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異世界魔獣図鑑 ~AIスキルが優秀すぎて無双します~  作者: 宮田 喜助


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第一話 境界の魔物


――死ぬ。


そう、理解した瞬間には、

もう遅かった。


森の奥で、

それは――動いた。


輪郭の定まらない黒い影が、

音もなく距離を詰めてくる。


空気が凍りつき、

肺が縮こまる。


逃げようとして、

足が動かなかった。


そのとき――


「ゼン様、戻って――!」


必死な声が、背後から響いた。


次の瞬間、

背中に、強い衝撃。


身体が、

無理やり後ろへ突き飛ばされる。


地面に転がり、

視界が揺れた。


顔を上げたときには――

もう、遅かった。


俺の前に立っていたのは、

屋敷の従者だった。


黒い影が、大きく口を開く。


一瞬。


血が、闇に散った。


噛み砕かれる音が、

やけに近くで響いた。


俺は――

動けなかった。


魔法も。

声も。

何ひとつ、出なかった。


魔獣は、

まるで用事を済ませただけのように背を向け、


森の奥へ、

溶けるように消えていった。


地面に残ったのは、

血と、

引き裂かれた布切れだけだった。


俺は、その場に崩れ落ちた。


震えが、止まらなかった。



……ああ。


そうだ。


俺は――

転生者だった。



前世の死因は事故だった。


日本で、

何かを成し遂げることもなく、

本気でやりたいことも見つけられないまま、

あっさり死んだ。


目を開けると、

知らない天井があった。


木の匂い。

柔らかな光。


声を出そうとして、気づく。


声が出ない。

身体も動かない。


(……赤ん坊だ)


そのとき、

頭の中に無機質な声が響いた。


AI:

――起動確認


意味は分からなかった。

だが、質問すれば答えが返ってくる存在が、

常に頭の中にいることだけは理解した。


三歳になる頃には、

状況を把握していた。


俺の名前は、ゼン・ヴォイド。

辺境ミルナ村を治める、

ヴォイド家領主の息子。



ある日の午後。


中庭で、

俺は木の枝を振っていた。


それを見て、

彼女は困ったように笑った。


屋敷に仕える、大人のメイドだ。

俺にはいつも優しくて、

あったかい人だった。


「ゼン様、危ないですよ」


「なあ、セリス」


「なんですか?」


「夢って、ある?」


少し意外そうに瞬きをしてから、

彼女は空を見上げた。


「……私は、世界を見てみたいです」


「世界は、思っているより広いのです」


その言葉が、

なぜか胸に残った。


「じゃあさ」


俺は、何も考えずに言った。


「おれが、連れてってあげるよ」


彼女は一瞬きょとんとして――

それから、優しく笑った。


「ふふ、世界をひらいてくださいね」


「期待してますよ、ゼン様」


俺は、

セリスが大好きだった。



五歳のある日。


俺は、

頭の中の存在に聞いてみた。


(魔法って、使えるのか)


AI:

――条件を満たせば可能です

――詠唱を提示します


半信半疑で、

言われた言葉を口にした。


「――火よ、集え」


掌に、熱が集まる。


小さな火が、

そこに生まれた。


「……できた」


胸が、高鳴った。


(もっと、できるようになるぞ)


そう思った。


気がつけば、

初級魔法は一通り使えるようになっていた。


(よし……だいぶ強くなった)


(あの森に、行ってみよう)


その森の奥には、

違う世界が広がっていると、父上が言っていた。


でも――


「あの森には、絶対に近づくな」


父は、何度もそう言っていた。


危険だから。

理由は、教えてくれなかった。


(……でも)


(少しくらいなら、いいだろ)


(俺、魔法も使えるし)


(セリスに、

 広い世界を見せてあげたい)


そう思って、

俺は屋敷を抜け出した。


――そして、

すべてを失った。



屋敷に戻ったあと。


喉の奥が、焼ける。


「……くそ」


「くそ……っ」


拳が、勝手に震える。


「くそくそくそ……」


全部、俺のせいだ。


俺が調子に乗ったから。

俺が勝手に森に行ったから。

俺が――強いと、勘違いしたから。



俺は、

震える声でAIに聞いた。


(……さっきの魔物は、なんだ)


AI:

――境界の魔物と言われています


(倒せるか)


AI:

――いいえ

――直接の討伐は不可能です


胸の奥が、冷たく沈んだ。


(……じゃあ)


(あいつを、どうすればいい)


AI:

――古い文献に記録があります

――魔獣図鑑を制覇した者は

――境界の魔物に干渉し

――世界が開けたと


世界が、開ける。


なら――

俺が、開く。


セリスと交わした言葉を、

無駄にしないために。


そのために、

魔獣図鑑を集める。

全部だ。


あの魔物を倒して、

世界を開く。


これは――

大切なものを失った少年が、

世界を“開く”ために歩き出す物語だ。



第一話 完


ここまで読んでいただきありがとうございます。

次回はヒロインが登場します。

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