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12 12歳 at ウエストエンド

アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。


『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。


そこにあるのはだだっ広い荒野だけ。そして第四王女が住まっていたという囲いすらない大きなお屋敷。さすが腐っても王女。お屋敷の立派さだけはなかなかのものだ。


だがしかし。


高位の土魔法で僕が作成した地下深~くの床下収納には一生豪遊しても使い切れないくらいの膨大な金銀財宝、希少資源などが隠されている。


だからこそ僕はハミルトンの実権全てを叔父に丸投げしてきたのだ。煮るも焼くも好きにしてくれって。

叔父は領民に無体は働かない。もちろんその信頼あっての丸投げだ。


お屋敷へと馬車群を誘導するとまずは屋敷の中を確認していく。…って言ってもワープゲートで来た時とっくにに魔法で修繕出来る箇所は直してある。だから居住に問題は無いはずだ。


そこへもってメイドたちの神業的なチームワークで、瞬く間に清掃と装飾が整えられていく。エクセレント…


そして外では、騎士たちが各々の持てる魔法を駆使して厩舎やなんかを整えていく。みんな仕事が早い…


ここは一番、領主としての威厳を示さねば。

僕は便利な土魔法で騎士団の宿舎を一気にドーンと立ち上げた。


「おおー!」

「流石です坊ちゃま!」

「レジー様、素敵ー!」


土魔法だけで作られたそれはまるでイタリアのトゥルッリみたいな横長の宿舎。あとは随時追加ってことで。


「みんなー!ここは任せたよー。取り敢えず食う寝るが全員分出来るように整えてねー!」

「「「かしこまりました!」」」



そして僕とウィル、それからジェイコブは頼れる団長クラウスをお供に何も無い荒野を見回りに出かけた。のだが…おや?


人っ子一人居ないはずなんだけどな…


そこには何故か、一固まりになりガタガタと震えあがる痩せ細った農民たちが居た。


「お前たちは何者だ。どこから来た。ここがランカスター公爵領であることを知ってのことか?」

「いやいやクラウス。聞くのはそこじゃない。そもそも今はハミルトン領だし。ねぇあなた達。ここがどんな場所だか知ってるのかな?危ないよ?」


ひーふーみーよー、子供も入れて二十人か。フリーズしてピクリとも動かない農民たちは怯えて声すら出せないらしい。真っ赤になりながらただひたすら僕を凝視している…


ああ。豪華な貴族服が威圧感を感じさせるのかな?ならここは一見温和なジェントルマン、有能執事の出番じゃない?


「ジェイコブ!」


「はっ。もしそこの農夫たちよ。ここは元ランカスター公爵領、今は譲渡されハミルトン侯爵領となったがこの麗しいお方こそ、現ハミルトン侯爵であるレジナルド様だ。坊ちゃまは悪いようにはなさらない。事情があるなら話してみなさい」



その農民たちの話とはこうだった。


彼らは王都の東にある争いの絶えないトネッリ伯爵領からやってきた難民たち。トネッリ領では隣領であるチェッリ伯爵領とその境界線を巡って長い間ずっと争いが続いているのだとか。

トネッリ伯爵とチェッリ伯爵は本家と分家。こういうことって往々にして身内の方がこじれるんだよね。


「だからってそんな…東って…。リヤカーと徒歩だけで一体どれだけかかったの?関所の通行料はどうしたの?」


「敗れて倒れた傭兵の剣が運よく手に入ったからこそあそこを出たのです。普通ならすぐに回収されてしまいますから…。それを売って路銀に充てました…。申し訳ないことですが…」



運よく剣が…つまり傭兵が相打ちしたってことか。それにしても…


家門の入った騎士の剣なら売れはしない。足が着くってやつだ。

ましてやちゃんとした道具屋なら訳アリの農民から剣など引き取りはしないものだ。

拾ったのが無名の傭兵の剣で、尚且つ道具屋がまともじゃ無かったからこその幸運。もちろんかなり買い叩かれてはいるだろうけど。


「西までは二月(ふたつき)ほどかかりました。一度はフラキオ男爵領に農奴として雇ってもらえたのですがあそこはトネッリ伯爵領より扱いがひどくて…、満足にパンすら与えられずわしらは死ぬとこでした…」


「西側は下位貴族の領地だからね。ケチくさい領主も多いんだよ。それでもう一度逃げ出したの?」

「わしらはこの子達を生かしてやりたくてトネッリを出てきたんじゃ。飢え死にするために出てきたんじゃない」


「もちろんだよ。それで?」


「危険を覚悟で、フラキオに元からいた農奴たちも一緒になって三つほど山を超えたのですじゃ。山の実を齧り草をむしり、山肌を流れる水で何とか喉を湿らしながら。それでも…山中で半分に…なりましたがの…」


餓死したか…滑落したか…、それとも獣にやられたか…


西側に魔物のベルト地帯があるために、このウエストエンドの東に位置する山々は逃げ出してきた獣で一杯なのだ。それを知らずに入り込むとこうなる。彼ら二十人は相当幸運と言える。


そうしてなんとか山を抜けたそこにはなんと、四角い納屋と無人の畑、水の湧く甕が何故かあったのだとか。

そのうえそこには芋と赤い実が成っておりましたとさ。不思議だね~。

それでその納屋に住み着いて、時折顔を出す小さなトカゲなんかも食料にしながら芋と赤い実を育てて食いつないでいたのだとか。


もうお分かりだろうか…。その不思議な現象の犯人は僕だ。


僕はダンジョンで手に入れた素材の数々を隠しに来たついでに、この荒野の一部分を使って試験的に野菜栽培を試みていたのだ。

何種類か試して、後は放置しておいたのだが…トマトとジャガ芋…スゴイな…


土魔法で作り上げた休憩をとるだけの四角い納屋。

扉もないその四角い小屋は、小屋というのもおこがましい。屋根があるだけの、三方だけ壁になった、残った一面は4本の柱しかない、扉も窓も無い簡素なものだ。そこに彼らは山から採ってきた大きな葉なんかを敷き詰めて寝ているらしい…。夜中に獣が来たらどうするんだ⁉


「ちょっとなんにしてもこれはいただけない。ちょっと待って。直ぐに作り変える『クリエイトウォール』」


「「「おおー!」」」

「レジー様、素敵です!」


出来上がったのは同じく四角いけど、今度は窓も扉もあり、土間と居間が分かれただだっ広いブロックハウスが三つ。それと、今までの納屋は釜土を作成して共同キッチンに手直しした。


「おめでとう!貴方たちは記念すべきこの『ウエストエンド』の初めての領民だ。さあ!ウィル、クラウスと食材を運んできて!皆で炊き出しの準備をするよ。今夜は皆でお腹いっぱいご飯を食べよう!今日はお祝いなんだよ。新しい街を作る記念の第一歩なんだ!パーッとやろう!」



泥と涙と色んな汚れにまみれた彼らの、それでも僕を見るキラキラした目には、まるでこれからの輝かしい未来が映って見えているようだった。




…領民20名…




毎日更新を目指しています。

お星さまをぽちっとしていただけると大変大変嬉しいです。作者の励みでございます(;^ω^)


この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)

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