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117 17歳  arrival  王都の駅

アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。


『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。


「ようこそお越しくださいましたエルンスト殿下、アウグスト殿下。お久しぶりですオルランド殿下。初秋のウエストエンドもなかなかのものですよ。どうぞゆっくりお過ごしくださいね」


その日の僕は前代未聞というか何と言うか…、王子様を一度に三人迎えるという、偉業と書いて苦行を強いられていた。


「こ、ここがウエストエンド…。今日という日がどれほど待ち遠しかったか…、あ、いやその、視察が…」


ふふ、ワクワクが漏れ出ているエルンスト殿下はなんとも素直だ。


「エルンスト王子、実は私もウエストエンドは初めてなのです。世間から隔絶されたウエストエンドを互いにほんの十日ほどですが思う存分楽しみましょう」

「オルランド王子…、そ、そうか。そうだな。アウグスト、せっかくの機会だ。ここでは思い切り羽を伸ばそうではないか」


「いいんですか?やったぁ!あ…」

「良いんですよ、誰の目もありませんし。ここに居る間くらい堅苦しいのは無しにしましょう。ね?アウグスト様。私のことはどうぞレジーとお呼びくださいね」

「レジー…、はい!」


エトゥーリアの王族兄弟、アウグスト様は七~八歳ぐらいだろうか…?目がキラキラしちゃってかんわいーい。

エルンスト様のほうはコリンやフェリクス様と同じくらいの歳だろうか。オルランド様から見たら弟みたいなものだろう。


しかし王子様が三人…。すごい光景だな。



「中日には領事地をご案内します」


お務めも忘れちゃいけないからね。


「何でも海を再現されたとか…」

「オルランド様、あれは大きな湖ですよ。正確には海でなく海岸を再現したんです。でもこの西の地は気温が高いのでまだ遊べるでしょう。ぜひ水晶のような砂浜を歩いてみてください」


聞けば彼らは海のある国に産まれながら海に行ったことはエルンスト様で二度、アウグスト様に至ってはまだ無いと言うのだからお気の毒なことこのうえない。


彼らは相当窮屈な毎日を強いられているのだと言う。


何故ならお飾りの王族である彼らは領地を持っていない。つまり自らの収入を持たず、全ては議会からの王族維持費によって成り立っているのだ。


国庫の大きな割合を占める王族維持費…、財政難の国にあって何故国民から廃止の声が上がらないか、それは王族が彼らの誇りだからに他ならない。

王族の存在が他国に対しての権威になる。彼らはエトゥーリアという国を体現しているのだ。ブランディング、とでも言おうか。


それゆえに彼らは常に国民にとって理想のエトゥーリア人であらねばならない。そのプレッシャーたるや半端ないだろう。


自分勝手上等の僕には耐えられそうにないな…



そんな僅かな滞在期間、彼らは思う存分滝プールを楽しみ絶景露天風呂を楽しみ、テニスに興じポニーに乗り、今では常設イベントとなったルーさんのボクシングを観覧し、クーデンホーフ領の湖で湖水浴をしたりと限られた時間を満喫し倒していた。


アウグスト様に至っては子供にだけは優しいアーニーにいつの間にか懐いており、ダウンタウンまで出向いては遊びをせがんでいた。

そしてその後、ごねにごねまくってリアルふれあい動物園、ウサギのプロプシー家にお泊りという暴挙にでたのだ。


あの時の従者の顔と言ったら…


仕方ないのでもちろん付き添いは責任者であるこの僕だ。

いくら相手がウサギとは言え王子を一人で庶民の家には泊められない。ホントにホントに仕方ない…。いやホントだって。


だが仔ウサギにまみれるて眠る至福のひと時…、どさくさに紛れられて大変ラッキーだったとは思っている。




「あっという間の十日間でしたね。アウグスト様エルンスト様。充分お楽しみいただけましたか?」


「う…うわぁぁぁん!おにいさま!レジー!僕まだ帰りませんから!」


「アウグスト…、気持ちは分かるが無理を言わないでおくれ。この後はクラレンスの王城にも立ち寄らねばならないのだ。それに私は帰国後孤児院へ慰問に行かねばならない。予定の引き延ばしは出来ないのだよ。今回の同行もマッケンゼンにかなり無理を言ったのだからね」


「いやだぁぁぁ…帰らないったら帰らない!うぇぇ…」



まあ…、半分はこうなることを見越していた。実際僕も子供の頃は田舎のおじいちゃんちに行くたび帰りはこんなんだったらしいから。

だからこその秘密兵器だ!


「アウグスト様、では帰りの列車にはヴォルフを同行させましょう。背中に乗ってみたいと仰っていたじゃありませんか。私も一緒に終着駅まで参りますから。ね?」


「レジー…、で、でもヴォルフはあのときイヤだってって言って逃げちゃいましたよ?」

「そこは私にお任せください。私にかかれば問題なしです」


因みに許可は取ってない。



「レジナルドお前…俺をポニー扱いするとは良い根性だ…。覚えておけ…」


「やっぱしそうなるよね。知ってた。」



イヤイヤとは言えなんとか背中にアウグスト様を乗せたヴォルフと駅へ向かうと、そこには何故かアーニーが居た。


「どうしたの?もしかしてアウグスト様のお見送りに…?」


意外な思いやり!さすが子供好き!


「ちげぇよ!王家で使う紋の入った特別な装飾品があるんだと。別荘にはそれをつけろとさ。セザールが言うには王城の門前まで取りに来いって話らしい」


「なぁんだ。それでどうしてアーニーが?セザールが行ったほうが良いんじゃない?」


「王都側の駅は交易路に近いだろ?俺は商業地区のスラムに居たからな。あそこを抜けるのが一番手っ取り早いし俺は抜け道も覚えてる。急ぐんだよ。そいつが無いと仕事が進まねぇ。御者の横で良いから乗ってっていいか?」


なるほど。いつも追われるスラムの子供は色んな隠しルートを持ってたりするもんだ。これもまた生活の知恵?


「一般寝台に空きあったはずだから使って。エトゥーリアのお供には話しとくから」

「おう。頼んだ」



こうして馬車鉄道の旅はお仕事モードの僕、仏頂面のヴォルフ(獣化中でバレてない)、時折フラッとやって来ては保父さんになるアーニーを乗せて四日間の移動を終え王都の駅に到着した。



「それじゃあエルンスト様アウグスト様、王城でのパーティーも楽しんできてくださいね。またいつかお会いしましょう」


「レジナルド、此度は大変世話になった。とても有意義な時間であったぞ。エトゥーリアの民にも伝えておこう。死の天使ザラキエルは癒しの天使ラビエルでもあったと」


「……あ、ありがとうございます」


凹めばいいのか喜べばいいのか…


「オルランド様もまたいらしてくださいね。」

「あなたもご一緒なさればよいのに…」

「エトゥーリアの内乱に始まりクーデンホーフ領の開拓とここのところバタバタしましたから。これでも忙しい身なのですよ」


「そう言われては残念ですが仕方ありません。冬の晩餐会でお会いしましょうレジナルド」



各々の従者が貨物車から馬車へと荷を積み替え人のごった返す喧騒の中、誰よりも早くその異変を察知したのは鼻の利くヴォルフだった。




毎日更新を目指しています。

お星さまをぽちっとしていただけると大変大変嬉しいです。作者の励みでございます(;^ω^)


この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)

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