128 17歳 after 大騒動
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
何もなかったかのように爽やかな朝。
ふと周りを見渡すと足元には獣化したヴォルフ、ロングソファではシャリムが横寝、ロココ調の一人掛け用ソファにはアーニーが大股開きで眠っていた。
みんな…ジーン…すごくホッとする…
「起きたのかレジー」
最初に気付いたのがアーニー。部下よりも先に現場入りすると言う彼はいつも早起きなんだろう。
「おはようアーニー、まさかあんなに魔力持ってかれるとは…凄い魔法だけどそうそう使えないな」
「ハハッ、向こうの塔ではあのいつも元気な女神官もさすがにばててるぜ」
「ニコ…彼女は大丈夫?」
「心配ない。昨夜はお前が連行されたとほぼ同時に倒れ込んだが…とっくに起きているようだな。声がする」
続けて目を覚ましたのがヴォルフだ。
「連行って言わないでよ。似たようなもんだけど。でもまあご苦労様」
ヴォルフの聴覚は半径15キロくらいは軽く聴き分ける。早起きだな、ニコ。
目をこすりながら上体を起こすシャリム。昨夜の最高殊勲賞だ!
「イソヒヨドリ、僕にも言って」
「ご苦労様シャリム。ホントによくやってくれたね。シャリムは僕の自慢だよ!」
「自慢…嬉しい…」
朝日の眩しい部屋の中でシャリムは目を細めている。けどどこか昨日までと雰囲気が違う。
この一件はシャリムにとって何かの転機になったようだ。そして…
今まさに僕の転機にもなろうとしている…不本意ながら。
「どうしたレジナルド。様子が変だが何かあったのか」
「あー、実は…」
さすが野生の勘。あの決定を聞いたらこの三人はどんな反応を示すだろう。
「へー、いんじゃね?」
「えっ!?」
「そうだな。悪くない」
「うそっ!」
「どうでもいい…」
「あー」
…意外なんだけど。
身分社会に虐げられたこの三人は絶対文句言うと思ったのに…
「どうせ誰かとしなきゃならねぇんだろ?なら一番上物がいいだろうが」
「上物って…、言い方!それより何とも思わないの?」
「どうせ離れないから関係ない…。イソヒヨドリとはずっと一緒…」
「そういうことだ。結婚しようが何だろうがお前は俺の飼い主に違いない。だろ?最後まで面倒見ろよ」
「そりゃもちろんだけど…」
「王子と結婚すりゃあいつら全員お前にヘコヘコすんだろ?いい気味だぜ」
「あー、そういう…。ヴォルフは?」
「いいかレジナルド。王太子であるあいつの伴侶になるという事は、いずれこの国全てを手中にするという事だ」
「いやだから言い方…。魔王じゃないんだから」
「野望の多いお前のことだ。いちいち横槍入れられても面倒だろう。抑え込むには上に立つのが得策だ」
「だな。そうなったらこっちのもんだ!」
「まあ…」
合理的っちゃ合理的だけど…
「ふっ、それにあいつは扱いやすい。俺の知る限り最もな」
「確かに」
「転がせレジナルド。俺の知るお前ならやれる」
…イヤな信頼だな…
「なあレジー、ここもお前の別荘になるんだよな?なら俺も出入りできるようにしてくれよ?」
「王城を別荘呼ばわりとか…、あのね、僕はウエストエンドを出る気はないからね。でもまあ必要かな?何かの際にいちいち止められるのも面倒だし…、今回お手柄だったから許可でるんじゃない?」
「じゃあ僕も…」
「うん。シャリムもちゃんと僕の司書兼護衛として申請しておくね」
「おいレジナルド、俺はどうなってる」
「気を利かした大臣がとっくに申請してくれたって。ペット兼護衛で」
「何だと!」
王城への出入りはセキュリティの関係上、外門で許可を得ないと通り抜けるのは不可能である。そういう制約魔法がかかっているのだ。
例外は始終出入りする人物。
彼らはその役職、任務についた時点で王宮の人事課に登録されフリーパスとなる。もちろんその申請には厳重なチェックが入る。アーニーたちはそれを寄こせと言っている訳だ。
腹をくくった僕はいっそのこと頂点に立ちやりたい放題やってやろうかと思い始めた。
ヴォルフが言うようアルバートは少しばかりチョロ、…善良な王子様なので婚姻の先にある切実な問題もなんとなく回避できるような気がしている。
「いっそウルグレイスの王も篭絡してあの国も手に入れたらどうだ」
「シュバルツをエトゥーリアの首相にして第二夫君にすればエトゥーリアも手に入るんじゃねぇ?」
「ヤメロ!誰が世界征服するって言った!」
「すればいいのに…」
「シャリム…」
この一年半の悩みに(悩んでないけど)あっさり結論が出てしまった…
思いがけない展開。でもまぁ…、よくよく考えたらこれが一番効率良い気がする。
限りある二十四時間をやりくりしていた実況ゲーマーである僕はやや効率厨だ。
アルバートは僕がウエストエンドを動かないといっても文句言わなそうだし、ヴォルフの言うよう彼は次期王様である。
この絶対王政のクラレンスで自由気ままに生きるにはこれが最適解かもしれない。
それはさておき、すべきことをしやるべきことをやった僕たちはディナーまでにウエストエンドへ帰ることにした。
『ワープゲート』がバレた以上、ご丁寧に列車を使う必要はない。
そこで取り急ぎ…僕はヴォルフのお散歩に付き合っている。庭という庭。これぞ有言実行。
城内という事で着替えさせられた従者姿のアーニー、シャリムはなかなかの見栄えだ。
それにヴォルフの毛並みは僕の日課であるブラッシングで常にツヤツヤである。
つまり王城中の視線が庭を散策する僕たちに注がれているのも無理はない。ふふん!いくらでも見るがいい!自慢のウチの子を!!!
「レジー君、ここ!」
「ニコお待たせ。大神官はもう帰った?」
「ええ。王都に戻れってしつこかったけど王様の一声で諦めて帰っていったわ。」
「そりゃ良かった」
「その代わり有事の際はレジー君ごと借り受けるって約束させられたけど」
「有事の際ね。いいけど…当分ゴメンかな。あっ!ヴォルフ!そこら中に穴掘らないで!」
「初めて見る芝生にはしゃいでるのね」
「マジか…」
「イソヒヨドリ…、はいこれ」
「花束?僕にくれるの?ありがとう。花壇ボロボロだけど」
「あらシャリム君、あたしにはないの?なんてね」
「もっととってくる…」
「ちょ!」
「良い子ね」
「なあレジー、この菓子もっとねぇの?ガキどもに持って帰りてぇ」
「そこら辺探して好きなだけ持ってって!」
「…山賊みたいね」
昨日の騒ぎが嘘のように長閑な昼下がり。
思い思いに王城の庭を荒らす三人を微笑ましく眺めながらのティータイム。僕はニコとだべるのが案外好きだったりする。
この件ではニコにも心配かけたし…、一応報告しておくのが礼儀だろう。
「…って、これが昨晩の顛末。参っちゃうよね。でもまあそういうことだから」
「…前から言おうと思ってたんだけど…、そもそもどうしてさっさと普通に王女を選ばないわけ?礼二くんってノーマルよね?」
「へっ?」
「ウルグレイス王女のお見合いも断ったらしいじゃない」
「あ、え、あ、あれ?」
「あたし的には美味しいけど…いいの?」
「で、でもクラレンスの王女たちは僕を政局の盾にしようとしてるし、そ、それにウルグレイスの王女はコソコソとストーカーみたいに諜報を寄越してくるし…、大体ランカスターに居ると〝夫人”ってつくほとんどが狂魔力の第四王女とか浪費の激しい第三側妃とか極めつけがエバみたいなろくでもないのばっかりで…、唯一まともなお母様とはほとんど一緒に過ごせなかったし…。高貴な女性のイメージがちょっと壊滅的で…」
「それでアルバートなのね…。(…これもある種の修正力かしら?)礼二くんのそういうとこホント良いと思う。今後も期待してるから!」
お、…おう…
……あれ?
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




