13 12歳 in 西の山
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
あれから三日ほどの日にちが過ぎた。
ウエストエンド初の領民達。
初日はいきなりお腹を壊さないようにとスープがメインだったその食事も、徐々にまともな食事へと進化を遂げ彼らには少し活力が戻っている。
そうとなったら次の段階に進まねば!
「クラウス、西の山に入る。何人かの騎士と付いて来て」
「お待ちくださいレジー様!西は獣人族の山や魔物の居るベルト地帯に近いのですよ。そんな危険な!」
「そうだよウィル。だから君はここで待っててね。直ぐに戻るから大丈夫。」
「ですが…」
「それより君とコリンにはしてもらいたいことがあるから」
ウィルに任せた仕事、それは用水溝整備だ。今から農地を整えるにあたって、なにより一番重要な問題。それが水。
飲み水程度ならお屋敷はみな「ウォーター」でなんとかなるが農民の彼らはそうはいかない。
そこで領主の館と農場予定地を隔てるように、山のふもとから荒野の途中まで、一本の大きくて深い溝を作るよう命じたのだ。幅が10メートルくらい、深さは1メートル半くらいだろうか。
大変だろうが領民みんなで力を合わせる事が肝心なのだ。これはここが自分たちの土地なのだという自覚と領民同士の協調を生む。
もちろん彼らには土魔法の得意な騎士を数人付けてある。それも騎士たちと領民の交流となり一石二鳥だ。
「溝をどうされるのですか?」
「ふふ、お楽しみだよ。夕方までには終わらせてね。行ってきまーす!」
さて、僕とクラウスが先導する形で四人の騎士と共に西の山へやってきたわけだが、問題は境界の封印である。
「クラウス、二日間の調査結果は?」
「王都の神官が設置したという封印を樹海の手前で何か所か見つけました。だがあれでは何時までもつやら…。随分古い物でしたので」
ベルト地帯と西山中の間には樹海がある。この樹海こそがまさに結界エリアとなっている。
「そうか。じゃぁオレガリオ、リナルド、東側の山は?」
「はっ!『封鎖石』の設置すべて完了しております」
「アストルフォ、オリバ-、北の山道には?」
「あと五日程で設置し終えるかと。それにしてもよくあれだけの数…。あれは『障害のダンジョン』でしか手に入らない石だったと思ったのですが…?」
「二人っきりになったら教えてあげる」
ん?なにか後ろが騒がしいな…。小競り合いか?騎士とはこうも血気盛んなのか…
農民たちが超えてきたという東側の山、それから僕の『トルネード』で切り開いてきた、ハミルトンからの街道(予定)である山林の道。
騎士団にはこの二日間、それらに獣避けの『封鎖石』を配置してもらっていたのだ。
この『封鎖石』によって、害意を持って侵入しようとする生物は見えざる力で侵入を拒まれる。ごく一般的な獣や賊ならこれで十分だろう。
だがこの西の山中における強敵はそんなものではない。
ここから樹海を挟んでその向こうが魔のベルト地帯である。高位の魔物や魔獣がうごめく危険地帯に面したここは特別強力な封印が必要だ。
「じゃぁ僕はベルト地帯の手前まで行ってくるよ。そこでこの『封印石』を設置してくるから」
「お、お待ちください坊ちゃま!まさかお独りで!」
「そのまさかだよ。僕には光魔法と水魔法、それから風魔法を掛け合わせた隠密のスキルがあるから心配要らない」
「ですが…」
「一人の方が早い。だからここに残って僕が戻るまでに周辺の調査と水脈を探知しておいて。じゃ!」
「坊ちゃまお待ちを!…消えた…」
なーんてね。ステルススキルがあるのは本当だけど、実は手っ取り早く『テレポーター』を使って転移したのだ。
これは『ワープゾーン』と同じ『時空間ダンジョン』のありがたいアイテム。短距離の転移を可能にする便利グッズだ。
そして今から設置するのが『封鎖石』の上位アイテム『封印石』。
これは『障害のダンジョン』で手に入れてきた優れものだが、一定のレベルに達しないと落とせないレアものである。
そしてご注目!なんとこれは注入した魔力によって封印の強さが変わるのだ。じゃぁ遠慮なく!
ベビーブルーから始まったその『封印石』は徐々に青みを増しやがてサックスブルーに。それでもまだまだ注入し続けるとネイビーブルーへと変化を見せ、そしてミッドナイトブルーが最終カラーだ。
そうして強い瘴気を感じる場所全てに設置し終えると、おや?山中の空気が変わった気がする…、マイナスイオンが増量…した?
スゴイな…、ミッドナイトブルーの『封印石』…
効果を実感しながらクラウスたちの待つ場所へ戻るとその空気の変化は彼らにも届いていた。
「坊ちゃま、『封印石』の設置を全て終えられたのですな?」
「あ、分かる?」
「空気がレジナルド様のように清らかです」
「まるでレジー様に包まれているようですね…」
うちの騎士たちってば隙あらばヨイショをぶっこんで来るんだから…
「それで何か見つかった?獣人族の痕跡とか」
「いえ全く。おかしいですね。彼らの縄張りは一部隣接しているはずなのですが…」
そんな無駄話をしながらも、水魔法に長けた騎士のアストルフォは地中奥深くのそのポイントをすでに見つけ出している。
「レジナルド様、おそらくここではないかと」
「そうだね。じゃぁいっくよー!『グランドフォール!』からの『ウォーターランス!』」
そこからはご当主様の出番!
僕は『グランドフォール』で木々も巻き込み直系15メートルくらいの大穴を開けるとその中央に向かって最大出力の『ウォーターランス』をぶん投げた。
『ウォーターランス』なんて下位魔法、普通だったら地面に刺さって終わりだ。けど…、レベルカンスト魔力100越えである僕の出力は伊達じゃない。
その水槍はどこまでも深くついには最深部にまで到達し、ついにその水脈へと道を…繋いだ!
「来るよー!みんな構えてー!」
「えっ?」
「あ、はいっ!」
「坊ちゃま一体…、う、うわぁ!」
ドーンという轟音と共に大きく立ち上がった水柱。キラキラとした水のしぶきは上空から雨のように降り注いで、まるで天然のシャワーみたいだ。
「わぁ冷たい!」
おや?余りの威力に仰天したかな?みんな僕を瞬きもしないでガン見している。参ったな…怖がらせるつもりじゃなかったんだけど…
その水は見る見るうちに大穴を満たしていき、気が付いたらそこには大きな泉が出来上がっていた。
そして水脈が枯渇しないよう高位の水魔石を何個か投げ入れておく。これでこの泉は半永久的に水を生み出すだろう。
「完了っと!さぁ帰ろうか。」
一人を残し下山するその道中、先導するオリバーが風魔法で細い遊歩道を切り開き、リナルドが土魔法により自然の小川を掘っていく。いいチームワークだ。
そうして一時間も歩いただろうか?ようやく下山し終え、そろそろ陽が暮れようかというその荒野には一本の大きな溝が出来上がっていた。
「よーし、リナルド!じゃぁ繋げて。そうそうあとちょっと…、出来たっ!よし合図だオレガリオ!」
「はっ!『ファイヤーアロー!』」
炎の騎士オレガリオは居残りのアスフォルトに向かって炎の弓を射ち放った。山火事になるって?いいや大丈夫。魔法の炎は攻撃対象しか燃やさないから。これぞファンタジー!
ド
「レジー様!ご無事で何より…お怪我はないですか?」
「ウィル!問題ないよ」
ドド…
「な、なんですかこの音は?レジー様こちらに!」
「ああ大丈夫」
ドドドド
「レジー様お逃げ下さい!」
「あーきたきた」
その爆音は一瞬にして、大きな溝を立派な運河へと変身させた…
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




