143 18歳 at 王家の晩餐会
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
「本日はご招待いただきありがとうございます」
「いいや。デュトワ家の息子や第三王子であるヴェルナーから色々と話しを聞いていてね。一度直接会ってみたいと思っていたのだよ」
予想に反して穏和な感じのするウルグレイス国王。
けれどその眼の奥には神の名のもと、ゲスマンの侵攻を一度足りとも許さなかった苛烈さが隠されている。
この国のシンボルである平和の象徴、鳩。よそ者に容赦ないのが鳩の本性。油断禁物だ。
和気あいあいと進む洗練されたディナー。この国では料理までがまるで芸術のよう。
味は…クラレンスに軍配だな。なにしろあそこは食に関して、お腹をすかせたゲームのシナリオライターが己の願望を全力で反映してるから…多分。
どうと言う事もない会話を楽しみながらの食事を終えると、女性陣は退席し男だけでワイン片手に歓談が始まる。
「まずはゲスマンの件、礼を言おう。」
「いえいえ、停戦云々は降ってわいた幸運ですから。僕は何も…」
「だがエトゥーリアの事もあるのでね。やはり礼を言おう」
えー?あれは勝手に割り込んだんじゃないですかね?
「君が狂魔力を制御してくれたおかげで悉く解決が容易であった。やはり全ては君の力あってこそだ」
…否定はしない。もっと褒めてくれてもいいよ?
「なんでもその狂魔力とはクラレンス王が代々受け継ぐ光の力を増強しようとした成れの果てなのだとか」
「よくご存じですね」
「我らもやはり代々受け継ぐ王家の力を持っているのでね。力は違えど立場は同じ。気に留めておるのだよ」
「まあ隠している訳ではないのでしょうし」
「…君は知っているだろうか?魔法を行使する人々が元は同じ民であったと言う事を」
「ええ」
なんでもその民たちが各地に流れ、その土地土地で建国したという流れだったはずだ。
「何千年もの遠き古。その民こそがこの地で生まれたハーフエルフたちだ。だが幸いにして我々の始祖はエルフ族の姫を母に持つ。それゆえ彼ら古きエルフはこの地に根を下ろした。だが古きエルフと折り合いの合わぬ未熟なハーフエルフは早々にこの地を離れ、他の地に住む人間種たちと結ばれその血を薄めていった」
「…そう…か…、あ!だから魔法の力が!」
「そういうことだ。結局気難しい古きエルフたちはこの国をも去ってしまうのだが…これが同盟三か国の成り立ちだ」
「実に興味深い…」
「そこで私はこう考える。全ての源はここウルグレイスであり君も私たちも元は同じ血脈であると…」
「それはまた随分大きな括りですね」
ウルグレイス王は何を言おうとしているのか。常に直球で要求をぶつけるクラレンス王とは真反対。まどろっこしい…
「君は弱者の救済に力を尽くしていると聞く。君の隣にいるデュトワ家の三男に聞いたのだが、君は不当な差別をなくし仁の国を作ろうとしているのだとか…。なれば我が国と君は神の名のもと人々の公平を謳う、同じ志を持った同士と言えるのではないかな」
「少し違いますね。僕は公平が美徳とは少しも思いません。ウエストエンドにだってちゃんと立場ごとの上下関係はありますし基本的にうちは成果主義です。そのうえで互いの立場に敬意を払い、人として平等であるべきだとは考えています。身分や立場で人を蔑んでいいはずがない」
公平を謳う余り、雇い主である領主下の労働階級において賃金格差の無いウルグレイスには賛同できない部分もあるのだ。
資本主義の前世に生まれた現代人である僕は、むしろ努力は努力分報われるべきだといつも思っている。
質素でいいから勤労はほどほどに、と言う考え方も尊重するけど、アリとキリギリスが公平に労われたらそれはそれでモヤっとするでしょうが!
「だが全ては弱き民の為…、その過程に〝救済のラビエル”〝死の天使ザラキエル”の異名もあるのであろう?」
「何を言いたいのでしょう…?」
ハッキリ言えばいいのに…
僕は何を言われたっていきなりキレたりしない。…多分。
ふと、隣を見ればセザールが申し訳なさそうに少し顔を伏せている。
「天使の名を冠する君と神の使いである我々は手を携えるべきだと言っているのだ。どうだろう。我が国の王族から誰かを娶りこの国に帰属するというのは」
「………へ?」
…大人気だな狂魔力。
いくらフルスキルフルカンストが万能だからってどいつもこいつも…
しかし…接点の無かったウルグレイス人に何かされたり言われたりって事はないから遺恨も無いけど、だからってそもそも接点が無かったでしょうが!
僕とウルグレイスの接点なんてセザールしか…、あ…っ…
セザールをウエストエンドに取り込んだから?つまりワンチャンあると思われた?
「その節は先走った王女がいきなり間諜を送り釣り書きを届けたようで失礼したね。だが今では国として正式にそうすべきであったと悔やんでいるのだよ。だがたかが婚約。今であればアルバート王太子との婚約は解消は出来よう。どうだろうか」
なんだこの展開。
だが僕を招待してくれたデュトワ家に迷惑をかける訳にはいくまい。ここは何とか穏便に…
「されど婚約、とも言います。…クラレンス王族との婚約は特別な制約魔法がかかるのですよ。安易に解消は出来かねます。ご提案は非常に光栄なことではありますが…」
「そうであったか…。ならば次の提案だ」
おおっ!さてはこっちが本命だな?
そりゃそうだ。いくらなんでも王家の婚約が王家の都合以外で解消できるなんて本気で考えてる訳が無い。
何を言う気だ?よーし、どんな要求が来ても負けないよ?さあこいっ!
「王族とはその血を途切れさせぬため様々な手を尽くす。側妃を持つのもその一つ。私の正妃であるアマーリエも私が三人の側妃を持つことを理解しておる。クラレンス王も側妃はお持ちであったな?つまり王族にとって側妃を持つことは当たり前とも言える」
「…え?ええまぁ…」
…まさか僕に誰かの側妃になれって?っそんな馬鹿な。クラレンスの王太子妃を側妃になんて馬鹿なことある訳ない。ならこの話の着地点は何処だ…
「我が国には無い制度であるが…君たちは同性婚。立場はもちろん王太子が上になるとは言えどちらが妻とか夫とか、そういうものでは無いのだろう?」
「…え、ええまぁ…?」
「そして君は元々王族の血を引く公爵である」
「とっくに水ほど薄いですけど…」
「だが婚儀によりまごうこと無き王族の一員となる」
全然話が見えてこない…。それがかえって恐怖を感じさせる…
「次代の王であるアルバート王子は後継者を得るため側妃を娶られるであろう。その貴重な光の力を受け継ぐために。ならば君もそうすればよい。王族たる君が側妃を持って何が悪い」
「ええっ!!!」
それって…ち、ちょっとちょっと!他国の公爵でしかない僕がウルグレイスの王女を側妃になんて…イヤ無いって!
「もちろん側妃と言う立場に王女を送り出すわけにはいかぬ」
ホッ…、そうだよね…。ああ良かった…。え?じゃぁ誰を…
「我が国の高位貴族から君のために令嬢を選定しよう。ああ、心配ない。みな先の夜会においてことごとく君に魅了され、誰もが是非にと希望しておる。むしろ君のその芸術的な美しさはウルグレイスにこそあるべきだと、口を揃えてそう申しておるわ。ははは、だが私もそう思う。君のその美しさは始祖のエルフを思いおこさせるもの。我が国にふさわしい」
「…いえそんなことは…」
勘弁してよ…
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




