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一目惚れ
東城会本部、薄暗い会議室。
大吾は分厚いファイルを開き、採用試験の合格者リストを確認していた。
名前、年齢、特技、体力テストの結果…。
膨大なデータの中、ひときわ目を引く写真があった。
――京子。
髪をまとめた整った顔立ち。
凛とした瞳。
面接での微笑みも、体力テストでの姿も、すべて写真に収められている。
大吾は一瞬、手を止めた。
その瞬間、心臓が変なリズムで跳ねるのを感じた。
「……なんや、この子……」
視線が写真に釘付けになる。
ただの新人ヤクザ候補の写真なのに、
心を掴まれてしまった。
大吾は咳払いをして、慌てて視線を逸らす。
しかし、目は自然とまた戻ってしまう。
「……一目惚れって、こんな感じなんやな……」
会議室の空気は冷たく、ファイルの紙の匂いだけが漂う。
だが大吾の胸は、熱く、ざわついていた。
彼の頭の中で、すでに京子の名前が何度も繰り返される。
「京子……」
東城会に戻っても、
心の中で、彼女はもう特別な存在になっていた。




