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告白
寸止めの拳を受け、京子は息を整える。
額の汗を拭いながら、小さく笑った。
「……分かったわ。負けを認める。
そして……スパイである私を、好きにするがいい」
その言葉に、大吾の胸は高鳴った。
彼は静かに距離を詰め、真剣な眼差しで京子を見つめる。
「……なら、結婚してくれ」
京子は一瞬、目を見開いた。
だがすぐに、鼻で笑った。
「……ふん。私は阪神ファン。
あなたとは、相入れないわ」
大吾は微笑みながら、胸を張った。
「心配するな。俺は生粋の阪神ファンや」
その一言に、京子は肩の力を抜いた。
阪神タイガース。大阪の血筋。父の虎吉。
すべてが繋がった気がした。
「……分かったわ。
じゃあ、承諾する」
屋上の夜風が二人を包む。
戦いで試された互いの力、
寸止めで測られた心、
そして阪神という“共通の血脈”。
それらが静かに、
二人を結びつけた瞬間だった。




