第十七話 百種目の咆哮
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ゼンたちは、あの“空間”から島へ戻ってきていた。
大会も残り時間は、わずか。
それでも《空白の足跡》は止まらない。
島の魔獣を、次々と討伐していく。
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魔導モニターには、木々を裂いて駆ける三つの影が映し出されていた。
「おっとぉ、ここで《空白の足跡》が猛攻中ー!
一時、魔導カメラが行方を見失っておりました!」
実況席で、パンヤーが前のめりになる。
映像が再び捉えられた瞬間、観客席がどっと沸いた。
ルルが――笑っていた。
楽しそうに、ルンルンで。
「ルル選手がルンルンで大暴れ中です。これは……」
「感情の高まりが、魔力出力に影響していますね。
……恋、かもしれません」
「それは違う気がします!」
即座に返され、会場に笑いが広がった。
――その瞬間だった。
島全体に、無機質なアナウンスが響き渡る。
『島内の魔獣が、九十九種討伐されました。
規定条件を満たしたため、
百種類目の魔獣を解き放ちます。
高ランク希少魔獣につき、十分にお気を付けください』
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百種目。
参加者たちの討伐が積み重なった結果、
島そのものが、最後の一体を解放したのだ。
次の瞬間。
島の上空、雲の下で、何かが“きらり”と光った。
(……AI。なにが出てきた?)
『確認しました。
魔獣名:クリスタルワイバーン
脅威度:Aランク
属性:光
備考:ワイバーン種の中でも特に希少とされています』
ゼンの目が、子どもみたいに輝いた。
「ワイバーン……!!」
ルルとシノが、思わず笑う。
「よし。絶対、討伐するぞ!」
三人は迷わず、その光へ向かった。
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同じころ――
その“光”の近くには、すでに別のパーティがいた。
《紅炎の翼》の三人だ。
「こんな近くに湧いてくれるなんて、ラッキー」
三人が同時に炎の魔法を叩き込む。
だが――
バチン、と乾いた音。
ワイバーンの全身を覆う結晶が、炎を弾いた。
次の瞬間。
ワイバーンが大きく息を吸い、
胸部の結晶が白く眩く輝く。
「なにかくる」
光のブレスが、一直線に地面を焼いた。
《紅炎の翼》を、もろに直撃する。
「まともに食らってしまいました!
だ、大丈夫なのでしょうかぁー!?」
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少し離れた場所で、それを見守っていた者たちがいる。
《深森の観測者》だ。
「あれは……討伐厳しいですね」
フィンが、傍観者のように呟いた。
「Aランク希少……伊達じゃないわ」
リリィが短く息を吐く。
サージは黙って、空を見上げていた。
そのとき――
森の影から、三つの影が走り出る。
《空白の足跡》だ。
「――間に合った」
ゼンは間合いに入ると、即座に詠唱を切る。
「流れよ、水。
形を成せ――水槍」
水の槍が放たれる――が、
バチン。
弾かれた。
「……なに? 魔法を弾いた?」
AIが即座に答える。
『クリスタルワイバーンの高密度クリスタルは、
魔力干渉を反射する性質を持っています。
魔法攻撃は通りにくいと推測されます』
「なるほど……」
ゼンはすぐに判断した。
「壊す。……シノ、俺の合図で、切ってくれ」
「はい!」
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その瞬間。
ワイバーンの胸が、再び眩く光る。
「ブレスがくる!」
ゼンが叫ぶ。
「影よ、集え――遮れ」
闇が前方に展開し、
盾となって光を正面から受け止めた。
ぶつかり合う、光と闇。
ギギギ……と空気が軋み、地面が震える。
しかし――
その闇は、ゼン一人のものではなかった。
「――おおおおっ!!」
黒牙の咆哮。
ガルド、バイゼル、ゴル。
三人の闇が重なり、
光のブレスを完全に押し返す。
「ゼン殿! 借りを返させてくれ!!」
「ガルドさん……! ありがとうございます!」
「おおっとぉー!! これは共闘だぁ!!
《空白の足跡》と《黒牙の咆哮》、闇が重なったぁー!!」
パンヤーの声が、会場を震わせる。
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ゼンは一歩、前へ。
「影よ、乱れ――縛れ」
影が絡みつき、
ワイバーンの動きが、明らかに鈍る。
「……よし」
ゼンが笑った。
「今だ、シノ!」
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「はい!!」
シノがワイバーンを見上げる。
「……でもっ、届きません!」
「任せて!」
ルルが前に出る。
「集え、光。
散らばる理を束ね、
重ね、圧し、
空より縛り落とせ――光縛」
光が翼を空中で押さえつけ、
巨体が強引に引きずり下ろされた。
「いきます!」
シノは刀を振り抜く。
スパン――。
乾いた音とともに、
胸部の結晶が真っ二つに割れた。
「結晶破壊!」
「反射が消えた!!」
ワイバーンが、苦悶の咆哮を上げる。
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その瞬間――
ゼンに、異様なまでの魔力が集まり始めた。
空気が重くなる。
雲が、渦を巻く。
ゼンは天を見上げ、告げる。
「天よ、
我が敵に堕ちよ――」
一拍。
「黒雷」
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轟音。
闇を帯びた雷が、天を裂いて落ちる。
砕けた結晶の奥――核を貫いた。
その裁きを拒むことすらできない。
巨体が、力を失って崩れ落ちた。
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「すごいチームワークだぁぁ!!
クリスタルワイバーン撃破!!」
「高ランク希少魔獣撃破!
五十ポイントが追加されます!!」
観客席が、爆発する。
「これは……愛の力ですね」
「さっきから解説が感情的ですよ!」
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『――これにて、グランド・ハント・サバイバル
全日程を終了します』
結果が告げられる。
『優勝――
《空白の足跡》
最終ポイント、八百八十PR』
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「《空白の足跡》、優勝です!!」
会場が揺れる。
「おおおおおおおおおっ!!」
歓声の中で、
ゼンはルルとシノを見た。
三人で、笑う。
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グランド・ハント・サバイバル
最終日。
百種類目の魔獣。
その咆哮は――
黒雷とともに、終わりを告げた。
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第十七話 完
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▼ グランド・ハント・サバイバル
進捗データ(3日目終了時点)
パーティー:空白の足跡
大会結果:優勝
総獲得ポイント:880pt
討伐魔獣:72種




