。伴侶とか。


「セザール殿がそうしたように…、その立場に私が名乗りを上げるのはおこがましいだろうか?」

「んんん?」


せ、セザール?何?


「何もかもあなたに甘えておきながら重ね重ね厚かましい…そうお思いになるのも当然だ。だが私はこのクーデンホーフ領を、エトゥーリア本国のどの領よりも栄えさせるとここに誓おう。そしていつかは必ずあなたに相応しい男になって見せる。その将来性を買っては貰えないか」


「ちょ、ちょっと待った!」


何の話だかさっぱりわからない!


「シュバルツはやっと爵位も領地も取り戻してようやくこれからだ!って言うのに僕の側夫だなんて…、駄目だよそんな!何言ってるの!シュバルツはちゃんとお嫁さんを貰ってこのクーデンホーフ侯爵家を守っていかなくちゃ!」


「私が守りたいのは貴方をおいて他には居ない!これはパウルの望みでもあり、カールの賛同も得ている」

「ま、護るって、何から⁉」


彼の口から語られるのは石橋を叩いて叩いて叩き壊して、それでも不安で川底に潜って危険物が無いか確認するような…、それくらい荒唐無稽なあり得ない話で。考えすぎだとそう笑って誤魔化そうとして……途中でやめた。


その顔は今まで見た事無いくらい真剣で…だから僕も茶化さないで真剣に話さないといけない、そう思った。


「シュバルツの気持ちはすごく嬉しい。でも僕はシュバルツの…この世界に生まれてきて良かったって…、そんな風に満たされたシュバルツの未来を見るのがずっと楽しみで…、なのにその本人を犠牲にするようなことは出来ないししたくない。だからこの話はもうしないで」

「なんという…。ではこれが私の気持ちから出た言葉であるなら頷いてくださるのか!」


「え…」


「初めてお会いしたのは貴方がまだ十三の時だ。貴方は子供でありながら既に高貴な光を纏っておられた。私はその光に導かれここまでなんとか生きてきたのだ。あなたの居ない人生など今更どうして考えられよう…。私は貴方から失った以上のものを与えられてきた。その中でも最も光り輝くものがこの、…貴方を愛する気持ちだ」


「シュバルツ…」

「貴方を愛している」


いつの間にそんな気持ちを向けられていたのか…

でもハッキリとわかる。これはキュン魔力とか…そういうものじゃない


「大恩あるあなたに対しこの秘めたる思いを唇に乗せる日は来ないだろう…そう思っていた。だが彼らを見ていて分かった。卑屈になってはいけなかったのだと…」


いくら鈍い僕でも分かる。彼は心から僕に愛情を示してくれているのだ。


「身分や立場を小心の言い訳にするなど、平等を尊ぶ貴方に対しこれほどの無礼があるだろうか。考えずとも分かり切った事だというのに…私は愚かだ」


彼らってヴォルフやアーニーのことか…


地位や身分をもたない彼らは面倒な事などはなから考えない。そこにあるのは僕との信頼関係だけだ。

そのヴォルフともアーニーとも親しいシュバルツは僕たちを見て思うところがあったんだろう。


「だからと言ってあなたに何を望むわけではない。ただ、ただ私は…起こり得るどんな厄介ごとからもあなたをお護りするための防波堤となりたいのだ。頑固さゆえに全てを失いかけた私だ。どんな荒波にも耐えられよう。適任だと思われないか?」


「相当な強度だね…」


「ふふ、だがそのためには社交界に向けてハッキリ明言できる強固な立場が欲しい」

「シュバルツ…」


「セザール殿は本当に良い知恵をくれた。ランカスター公爵家当主の側夫…か…。それによって私はエトゥーリア侯爵位の末席から立場を上げることが出来る。さすれば無用な軋轢を生まずとも社交界をけん制できる」


同じ轍は踏まない…、シュバルツの成長をこんな形で知ることになるとは。


「自己満足と笑ってくれて構わない」

「…えーと…」


どうしよう…、何かホントにエトゥーリアから命でも狙われてるかのような話になってしまった。

よしんば本当に命を狙われたところで僕は誰より強いのに…


大体シュバルツはどうしてこんな考えに至ったのか。その理由を僕が知るのはもう少し後のことになる。


けど…、真面目で一本気なシュバルツはきっと思い込んだら決してそれを曲げることは無くて…僕を護るというなら護るし想うというなら本当にずっと想ってくれるんだろう。きっと共に白髪の生えるまで。


『恋エロ』と言う鬼畜ゲーに生まれ、不幸にも全てを奪われるはずだったシュバルツ。

その彼が幸運にもフルカンストの僕と出会って分岐を変えた。

なら僕は分岐の先にあるシュバルツの運命を最期まで見届けたい。そう。共に白髪の生えるまで。


覚悟には覚悟で応える。それが男だ!

…ま、いうて名前だけのことだし。


「シュバルツ。そこまで言ってくれるなら僕は貴方の申し出を受けても良いと思ってる。側夫…そんな立場に貴方を置くのは不本意だけど…シュバルツがそれでいいなら。その代わり約束して」


ある意味良い機会か…


「僕はシュバルツの愛情は受け取っても恩返しは受け取らない。あれは全部僕が勝手にしたこと。だから恩に感じるのはもうおしまい。だって家族になるなら僕たちは対等だよね。そうでしょ?」


「…心しよう。」


「それからもう一つ。あの、もしも…、もしもだよ?もし心を動かされる女性とこの先出会ったら…、その時は絶対僕に気兼ねしないで。僕はクーデンホーフの輝かしい未来も信じてる」


「…わかった。約束しよう」


「僕を想ってくれてありがとう。これから敬称は要らないよ。帰って来たらレジナルドって呼んで。ねっ?」

「ああ…!」



これで何の憂いも無くドワーフの国へ行けそうである。良かった良かった…よね?








毎日更新を目指しています。

お星さまをぽちっとしていただけると大変大変嬉しいです。作者の励みでございます(;^ω^)


この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)

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