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139 18才 nice to meet you ウルグレイス

アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。


『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。


セザールが居る以上ご丁寧に陸路を行くつもりはない。

もちろん『ワープゲート』に関してはクラレンスの重要機密、僕とヴォルフはセザールの手引きで誰の目にも触れないよう、ウルグレイスの人気の無い美しい森へと誘導された。



ここがウルグレイスか…


ウルグレイスに帰郷中のセザールはブラウスのフリルが三割増しだ。これはこの国の貴族服なのだろう。


そう。森の様子まですでにクラレンスとは一味違う。松と樫の木を中心に高木が整然と立ち並んだ木漏れ日の美しい森…

足元の苔やそこにある石や岩でさえ無秩序に見えて無秩序ではないのだろう…


「レジー、これらはすべて計算された造形美なんだよ。岩や樹木は自然のものなのだけどね、余分な枝葉を落とし採光を遮る幹を退かし多すぎる岩は場所を移し…、そうやってこの芸術的な森は造られているんだ」


だが残念なことに古のエルフはそれがお気に召さなかったらしい。

自然に手を加えることを良しとしない彼らは、それ故にウルグレイスの祖先たちと袂を分かちここより遠く離れた更に奥地へと移り住んでしまわれたのだとか。


「なるほど…」


早い話、これはジャンル違いってやつか。


僕にも覚えがある。ある視聴者さんから感想を求められた、力作だがやたらSFチックな街にはどうしても心を動かすことが出来なかった。

とは言え僕はエルフと違って和を重んじるタイプだから「とても未来的で独創的な街ですね。脱帽です」って言っといたけど、一緒に街は作れない…、そうしみじみ思ったものだ。


「エルフの言う事にも一理ある。人間はとかく手を加えがちだが木や岩などそのままで十分だ」


この森に感銘を受けているらしいのはヴォルフだ。やはりエルフと獣人は自然と共存するもの、感性が似ているのだろう。


「でもそれが人間の持つ特権ってやつだから。文化を楽しむっていうね」

「自然は我々に様々な恵みを与える。その壮大にして力強い生命力こそ自然の姿だ」


「言ってることには同感だけど…。芸術はまた違う概念のものでね、芸術文化に意義や見返りを求めちゃいけないんだよ。言ったでしょ。これは心をより豊かにするために人に与えられた特権なんだよ」

「ふふ、でもヴォルフ、君はそのままで良いんじゃないかな」


「変わりたいとも思わない」




デュトワ家の馬車に乗り込み静寂の森を後にする。


神と芸術の国ウルグレイス神王国。この国は街並みまでもが芸術品の体を成している。

クラレンスと同じくウルグレイスも王城を強固に守る城塞都市だ。けど立ち並ぶ建築物の様子が違う。


王都から離れた周辺の村では、カラフルな色調が眼を楽しませるクラレンスと違い、全てアイボリーのレンガで統一されている。その村々の美しさときたら…これぞ正統派ファンタジー。


そのまま僕らを乗せたデュトワ家の馬車はどんどん中心部へと向かって進んで行くが、庶民が暮らす共同長屋、リッチな農場主の住む邸宅、小貴族のお屋敷、役場から教会まで、王都にどんどん近づいて行ってもそれは変わらない。色も配置も、全てが統一感を持って整然と並んでいる。


セザールが言うにはゲスマンとの国境近く、崩れた防御壁のある主戦場だった場所でさえ、同じくアイボリーの石材で作られた芸術的な要塞なのだとか。


「君はどちらがお好みかな、レジー」


「どっちも好きだよ。よく芸術家は何々派、とか言って争うけどくだらない。感性なんて人それぞれだし、それって優劣つけるようなものでもないでしょ?僕は子供の落書きにだって芸術性を感じるね。自分が好きならそれで良い。だから僕はコンクールとか好きじゃない。ただの展示会で良いじゃない、別に」


「賞は目に見える名誉だからね。評価や価値の指針にもなる。それにそのために発起する者も大勢いる。否定は出来ないよ」

「…まあ」


うっかりしてたが僕もオンラインの街造りイベントで〝アイデア賞”を貰ったとき大喜びしたんだっけ。とんだ二枚舌だ。



そして綺麗に刈り込まれた緑や考え抜かれた配色の花々がその葉を風に揺らす角を曲がると、そこからは大邸宅がずらりと並んだ貴族街になる。

さすがにこの辺りはクラレンスとも大差ない。


おや?向こうに小さくチラッと見えるのがウルグレイスの宮殿かな…?

クラレンスが荘厳なゴシック建築ならウルグレイスは絢爛豪華なバロック建築、って感じ…。合ってるっちゃ合ってる。



「多くの収蔵品を持つ屋敷は貴族同士であれば通りすがりでも快く寄らせてくれるよ。彼らはいつでも自慢したくてしょうがないんだ」

「コレクターってそういうとこあるよね」

「細い路地には多くの画廊や細工職人の工房がある」

「細工職人…、滞在期間にぜひ行ってみたいな」

「宮殿の近くには大きな美術館、そして劇場があるよ」

「劇場?」

「楽団の演奏会がある。美声の歌姫も居てね、人気なんだ」

「わー、チケットとれるかな…」

「ふふ、用意してあるとも」


シナリオライターにより食に特化したクラレンスとはまた違う文化がここにはある。うーん、実に興味をそそられる…



「それにしても立派な王都だね」


「ふふ、ウルグレイスは長く戦いを続けてきたからね、貴族はみな軍人でもあるんだ。領地はあっても拠点はエトゥーリアと同じく王都になる。だから贅を尽くしているんだよ」


そう考えるとクラレンスってなんだかんだ言っても平和なんだな…って実感する。



「さあ着いた。我が家へようこそレジー、いや、レジナルド・ハミルトン・ランカスター公爵。君を迎えることができる僕は何という果報者だろう…。どうかこの手を取ってくれないかい、レジー…」

「手…」ポスッ

「光栄だ」チュッ


…ウエストエンドでは最近影を潜めた芝居がかったセザールの姿。き、気恥ずかしい…

んっ?正面で僕とヴォルフを待ち受けるのは…あれが初めて会うセザールの長兄だろうか…?


「ようこそお出で下さいましたランカスター公。私はセザールの兄、デュトワ家の嫡男ヴィクトール。お会いできて光栄です」

「あ、こちらこそ。いつもセザールにはお世話になってます」


友だちんちだからくだけていいよね?


「しかしこれはこれは何と麗しい…。弟から聞いてはいましたがまさかこれほどとは…クラレンスに返すのが惜しいほどだ。その羽を手折ったらこの国に留まっていただけるだろうか…そんなことを考えてしまうほどにね」


「…」ヒク


家族全員こんなのだったらどうしよう…




「やれやれ、この屋敷の人間は言葉を飾らず話せないのか。呆れたものだ」


ボキャブラリーの貧困な僕では太刀打ちできない程、ありとあらゆる形容詞で僕を褒め讃えてくれたご両親を含めたデュトワ家の皆様方にヴォルフが呆れている…

実は立場的に褒められなれている僕でさえ、ちょっと身の置き所を失くしたほどだ。


「ウエストエンドに居ると分からないだろうけどこれが貴族の普通だよヴォルフ。けどまぁ…概ね好意的で安心した」



彼らが好意的なのは恐らくセザールの自分探しにウエストエンドが一役買ったからだろう。

それにしても、あれだけご両親に愛されていながらそれでも伝わっていなかったとは…



愛とはかくも難しい。






毎日更新を目指しています。

お星さまをぽちっとしていただけると大変大変嬉しいです。作者の励みでございます(;^ω^)


この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)

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