142 18才 let's enjoy 舞踏会
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
主催のデュトワ家には申し訳ないがファーストダンスは一身上の都合により固くご辞退を申し上げた。
僕の失態はデュトワ家の失態。彼らに恥をかかせてはならないからだ。
ダンスの苦手な、もっとはっきり言うと踊れない僕の為に、セザールはゲストの僕をラストダンスだけ踊れば済むよう取り計らってくれたのだ。
最後の一曲だけは僕のため特別に、〝チークトゥチーク” つまりステップの要らない緩ーいダンスを手配して。
「僕は拘束魔法は使えないからアルバート殿下のようには出来ないし…、かといって君に恥はかかせられない。これなら曲に合わせて揺れているだけでいいからね」
「いつも気配りありがとうセザール」
そんなセザールの配慮もあって比較的心穏やかに過ぎていく時間。
親切な彼に恥をかかせちゃいけない。僕は全力のお愛想をウルグレイス社交界に振り撒き続けた。
セザールのお父さん、一番上のお兄さんからはいろんな人に紹介され、おかげでかなりヴィラのプロモーションが出来たと自負している。
そうそう、セザールのお母さんに紹介されたご夫人二人に例の〝若返りサプリ”を差上げたんだけどね、…お母さんからは身も凍るような冷気が刺さって凍え死ぬかと思った…。…ひ、独り占めは良くない…
おや?向こうから来るのはギーじゃないか。
「こんな時間までお仕事ですか?お疲れ様です。まあ一杯いかがです」
「いただこう。それより我が家の夜会、楽しんで頂けているだろうか?」
「ええとっても」
本心である。
ウルグレイスの夜会は似顔絵描きやオペラ歌手なんかが来たりして…、クラレンス王家の夜会ではこういうの見た事無かったからちょっと楽しい。
「第三王子の件はどうなりました?」
「未だ保留中だ」
「戦争は終わりましたしお受けしてもいいんじゃないですか?」
「私に宮殿内でお茶を濁せと?国境の補強、防衛訓練、兵士の育成、やる事ならいくらでもある」
徹底した現場主義…か。
「ときにレジナルド殿」
「何でしょう」
いきなり真顔でどうしたんだろう?第三王子を何とかしろって言う話なら聞けないよ?
「君にとってセザールはどんな存在なのだろう。弟のことをどう思っているか聞いてもいいかい」
「え…?」
どう思うってそんなの決まってる。
彼は少し気障で少し繊細な、でも心優しき大切な友人で…、ましてや今はアッパータウンの責任者として無くてはならない存在である。
どうしてギーはいきなりこんな事を…
はっ!もしかしてほぼほったらかしの現状を本人から聞いちゃって、弟がウエストエンドで軽んじられているんじゃないかと心配してるのか…
ならばその心配は杞憂だと示さねばならない、僕の口からハッキリと!
「僕には何が何でも守りたい、とても大切な場所ウエストエンドがあります。そこは不毛の荒野と呼ばれた何も無い土地で、僕はそこを仲間と共に一から拓いてきたんです」
今も思い出すがらんどうの荒野。あれがすべての始まり。
「その地には僕の全てが詰まっています。かけがえのない場所です。そんな大事な場所に僕はいい加減な気持ちでセザールを招いたりしない。彼が必要だから、彼だから側に居て欲しいって望んだんです。その気持ちに偽りはない」
あの時点でウエストエンドに招き入れられる貴人、ウエストエンドを受け入れてくれる貴人は限られていた。
僕に足りなかったエレガントな芸術性…それを持ち、かつお眼鏡に叶ったのが、彼、セザールである。
「だけど僕はウエストエンドを守るためにすべきことがあって…僕の行動原理にはいつだって〝街作り”があるんです。だからいつも傍には居られないし、彼を優先は出来ない。どうかご理解くださいますか?」
「そうか…君の気持ちは分かった。…これを弟に伝えても?」
「え?ええどうぞ」
僕はこれからエルフの国に行ったり、それが終わったらドワーフの国を探しに行って本格的にいろんな便利道具、カメラやせめて黒電話を作ってもらいたいとも思っているし、なんとかして海に直通ルートを、常時海の幸を楽しめる環境を整えたいとも考えている。
つまり忙しすぎて常にウエストエンドに居ることは出来ないし、ウエストエンドに居たらいたでアポイントが多すぎてセザールを優先は出来ない。
彼にアッパータウンを丸投げして放置、とか、上司の風上にも置けない暴挙だが許して欲しい…
セザールへの敬意は待遇で示そうと思っている。彼は若いがウエストエンドではかなり上位の役職者だ。そのお給料たるや…
おや?そのセザールが幼年学校時代の友人と談笑を終え、僕に向かって近づいてくる。
「やあレジー、そろそろ最後のダンスだよ。シャルウィダンス?」
「ふふ、喜んで」
チークトゥチーク、それは名前通り頬と頬が合わさるくらいに近づいてリズムに揺れる終わりのダンス。
因みにクラレンスの舞踏会にそんな習慣はない。
これはウルグレイス特有の習慣、と言ってもこのダンスは必須ではない。このチークトゥチークかオーソドックスにラストワルツかを主催が選ぶのだとか。
それにしても…、ステップが無いのはありがたいが如何せん…、この距離の近さが恥ずかしい。僕はいつかの王様ゲームを思い出していた。
「ねぇレジー。最後のダンスは一番大切な人と踊るんだよ。知ってたかい?」
「あー、聞いたことあるかも」
そんなダンスを僕で消費させて申し訳ない…、なんて思いながらも、僕とセザールはすでに親友とも言える間柄だから間違ってるってこともないか、なんてことを僕はセザールの腕の中でぼんやりと考えていた。
毎日更新を目指しています。
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




