108 17歳 around 悪の拠点
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
「また一か所見つけたぞレジナルド、『クーザ』の匂いだ」
「よし!ヴォルフお願い!」
絶叫に近い叫び声が響き渡ったのちの呻き声。ヴォルフにじゃれつかれたくらいで瀕死だなんて…大袈裟な。
「じゃぁ行くよ、そこに隠れて!『爆発』」
轟音とともにはじけ飛ぶ奴らの拠点。ブスブスと燻ぶる瓦礫の中にはブツも金貨も全てが含まれる。
汚職にまみれた今のエトゥーリアで果たしてそれらは正しく回収されるかな?見ものだね。
「おい、こいつらも樹海へ運ぶのか?」
「もちろんそのつもり」
「やれやれ…、どうせ見捨てるならこのまま放置すればいいものを」
「こんな悪党どうでもいいけど目の前で見るのはちょっとヤダ」
「軟なことだ。」
「いいから縛り上げて!」
今僕は『クーザ』の拠点を狙った連続爆破魔と成り果てている。
因みに今ので三か所目、樹海へ放り込んだ悪党はこれで十人目だ。運が良ければ生きて樹海を出られる…かもしれない。
「ちょっと待った!ここはウォーデモン商会…」
パーヴェルを救い出した直後、ごく局部的な大地震によって半壊したはずの本店はすっかり修繕されている。
「半壊じゃ足りなかったか…えぇいっ!『隕石』」
まるで流星群のように降り注ぐピンスポット隕石群。慌てふためきながら外に飛び出す従業員。
サーチで屋内から人の気配が消えたのをキチンと確認して、からの…
「『巨大隕石』」
ドォォォン…!!!ガラガラガラ…
あ、たったいま建造物損壊犯にもなりました。
「回りくどいな…。ウォーデモンをひねりつぶせば終わるだろうが」
「ちょっと!僕は野蛮な輩じゃないよ?だからって悪を叩きのめす正義の味方でもないけど。今のところウォーデモンは直接手を下してないからね。だから僕も直接手はくださない。ね?フェアでしょ?」
「何のことだか…」
実際のところ、ウォーデモンは資金を援助し手下を貸しただけ。私怨でシュバルツを戦場に送ったのも議会を通して合法的にクーデンホーフ家をお取りつぶしにまで嵌めたのも、全てロートリンゲン侯爵の仕業だ。
『クーザ』のことだって、あれはエヴァと当時の第三騎士団副団長が仕組んだことで、仮にウォーデモンが麻薬組織の長だったとしても、別にあの男が僕や父を意図ありきで狙ったと言う訳では無い。彼らはただ商売をしたに過ぎないのだ。
「いいヴォルフ、ウォーデモンを叩き潰す時はゲスマンのエロじじいも一緒だ。どっちか片方だけつぶしても意味が無いんだよ。むしろこいつが消えたら相棒がすげ替わる。一から調べなおすの面倒じゃん。なら今は泳がしとくのが正解だって。今回はあくまで『クーザ』撲滅を願うどこかの正義漢に拠点が狙われた、でいいんだよ」
「今のは?」
「あれは隕石だししょうがないよね。自然の驚異って恐怖だわー」
「ふっ、よく言う」
エトゥーリア中の『クーザ』拠点をつぶせばさすがのウォーデモンも焦るだろう。
そのうえ運悪く同じタイミングで商会本店に隕石が落ちたときては目も当てられない。
となればロートリンゲン如きにかまけてる場合じゃなくなるはず。お気の毒様。
あれから十日ほどかけておまけの中立国、トラキア内にある『クーザ』の拠点まで吹っ飛ばした僕とヴォルフ。何故ならトラキアの拠点こそが『クーザ』精製の現場だったからだ。
まー地下倉庫にあるわあるわ、大量に積み上げられた完成品とそのもとになる魔鉱石が。
「どうするレジナルド」
「…こうするの!『スーパーノヴァ!』」
辺り一面を燃やし尽くす超新星爆発。その中心に発生したブラックホールはほんの直径数ミリながらその場の全てを吸い込んでいく…
「あんなの大量に燃やしておかしな有害煙が出ても困るからね。消滅だよ。消滅」
「…それを見せればお前は世界すら手中に出来ると思うがな」
「それ魔王じゃん…」
僕はとても無害な街作りプレイヤーなのに…心外だよ心外!それはさておき、さてどう動くか。見ものだな。
トラキアの爆破からさらに数日、半壊したエトゥーリアの商会本店からは年齢のわりに元気な老人が血相変えて馬車に乗り込む姿が見える。
「ヴォルフ、あれは商会の旗を掲げていない普通の馬車だよ。それもいたって地味な」
「ふん、つまり隠密行動か」
「なら行き先は…」
「ゲスマンだな」
大商会の頭取なら当然〝商売は信用第一”
注文を受けた以上何があろうと、「納品に間に合いませんでした」ではすまないもの。
なら向かうのはゲスマン一択。もちろん目的は原料の追加仕入れだ。
あえてウォーデモン本人が向かうのは事態の報告をする為…?
それとも不測の事態はゲスマンにも大きな影響を及ぼしたのだろうか。ウォーデモン本人が出向かなくてはならない程の…
「これでお前の目的は果たされたな。奴は当分戻らない」
「少なくとも往復の移動を考えたら一か月はもつかな?」
「もっとだ。奴はトラキアでしばらく留まるだろう。あれだけの不始末の後を任せきりに出来ると思うか?」
「それもそうか。よーし、あと一週間もすれば連合騎士団も到着するだろうし」
「いよいよだな」
「ヴォルフ!変革派に進展あったか確認にいこう!」
大国であるクラレンス、そしてウルグレイスの王は決断力に長けている。恐らくこの程度の内乱に何か月もかけたりしない。
別ルートでこちらに向かっているクラウス団長率いるウエストエンド騎士団。
彼らに紛れてシュバルツが到着する頃にはドンピシャクライマックスを迎えているはずだ。
シュバルツ…、ロートリンゲンを失脚させる隠し玉。
この世界では領から領、国から国へと入る際、関所にて通行証を見せ入領税や入国税を支払う必要があるのだが、もちろんこれは正規ルートである街道を使った場合の話。山中からコッソリ入国出来ないわけじゃない。
けど前世と比べ物にならないほど凶暴な獣がウロウロする山など危険を冒してまで使うバカは多くない。ウエストエンドの最初の住人、東の山を越えてきた難民たちも山越えでその数を半数に減らしたくらいだ。
そんな山中を危険覚悟で抜けるのなんて、税をケチった貧乏冒険者か訳アリの山賊まがいに決まってる。
そこでシュバルツにはウエストエンド騎士団の中で一番若い、比較的容貌の似た、風の騎士ユーウィンの通行証を持たせている。
この通行証はその国の国民籍を持つ者にだけ発券される身分証明であり、裏書きするのは王宮の戸籍課だ。
魔法で作成されたその通行証はホログラムのように本人の姿が浮かびあがり、本来なら偽造も譲渡も不可能な一点物である。
だけど偽装ポーションで髪色を変えたシュバルツはユーウィンにとても良く似ている。あの解像度の悪さなら問題なくイケるだろう。
本来これは違法なこと。なのでユーウィンには通行証を借り片棒を担がせたお詫びに、僕自ら選んで持参した賄賂代わりのお揃いマントを手渡した。すると彼は
「こ、これを着た俺と領内パトロールにお付き合いくださいますか?ふ、ふふ、二人きりで」
と、実に仕事熱心で殊勝な言葉を口にしたのだ。なんたる忠臣、僕は三国一の果報者だ。
もちろん満面の笑みで了承したのは言うまでもない。
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




