111 17歳 outcome クーデンホーフ
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
決闘を終えたシュバルツは熟考の結果「この地へは戻れない」と、そう結論付けた。
パーヴェルをウエストエンドに残して一人祖国で家門の再興を、とも考えていたようだが…
パーヴェルの言うよう全てを水に流すにはあまりにも彼らが受けた傷は深い。
「今更この国の社交界で私はどんな顔をして立てばいいのだ。愚か者の顔か?それとも被害者の顔か?いずれにしても容易ではない」
「そうだろうね…」
「名誉を取り戻していただけただけで十分だ。今まで通りウエストエンドのあの屋敷に居てもいいだろうか?」
「どうだろうね?」
「レジナルド殿…、私は精一杯裁判官としてウエストエンドの一部になるよう励んできたつもりだ。なのにそう仰るのか。何とつれない…」
「僕はね、シュバルツにウエストエンドの裁判は荷が軽すぎると思ってるんだ。もったいないよ。これだけ優秀な人材を塩付けにするなんて」
「それはどういう…」
僕はいぶかしむシュバルツを横目に、協議に忙殺される変革派議員リーダーのマッケンゼン伯爵を連れてくるようモブ議員へ声を掛けた。
「まずマッケンゼン伯爵、暫定とは言え首相任命おめでとう。」
「身の引き締まる想いでございます。ところでそのお姿が真実のお姿なのでありますか?あの幼い姿は一体…まさかあれも魔法だと?」
「あれはウエストエンドお抱え天才薬師によるマル秘エステのおかげです」
「何と! そ、それはまた羨ましい…」
イーサン先生には悪いけど僕はあれをあのまま一般販売する気はない。色々と悪用されても面倒だし今はまだ独り占めだ。
「詳細は企業秘密です。ところでシュバルツの件だけど…」
「うむ。クーデンホーフ家の家屋敷、そして領地のことですな」
シュバルツは顔見知りでもある彼に落ち着いて感情を吐露していく。
いまさら他者に荒らされ痩せ細った領地やロートリンゲンの匂いが付いた王都邸に未練はないという事を。
「至極もっとも。パーヴェルの涙がしみ込んだ王都の屋敷など…」フルフル「跡形もなく解体すべきだ!」
「ローランドはちょっと黙ってようか。あー、僕は一度ロートリンゲンに渡ったとは言え元クーデンホーフ家の資産をこのまま接収させるのには反対だね。シュバルツとパーヴェルは賠償金を受け取ってもいい立場だよ?奪われっぱなしでいいわけない」
「いや賠償金など不要だ。あれは私の無能が招いた事。ならばこれからの国と民の為、そして私と共に隠遁生活を余儀なくされた元部下たちに役立てて欲しい」
どこまでも潔癖なシュバルツ。
だがマッケンゼン伯爵は言った。クーデンホーフ家の資産に対しては相応の対価を支払い買い上げよう、と。それで償いになるとは思わないが今の彼らに示せる誠意は他にない、とも。
「だが我らの国庫にはすぐに動かせる余剰金があまりございませんでな…、ロートリンゲン侯爵家をはじめとした一派から接収した財を復興に充てるつもりでいたのだが、準備が整うまで少し待っていただけないか」
「待つのは構わないんだけどね、それよりも僕から一つ提案がある」
「提案とな…」
「僕の治めるハミルトン分領ウエストエンドはクラレンス王国の王都に匹敵するほど広大でね」
「聞いておりますぞ。クラレンスの王都はトラキア一国ほどの大きさだと。ウエストエンドとはそれほどまでに広大でございますか…」
「そう。なにしろあそこは元々ベルト地帯に添って広がる王国の楯でしたから。あ、今はもちろん安全ですよ?開拓も着々と進んでますし。でもあの広さはさすがに少々持て余し気味で。うちは領土の広さに対して領民の数が少ないんです。少数精鋭なので」
「ふむ…、話がなかなか見えてこないのだが…」
マッケンゼン伯爵はおろかシュバルツ、ローランドさえ僕の話に怪訝そうな顔をしている。だけど僕はお構いなしに話を進める。
もともと広大なウエストエンドの一部はいつか庶子である異母弟に受け渡すつもりで居た事。
ところが弟は色々あって正当なランカスター侯爵家の嫡男に納まった事。
そこで彼にはウエストエンドでなくランカスター領を分割譲渡する予定でいる事などを。
「レジナルド、もしや君は…」
「さすがローランドは読みが早いな」
「浮いた譲渡予定地をシュバルツ殿に、そう言いたいのだな?」
「レジナルド殿!まさかそんな!それはいけない!」
「シュバルツ誤解しないで。僕はこれ以上あなたに恩の押し売りはしない。これはエトゥーリアとの正当なお取引ね。ゴホン!マッケンゼン伯爵、ウエストエンドの北部四分の一をエトゥーリアで買い上げて欲しい。そしてそこをクーデンホーフ家の領地としてはどうだろう。広義での領地替え、とでも言おうか?」
「なんと!他国にエトゥーリア貴族の領地を置くというのか!」
「王都にウルグレイスの領事館があるのを知ってるかな?あそこはクラレンス王国にあってウルグレイス神王国の一部だ。同じようにウエストエンドのクーデンホーフ領全体をエトゥーリアの領事地とすればそこはクラレンス王国であってエトゥーリア共和国の一部となる。」
戦争と内乱に明け暮れた彼らは世界の動きに明るくない。クラレンス王国との接点は嬉しいはずだ。そして今からエトゥーリアの統治に関わるクラレンスにとっても領事の存在は悪くない。双方にとっていかに有意義な事か。
「シュバルツの領には元クーデンホーフ領の中から希望者を募って連れて行くつもりだ。実直な元領主を慕っていた人も残ってるんじゃないかと思う。それにうちには元エトゥーリア兵たちがあれだけ居る。なら国民籍を取り戻した今エトゥーリアとの窓口はあった方が良い。でしょう?」
「レジナルド殿、それは願っても無い提案だがいいのだろうか…」
僕の存在が抑止力になるあの地に大きな騒動はきっと今後も起こらない。明けても暮れても領民同士のたわいもない諍いを調停するだけ。そもそも『審判の門』をくぐってやって来る善良なお客様は深刻な揉め事など持ち込まない。
「うちの裁判はシュバルツの能力に見合ってないんだよ。代々受け継いだ領地への想い…、場所は変っちゃうけどそれこそ先祖を越えてみたら?」
「だ、だが裁判所はどうされる?他愛無い子競り合いばかりと言っても無くては困ろう」
「それにパーヴェルはどうするつもりだ。彼もシュバルツ殿と北部に移住させるつもりか?彼が心の平穏を見出しているのは君に護られたウエストエンドなのだぞ」
「二人の言葉を足したら答えになると思うけど。他愛無い子競り合いばかりで僕に護られたウエストエンドの裁判官ならパーヴェルで十分じゃない?彼は思慮深くとても敏い。法規に基づき正しく判断する目は持ち合わせてると思うけど?」
「もちろんパーヴェルの能力に問題はない。そうだな、レジナルドの言う通りだ」
ローランド、この変わり身の早さよ…
「…パウルを残して私に一人北部へ行けと言われるか」
「健康にもう問題は無いし自立するには十分すぎる年齢でしょ。日帰り出来る距離如きで何言ってんの」
「それはそうだが…」
「心配無用だシュバルツ殿。パーヴェルには私が付いている」
「…心強いことだ…」
ローランドのすかした微笑みと共に、こうしてクラレンス初のエトゥーリア領事が誕生することになったのだった。
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




