123 17歳 in 王城の大広間
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
「王子さんよ、アッカーはどうなった?」
「アッカー侯爵は伯父に足止めをお願いした。今頃喫煙室で大公家自慢の一品、極上の葉巻を試していることだろう。ウォーデモンには密偵をつけた。だがウィルモット侯は所在がわからぬ…」
「そいつも仲間か?」
「確証はないが恐らく…」
「で、荷台は?」
「調べさせたがウォーデモン商会の荷台に異常は感じられなかった…。ヴォルフ、君はどう見る?」
騎士団、そして大臣たちが動きまわる中、私はアーニー、そしてヴォルフを伴いこの問題を論じながら大広間へと急いでいた。
指示が終われば王である父も大広間に来るだろう。私たちは招待客に不本意ながら宴の終わりを告げねばならない。
「あの闇魔法の使い手は影に潜る。魔道具でそれを共有する魔導士たちもだ。外門を超え下中庭まで入り込めば、もう入城を許したも同じ事。安心できる要素はない」
「…オルランドたちはどこに連れて行かれたと思う?」
「分からん。だが心配するな。レジナルドは光の鎖で追いかけていった。お前の弟がどこにいようと必ずたどり着く」
「光の鎖?彼は光魔法も使えるのかい?」
「当たり前だ。あいつは聖魔法、闇魔法以外の全てを自在に使う」
光魔法、それは王家の血筋にしか発現しない、まさに王族の証とも言える希少な属性。
その中でも『光の鎖』は誰でも発動出来るとは限らぬ高度な魔法である。
…今明かされる事実。何故彼は今までそれを頑なに隠し続けてきたのだろうか。何度でもそれを知らせる機会はあったというのに…
ああ…奥ゆかしい彼の事だ。恐らく王家の血筋であることをひけらかすのが嫌だったのだろう。きっとそうに違いない。
「アーニー、ヴォルフ、彼はこれだけ人々に受け入れられても未だ自分自身を卑下するのだよ…。狂魔力の継承者である自分が王家の行事に顔は出せぬと…。どれほど誘っても返事はいつも同じ。私はそれが辛いのだよ。彼はどれほど薄くともまごう事無き王家の血をひく我らの一員であるというのに…。だからこそ余計に私は彼を娶りたい。誰にも分る絆で彼の地位を盤石にしたい。そう願う…」
「お前…、おいアーニー、この国の王太子が純粋な男で良かったな」
「どう言う意味だいヴォルフ?」
「まあ気にすんな、少しは見直したぜ」
「おやアーニー?良いのかいそんなこと言って。私は君の恋敵だろう?」
彼のレジナルドを見る眼はそう言う眼だ。
「俺とあいつの絆はもっと深い所にあるんだよ。俺たちの関係性に名前は必要ねぇ」
「止めろお前たち!それより闇魔法だ。いいか、あれを跳ね返せるのは上位ランクのみ。Sクラス以下のものでは犠牲者が増えて終わりだ。そいつらは外周にまわせ。あいつらは必ず宮殿内部を狙ってくる。目的は王家の瓦解だ」
「父を狙うというのか…」
「頭を取るのが一番早ぇ。ケンカの極意だな」
「まあ間違っちゃいない」
「そう言えば何故君には闇魔法が効かなかったんだい?君は獣人、いくら強くとも魔法への耐性は低いはずだろう?」
「なんとなくだが…、俺に入り込んだ僅かな狂魔力が闇魔力の浸食を拒んでいる」
「入り込んだ…?」
「あいつが頭を切った時に血を舐めた。多分それだ」
「へー、なら俺もか。…しゃぁねぇ、戦闘の役には立たねぇだろうがいざとなったらお前の楯ぐらいにはなってやるよ」
「いざとなったら?いいや、ぜひ初めからお願いする」
「マジかよ…」
彼らが闇魔法の対抗手段になり得るのではないか…そう考えた私は一つの策を講じた。戦力はいくら多くても困らない。Sクラス以上を誇る騎士はそれほど多くないのだから。
エトゥーリアの王族を初めて招く貴重な場、その中止を知らせる声に招待客は大いにざわめき表情は怪訝そうに歪められている。当然だろう。宴はまだ始まったばかりだったのだ。
そんな彼らを落ち着かせるため、私は王である父とともに大広間の正面に立った。
「皆には私からささやかな手土産を用意した。これはウエストエンドの地で手に入れた大変希少価値の高い魔石である。この石はあの地の山中にある『天使の泉』の気を受けてか人一人分という小さな範囲ではあるが大変硬度の高いシールドを発するのだ。これを謝意と思って欲しい」
「おおお…、シールドの魔石とな…」
「それはまた珍しい…」
「いいや、珍しいどころか聞いたことも無い…」
「これは来たかいがあったというもの」
クラレンスでは珍重な魔石の手土産に収束していく不満の声。
だがこれもある意味無事に王城から帰すための苦肉の策。闇魔法の使い手相手にどれほどの役に立つか…だが何もないよりはマシと言うもの。
その貴重な魔石をリストと招待状を照合しながら一人一人に手渡していき、あと一部の者を残すばかりになったその時。
「待て!お前…どこかで見たことがある…。顔を上げてよく見せろ!」
そう叫んだのは私の従者に扮したアーニーである。
「はっ!やっぱりな。お前慈善の炊き出しを笑いながら蹴り倒したクソ貴族じゃねぇか!…どんな髭を生やそうが俺は間違えねぇ!」
「な、何を言うか!それより何という下品な物言い…、お前!本物の従者では無いな!どこから入り込んだ!この薄汚い平民風情が!」
「その声その口調…!髪色こそ違うが…ウィルモット候か!」
「ち、違う!何もかも違うであろうが!どけい!近衛ごときが無礼であるぞ!」
ホレイショの言葉に皆の注目はその男に集中する。
確かに男は髪色、それにこの瞳の色…、ウィルモットとは異なっている。
だがよく見ればなるほど、ウィルモット候と似た風貌である。髪型を変え髭を剃ればもっと似るだろう。
「擬態のポーションか。レジナルドが他国でよく使うやつだ」
「ヴォルフ、それは本当か!」
伸びをしながら姿を現す一頭のオオカミ。水差しを乗せた円卓を覆うテーブルクロス、彼はその下に潜んでいたのだ。
「お!お前は獣人!何と汚らわしい!獣人が王城で何をしておるのだ!騎士よ!今すぐこの獣を捕らえよ!」
「その物言い…ウィルモット候で間違いない!姿を変えてまでここで何をするつもりだ!」
その時背後の影から浮き上がったのは十人ほどの黒装束。中でもひときわ歪な魔力を垂れ流す男が一人…、間違いない!この男が闇魔法の使い手!
「魔石などを欲張るからこうなるんだ馬鹿者が!退けウィルモット!クラレンスの王子よ、食らうがいい!」
「ちぃっ!」
その言葉が終わらぬうちに放たれる黒弾。それは前言通りアーニーの身体によって防がれた。
だがその言葉を合図に魔導士たちも一斉に黒弾を放ち始める。
大広間に響き渡る貴賓の悲鳴。獣化したヴォルフはいち早くその黒弾から彼らを護りはじめた。
「ボーっとするな!騎士たちの剣に光の魔力を纏わせるんだ!」
「承知した!」
「アーニー!貴族たちを集めろ!こいつらは俺たちで護るぞ!」
「おうっ!」
入り乱れる騎士と魔導士。混乱の中私たちがヴォルフの存在にどれほど助けられているか。
驚くべきはアーニーまでもがナックル型の武器を手に震える貴族を護っていること。
貧民街で産まれたという彼は貴族社会に対し決して好意的ではないだろうに。
影へと潜る相手に終わりを見せない消耗戦。
言葉通り私の魔力はここまでの戦闘で消耗し尽くしている。私の飛ばす光は徐々に輝きを失い今にも消え入りそうだ。
「退がれアルバート!魔力切れでは足手まといだ!モレー!アルバートの周りにシールドを!」
「はっ!」
「ダメだ!シールドをかけるな!奴らの思う壺だ!」
「アーニー何を…」
「フハハ!もう遅い!」
その瞬間何が起こったのか自分自身にも理解が出来なかった。
私を護るモレー団長のシールドがいきなり禍々しい気を放ちだしたのだ。
「それは徐々に闇が充ちていく汚濁の水槽よ!王子は外からも内からも闇に浸食されいずれ闇に堕ちるのだ!そしてその水槽は外からは入れるが内からは決して出られぬ闇魔法の特注品…ハハハハハ!クラレンスの王よ!息子二人の命と己の命、どちらを差し出すかはお前に決めさせてやる。だが俺の気はそれほど長くない。さっさと選ぶのだな!」
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