90 16歳 I'm back ウエストエンド
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
列車で帰路に付く僕と領地へ戻る父はここから別行動になる。
父はクラウスたちの護衛により直接ランカスターまで向かう予定だ。
ランカスターと王都は馬車で四日程の道のり、ウエストエンドとランカスター間よりうんと近い。
もっとも馬車鉄道が出来たおかげで王都からの移動時間は変わらなくなったんだけどね。
そうそう。僕は父の護衛についた第一の騎士に、強制捜査の時に使った枯渇したダンジョン跡地、あそこに小屋をひとつ建てて欲しいとお願いすることにした。
「『近道の鍵』用ですね」
「アイテムバレしちゃったことだしここは堂々と。けど扉があった方がそれらしいでしょ?目立たない小さいのでいいからね」
「お任せください。レジー様に相応しい小屋をご用意しましょう」
実際は『ワープゲート』の目くらまし用なんだけど…それはヒ・ミ・ツ。
それにしても僕に相応しい小屋って…何?
「ただいまー!みんな帰ったよー!」
「レジー様!お仕事お疲れさまでした。領内は何も問題ありません。入浴の準備は整えてあります。お布団も陽の下でフカフカに干してあります。お食事も好物ばかり揃えてあります。それからそれから…うぇぇ、会いたかった…」
「ウィル、一か月しか離れて無いよ?どうしたの?」
「だってコリンも居なくて…シャリムはふてくされて出てこないし…」
「淋しかったんだね。よしよし。ちょうどいいや。話があるからこっちおいで。一緒にお茶しよう」
一か月ぶりのウエストエンド、屋敷に戻った僕の顔を見るなり抱きついてきたのは泣き虫のウィル。こんなんで今から話す内容…大丈夫かな。
「あの…、話って…」
「うん。コリンの事だよ」
部屋にはコリンと…、そしてジェイコブも居る。
ある種の緊張感が漂うその空間で、僕は王都で見てきたこと、決まった事を極力淡々と報告していった。
パーカーの末路。エバの醜悪な最期。父の降爵。そして…、隠されていたコリンへの想い。いや、あれは二人の母親、フローラさんへの想いと言うべきか。
「コリンにも言ったんだ。彼は父の実子で…だから叔父様との縁組を解消して正式に父の子として届を出すべきだって。公爵から侯爵になったとはいえ、伯爵家の五男より侯爵家の二男の方がコリンの為だ」
「坊ちゃま、それは早計でございますぞ。公爵の名を失ったのであれば尚のこと実りの無いランカスターよりも富んだハミルトンに近づきたい者のほうが多いのではないですかな」
「ジェイコブ、実はね…、あの地はこれから僕の領地になることが決まった」
「おお!では公爵位を継がれるのでございますな!」
「うん…、そのうえで僕は今まで通りあの領の運営は父に任せようと思ってる」
もっともこれからは口もお金も出すけどね。
「僕が手を出す以上ランカスターはこれからかつてないほど栄えることになる。あ、これは決定事項だから。分かるね?これから人々の態度は一変するはずだ」
「そうでしょうな。閉鎖的なウエストエンドと違いランカスター領であれば今まで通りのやり方が通用する。社交界の繋がり…お父上とであれば生かす事が出来ましょう」
「そしていずれは本来のランカスター侯爵領部分は分領するつもりでいる」
「…坊ちゃまが公爵閣下にそれほど情をお持ちとは思いませんでしたが」
「ジェイコブ、これは父の為じゃない。コリンの為だ」
「僕の…!レジー様、そ、それは?」
「コリンには父の子としてランカスター侯爵家の嫡子となりいずれその侯爵領を継いでほしい。それまでは何とか父のお尻を叩いておくから跡継ぎになってくれないかな?」
「で、でも…」
「でもじゃないよコリン!これは凄いことだよ!ああ嬉しい、母さんの願いがやっと叶ったんだ!」
「兄さん…」
戸惑うコリンをよそに喜びが爆発したのは意外にも隣に座るウィルのほうだ。
彼は最期の晩に母親が発した言葉を今までずっと胸に秘めていたのだろう。
愛する公爵様によって保障される愛する子供たち、愛に包まれた未来。それを夢見ながら彼女は天国へと旅立っていったのだから。
「少し遠回りしちゃったけど…でもねコリン。母さんはそれを望んでたから…グス…公爵様の息子になるコリンを…。コリンはね、母さんにとって公爵様との愛の証なんだよ。その姿を見せてあげて」
「だけど僕は…、兄さん…僕…」
「うん分ってる。僕たちはずっと兄弟だよ。けど一つだけ…、母さんは僕をコリンの従者にって言ってたけど…それは無理!」
「グス…、兄さんにはラベンダー色のご主人様が居ますもんね…」
「うん!」
抱き合いながら涙を流す二人。うっ!もらい泣き…
ススス「坊ちゃま、ハンカチでございます」
「ありがとうジェイコブ」ズビー「そんな訳だからコリンには二年後魔法学院に行ってもらうよ。あれは貴族家の子女にとって義務みたいなもんだから」
「レジー様…、でも僕魔法なんて…」
「『祝福』を受ければきっと芽吹く。そうしたら僕が特訓してあげる。ね?」
「でもやっぱり本物の貴公子に混じって学院なんて!」
「コリン…行きたくても行けなかった僕の分まで学生生活を楽しんできて欲しいな…」
…罪悪感の嵐…
わざとらしくシンミリしてみせると、コリンは「僕が必ずやレジー様の代わりに!」と大号泣…。…軽い冗談のつもりだったのに…。乙女ゲーの舞台に行きたいと思った事なんてただの一度も無かったのに!ああっ!良心の呵責が…!
…一晩しっかり反省しました。
気を取り直して…何から取り掛かろう?
まずは新生ランカスター騎士団の募集に…、え?何で募集が必要かって?
だってしょうがない…。元第一の騎士、その三分の一はすでに諜報部隊として無くてはならない存在だし残りの騎士もバイヤールをはじめとして、大部分がすでにウエストエンドを離れたがらないんだから。
僕はさっそくオスカー、正確にはオスカーを介して彼のお父さんに「誰か紹介して」と協力を要請した。
今思えばオスカーに『糸電話』を持たせたのは実にファインプレーだ。
そうだ!諜報と言えばあの日王城で会ったムカつく侯爵二人に誰か張り付かせるよう指示を出さなくちゃ!
あー、やることが多い…。けど幸いゼロから始めたウエストエンドと違い、ランカスターは最低限の運営は出来ているわけで…今すべきは信頼回復!
「ゴーディー!」
「はっ!」
「ランカスターの領民にもエヴァの裁判結果は知らせてあるよね?」
「もちろんでございます」
「そこでだ。伝聞の形で領主は一服盛られてたって言うのをもっとドラマチックに広めてくれる?そうだね…、領民の同情を誘うように…少し盛ってもいいから若干悲劇的に。例えば…、身分差ゆえ引き裂かれた平民の恋人を病で亡くした公爵は失意のあまり易々とエヴァの企みに…とかなんとか」
「承知しました!」
こういうのはおばちゃんの噂話が一番効くんだよね。おや?ドアの外からノックの音が…
「坊ちゃま、執務中に失礼します」
「ジェイコブ、どうしたの?急ぎ?」
「その、ヴィラの副支配人が至急顔を出すよう申しております」
「良いけど…何があったの?」
「坊ちゃまが不在中に訪れた宿泊客たちが「支配人が戻ったのなら一言挨拶がしたい」と騒いでおるようです」
それはまた律儀な…。さすが『審判の門』を潜り抜けた選ばれし宿泊客、礼儀正しいことこのうえない。
仕方ない、これもお仕事。
行きますか!
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




