1 転生
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
ここはどこだろう…
長い長い眠りから覚めその目をうっすら開けた時、僕の視界に入って来たのは人も部屋もぼんやりとした、まるで朝起きたてで眼鏡もしてないあの時みたいな…そんな視界だった…
手も足も自由はきかず…起き上がろうにも起き上がれず、植物人間にでもなってしまったかと恐れおののき声を出そうとしてみれば…
「おんぎゃぁぁぁ」
はぁ!?
あ…あ…、赤ん坊かー!
どこにでもいるごく一般的な日本男子。平凡を絵にかいたようなお気楽大学二年生、そんな僕は名を佐藤礼二という。
特に目立つでもなく、かといって地味でもなく、モテるでもなく、嫌われるでもなく、高校時代の成績で言ったらオール4といった、そこそこのちょっと上をキープするのに必死だった今どきのごく普通な若者だ。
親友と呼べる友人は片手程。だけど仲間と呼べる相手なら多分1500人ぐらいは居るんじゃないかな?
自分のことなのに疑問形、どういうことかって?
それは僕の趣味に起因する。
僕の趣味はゲーム実況。とは言え街づくりシミュレーションゲームの地味…な実況だ。
そのチャンネル登録者数はおよそ4000人ぐらい。多いのか少ないのか評価の別れるところだが、ライブ配信すれば大体500人くらいは見に来てくれる。だから真ん中の少し下を取って1500人くらいがアクティブユーザーの実数かなって勝手に思ってる。
高校時代からコツコツ五年続けてる大切な趣味で大事なつながり。そうしてようやく登録者数4000まで漕ぎつけたのだ。
今までいろんな街をゲームの中で作って来た。
そんな僕がここ二年ぐらい続けているのが中世ヨーロッパの都市建設ゲーム『フロンティア』だ。
4000人の中の1000人ぐらいはここで増えたと言ってもいいだろう。
いま巷は異世界ブームの真っただ中。何千何万の異世界がそこら中に存在する。
その異世界ファンタジーの街造りに手を出したのは何を隠そう妹の影響だったりする。
妹も同じくゲーム好き。僕らはゲーマー兄妹だが、妹の好きなジャンルはいわゆる乙女ゲーってやつ。
ゲーム好きとは言っても、バイトだ、ライブだ、イベントだ、と、リアルが忙しく、かつ同時にいくつものタイトルを同時に進める妹は、メイン以外のサブクエストやゲーム内ミニゲーム、つまりレベル上げやらレアアイテムゲットやらといった脳死周回が必要なものは時間のある僕に丸投げするのがいつものパターン。
そんな妹がドはまりしたのが異世界転位ファンタジー『イケメン育成ゲーム 恋と魔法と時々バトル』略して『恋バト』
あまりの人気に漫画やアニメ、別タイトルとのコラボゲーム、はたまたスピンオフゲームと、幅広くメディア展開している女性に人気の乙女ゲーだ。
ゲームの舞台は魔法だの聖なる力だのが中心となる『クラレンス王国』。
そこで男としてはどこか未熟なイケメンたちを聖女である主人公(途中で聖女だと分かる)が力を合わせて魔の森の魔獣や近隣の悪い国や国内の悪徳領主や、そういった有象無象とバトルしながら、本物のイケメンに育成しつつ、尚且つ恋愛をしていくという、実にエンタメ要素てんこ盛りの欲張りなゲームである。
その意外と骨太な育成部分こそがこのクエストやミニゲームであり、ここは運営にとっての集金イベント、つまり課金ポイントでもある。
メインクエストと違いレベルを爆上げするのにはこの部分が大きく関係してくるわけだが、中の人のイベントに忙しい妹はシナリオとスチルのコンプ以外興味はないわけで…今まで何度言われた事か。「お兄ちゃんおねが~い♡♡♡」
妹にハートを飛ばされたところで何も嬉しくない。だがここがお兄ちゃんの辛い所だ…
まぁ…僕は大学生と言っても尤も気楽な二年生だし、基本インドアだし、動画配信による収益でバイトしなくていい程度には賄えている。
街造りの合間の気分転換と思って快く引き受けているのだ。なんなら積極的に。
それは何故か。
妹曰く、このゲームはキャラのステータスで解放されるシナリオの数が変わってくるのだとか。
そのうえ、全シナリオをコンプすると手に入るアイテムや登場するSRキャラが居るのだとも。
さらにだ!レベルもスキルもアイテムも、フルコンプフルカンストで解放される隠しルートがあるんだとか!そしてそこには究極のSSRキャラが待っている…
別に乙女ゲー自体に興味は無いが、隠しルート、SSRと聞いたら欲しくなるのがゲーマーの性。
パソコンで街作りをしながらタブレットで『恋バト』のレベル上げをひたすらすると言う、課金ありきのタイパの良い二刀流で周回しまくり、溜めに溜めた膨大な経験値にものを言わせてカンストしましたとも。
全キャラ、レベルも魔法属性もスキルもカンストしたうえ、アイテムまでフルコンプしましたとも!
お陰で魔獣の癖やミニゲームのアルゴリズムまでもうすっかり染みついている。
当然シナリオはフルで解放され、妹の熱望していたSSRキャラの出てくる隠しルートもついに解放への準備は整っていた。イベント遠征中の妹も帰ったらさぞ喜ぶだろう。
僕は乙女ゲーの本編に関し、キャラクターと世界観、大筋の設定以外はほとんど知らない。恋愛フラグとかストーリーのエンディングとかまるで分かっちゃいない。
だけどサブクエストとあのミニゲームに関してだけはもはや目を瞑ってもクリアできる自信がある。
とまぁ脱線したが、そんなことから中世ヨーロッパの街造り『フロンティア』にハマったのだが、昨今の異世界ブームもあり動画の視聴数もがぜん跳ね上がった。
実況中はみんな投げ銭なんかもしてくれて…バイトしなくて良くなったのは本当にありがたい。
そんな日常を過ごしていた運命のその日、僕は妹に頼まれ二次元コラボの得意な〝し〇むら”に『恋バト』のTシャツを買いに来ていた。
その帰り道、多分同じ店から出てきたであろう、さっき僕と同じTシャツを手にしていた女性目掛けてトラックが突っ込んできたのだ。
妹みたいで放っておけなかったんだろうか僕は。
気が付いたら勝手に身体が動いてて…
自分にこんなヒーロー属性があるとは知らなかったな…。あの女性は助かっただろうか…
とにかくそこで僕の記憶は途切れた。とまぁこんな風に、残念ながら以前の人生は終わりを告げた…のだが。
それにしても赤ちゃんか…。これでは何も出来やしない…。っていうか、どこだよここ!僕は誰だ!
二か月もすると少し視界がハッキリしてきた。そして六か月経つ頃にはようやく人の顔が判別できるようになってきた。
そして分かった事…。それはこの国が日本でも現代でも無いって事だ。
部屋に出入りする女性たち…。彼女らはいわゆる乳母で、その服装は近世ヨーロッパのそれに近しい。
だけどここがヨーロッパで無い事は明白だ。
何故なら暖炉の火は”ファイヤー”によって起こされ、ウォッシュスタンドのジャグとボウルには”ウォーター”によって水が注がれ、そして…僕のお尻は”クリーン”によって清められる。う~ん、この。
異世界だ!ここは異世界、ファンタジーの世界だ!魔法…ふぉぉぉぉ!興奮するな!いつから使えるんだろう?
いやあ嬉しい展開だ!
毎日更新を目指しています。
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




