112 17歳 to ウエストエンド北部
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
「いやー、思いのほか大勢の領民が移住を希望したね。驚いた。よっぽど現領主にうんざりしてるらしい…」
現領主とは言わずと知れた、略奪者ロートリンゲンである。
「それだけではございません。亡くなられたヨアヒム様は大変領民に慕われておりましたし、シュバルツ様自身も領内の民からそれは期待されていたのです。これからと言うところで全て奪われましたが…」
「へー、じゃあ一番の宝物を取り返したってところか。何よりだね」
「それにしても分家の若者たちまで移住を希望するとは…」
「彼らは四年前まだ学生で寮に居たから騒動のことはよく知らないんだって。今回初めて事の次第を聞いて愕然としてた。両親を責めることも庇う事も出来ないけどせめて代わりにお詫びがしたいってさ」
「分家を全て切り捨てる訳にも行きませんし…、妥当なところでしょうか」
前代未聞の国をまたいだ領地替え。半信半疑で入植者を募ったシュバルツは、彼の想像をいい意味で裏切る結果にどこか感慨深げな顔をしていた。
だけど僕が一番驚いたのは、あの国のまだ幼い王族までもがクラレンス領事地へ移り住みたがったという事実だ。
共和制のあの国で王族は何の権限も持たないただのお飾り。であれば自由の無い立場より一貴族のほうがマシなことも多いのだろう。
さすがに却下されてたけど…せめていつかヴィラに招待してあげようと思う。
「カール、これからも当主の補佐を頼んだよ」
「畏まりました。ではプーリン、パウル様を頼んだよ」
「お任せくださいカール様」
そんなシュバルツに従い北部に移動する事になった執事のカール。
代わりに彼が一から育てた犬獣人のプーリンがパウルの世話を引き受けることになったのだが、あの耳あの尻尾は…、ケモナーである僕の眼に間違いはない、犬種はゴールデンだ。
賢く穏やかで忠誠心の高いゴールデン。褒められるとうっかり尻尾で調度品を弾き飛ばすのが玉に瑕の人懐こい副執事にパウルもさぞ癒されていることだろう。
「それからユーウィン、裁判所付き護衛官兼補佐としてパウルをよろしくね」
「レジナルド様の命とあらば」
シュバルツに似た風の騎士ユーウィンは、僕たっての希望で裁判所へと配置替えになった。
いくら些細な諍いとは言え、揉める領民の仲裁にパウルだけでは心もとない。そこでユーウィンにその足りない部分の任務をお願いしたのだ。
実兄に似た彼であればパウルも気安いだろうという僕の配慮だがローランドから鬼の様にクレームがついたのには辟易する…
だけど僕のあげたマントを肌身離さず大切そうに羽織って任務に励む、誰よりも勤勉なユーウィンの仕事ぶりは信頼に足りたらしい。彼をしばらく見て一つ頷きそれ以来何も言わなくなった。
そのパウルとシュバルツはローランドとともに(わざわざ迎えに来たんだよ、ニヤニヤ…)今現在クラレンスの王都にいる。
実はカニンガム家主催の大きな夜会に招待されたからだ。
目的は一つ。彼らをクラレンスの社交界に紹介するため。こればかりは社交をしてこなかった僕には荷が重すぎて…ローランドに丸投げするしかない。
そしてこれは勘だが、親切面したローランドの裏目的は家族にパウルを紹介する事だろう。この読みは多分99.99パーセント正解だと思う。
ここで一つ。
彼らの呼び名は元の名、ウエストエンド名、どちらでも構わないとみんな口を揃えてそう言ったが「私の名はレジナルド殿にいただいたシュバルツただ一つだ」というシュバルツの言葉に気を良くして僕はそのまま全員ウエストエンド名で呼んでいる。
がしかし!
パーヴェルに関してはローランドによる強固なプレゼンがあり、元の名であるパウルと呼び直すことにした。スイマセンね、センスなくて。
それはさておき彼らの居ない間に新たなクーデンホーフ侯爵領をサクっと整える必要がある。
だってあと二か月もすればエトゥーリアから移住者がやって来るのだ。最低限住めるようにしておかなければ。
あ、補足だけど元兵士たちには北部への移住希望者もエトゥーリアへの帰国希望者も居なかったよ。まあとっくに生活基盤が出来上がってるしね。
代わりに貯め込んだお金でエトゥーリアへの団体ツアーを計画しているらしい。いいんじゃないかな。
とまぁそんなわけで、僕は幾人もの騎士を引き連れウエストエンド北部へとやってきた。
ベルト地帯の封印石も確認済み、東側の封鎖石も確認済み、安全性が保証されたところで必要なのはもちろん水源。北部南部といったところで、所詮ここも荒涼の地ウエストエンドだ。
「シュバルツの故郷は海の国だからね。ここには疑似海岸を作ろうと思ってる」
「いやはや、海には少々馴染みがなく…、どうされるのですかな?」
「うーん、大きな湖を作って湖の中央に波発生装置を設置しようかなと思ってる。湖畔には真っ白な砂を敷き詰めて海岸風にね。砂を蹴って追いかけっこする恋人同士とか…うーん、いい感じじゃない?」
「恋人同士…、レジー様、出来上がりの試行はぜひ俺と!」
「馬鹿か!俺に決まってるだろうが!」
「何の試行が必要なのか分からないけど考えとく。で、その湖を水源にして領全体に地下から引っ張る。ここら辺の仕組みはウエストエンドと同じね」
正確にはベルト地帯に沿った全体をウエストエンドと称するため、ここもウエストエンドなのだが紛らわしいのでこれからは便宜上南を〝ウエストエンド”、北を〝クーデンホーフ侯爵領”と呼ばせてもらおう。
「じゃぁアストルフォ、今回もよろしく!」
「お任せくださいレジナルド様」
誰よりも正確なアストルフォの水源探知。手付かずの荒野である北の地で水源を探すのは至難の業だ。
だが彼はその難題を安々とクリアーしその一点を見つけ出す。
「ここですレジナルド様。『強化のダンジョン』で底上げされた私の探知に間違いはないかと」
「す、素晴らしいよアストルフォ…」ホウ…「惚れ惚れしちゃった。じゃぁ僕も行くね。久々の『全力グランドフォール!』からの『ウォーターランス!』」
背後でアストルフォがみんなに寄ってたかって小突かれていたのは何だったんだろう…?よくやった!って言う冷やかし的な?
「遊んでないでオリバー、リマール、地形を整えて!中央は深く、湖畔に近づくにつれて浅瀬になるように」
「はっ!」
「ダノワ、ホルス、水の魔石を等間隔で設置して」
「了解しました!」
「時に坊ちゃま、波発生装置とはいかなものですかな?」
「えーと、これです」
「これは…?」
「これはある場所で手に入れた隕石です。この隕石からは強力な超音波が発せられています。超音波とは聞こえないほど高い周波の音による振動のことで、おっとクラウス触っちゃだめだよ。尿管結石が破壊されちゃう。あれ?…良いのか?じゃなくて、これを湖の中央に沈めると常時水面が大きく波打つことになる」
「ほほう…」
「もちろんサーフィン出来るほどのビッグウェーブは来ないけどさざ波くらいは届くはずだ」
「なるほど」
「ついでに浅瀬で身体をつけるとマッサージ効果がある」
「なんと!」
「後からみんなで入ろうか?」
いや、君たちいきなり脱ぐのはやめようよ。後でって言ったじゃん…
突貫で作り上げた疑似海岸。さざ波寄せる大きな湖は近視的には海にしか見えず、きっとエトゥーリア人の心を支えてくれるだろう。シュバルツの喜ぶ顔が目に浮かぶようだ。
そして僕たちは陽のあるうちに水遊びをし(着衣ね)バーベキューを楽しんだ後、簡易ターフを設置して波の音を楽しみながら一晩休んで翌朝帰ることにした。のだが…
目が覚めると何故かクラウス以外のほぼ全員が僕の両隣で窮屈そうに固まっていたのは何なんだろう。
これが噂の猫団子か…
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




