「あの曲に会いたい」シリーズ(その9) ー ロマンス
ふとした瞬間に、耳の奥で鳴り出すメロディ。
どこかの喫茶店で、通りのスピーカーから、あるいは記憶の片隅から――
「あの曲、もう一度聴きたいな」と思うことがあります。
このシリーズは、そんな“音の記憶”をたどるエッセイ(ほとんど独り言…)です。
1960年代から80年代の曲を中心に、ジャンルも国境も問わず、ロックもポップスも歌謡曲もフォークも、何でもありです。
え? 私の年齢? それはヒミツです。
シリーズタイトルは、NHKの番組『あの人に会いたい』のパクリです。(;'∀')
でも、「あの曲が聴きたいなぁ」と思うときって、曲を聴くのと同時に――当時その曲を聴いていた“自分”に会いに行くような感覚も、どこかにある気がします。
(こじつけ感ツヨっ!)
投稿は不定期で~す。(;^ω^)
ロマンス
1975年にリリースされた、日本の女性歌手・岩崎ひろみさんの曲です。
作詞は阿久悠さん、作曲は筒美京平さんの黄金コンビです。
大好きな曲です。
ミディアムテンポで憂いのあるメロディアスなサビから始まり、リズムをタイトにしてAメロ、そしてブリッジから再びサビへ――。
どれも飽きさせない素晴らしいメロディライン。
(やはり、筒美京平さんは天才なのであります!)
当時16歳の岩崎さんが歌うには、少し妖艶な、でも初々しい阿久悠さんの歌詞。
そして岩崎ひろみさんの抜群の歌唱力。
そりゃ、当然大ヒットするよね〜って感じです。
Wikiによると、シングル累計売上は90万枚だそうです。
私はこの曲に忘れられない思い出があります。
学生時代の同級生との思い出です。
彼の印象は、ちょっと癖っ毛の髪をビシッと七三に分けた、かなり地味で大人しく、目立たないヤツ。
特に仲の良い友人という訳ではなく、たまに会話を交わす程度の付き合いでした。
ある日、そんな彼とたまたま話をしていた時に、何かの拍子で私が「岩崎ひろみさんの『ロマンス』という曲が好きだ」と言った瞬間、
彼の瞳の奥がビカッと輝いたのです。
そして「俺も岩崎ひろみ、大好きなんだ。なぁ、一緒にひろみのコンサートに行かないか?」とお誘いを受けました。
その時に私がどう感じたかは覚えていませんが、とにかく一緒に岩崎ひろみさんのコンサートに行くことになったのです。
チケットの手配などはすべて彼がやってくれることになり、当日はコンサート会場である、今はなき新宿厚生年金ホールで待ち合わせました。
すると彼は、何やら大きな手提げの紙袋を持って待ってくれていました。
私はその紙袋に一抹の不安を覚えましたが、とりあえず会場の中に入りました。
会場は満席でしたが、我々の席は前の方で、かなり良い席でした。
内心、よくこんな良い席が取れたもんだなぁ、と感心したのを覚えています。
さあ、会場の灯りが落ち、コンサート開始の場内アナウンスが流れます。
その瞬間です。
彼はあの紙袋をガサガサと弄ると、派手なハッピ、大きく「ひろみ」と書かれたハチマキ、そしてメガホンを取り出したのです。
呆気にとられてそれを見つめている私をよそに、彼は素早くハッピを纏い、ハチマキを頭に巻きます。
いよいよオープニング曲のイントロが流れだし、岩崎ひろみさんがステージ上に姿を現します。
拍手が起こります。
私の知らないアップテンポの曲でした。
すると曲に合わせて大きな手拍子が起こり始めました。
周囲を見ると、なんと彼のようにハッピを纏い、ハチマキをした観客が大勢いるではありませんか!
そして彼らの「ひろみ〜っ!」と声を張り上げる、一糸乱れぬ合いの手も始まります。
隣の彼もその一員です。
もう彼は、私が知っている“彼”ではありませんでした。
彼の視界にもはや私はいません。
つまり私は、岩崎ひろみさんの親衛隊集団のド真ん中に座っていたのです。
そして、あの学校では地味で目立たなかった彼は、岩崎ひろみさんの熱烈な親衛隊だったのであります。
私の好きな「ロマンス」は後半の方で歌われていたと思いますが、私はすっかり親衛隊の毒気に当てられて、岩崎ひろみさんの歌声は届いていなかったと思います。
もう今は付き合いのなくなってしまった彼ですが、「ロマンス」を聴くたびに、必ずあの変身した彼の姿が蘇って、フッと笑ってしまいます。
あ、それと最後に。
私は岩崎ひろみさんの声質に、努力では得られない“持って生まれた恵まれた資質”というものを感じてしまうのであります。
何と申しますか、その声質だけで曲に厚みと潤いを与えられる特別な声質、と申しますか……(ん〜、表現がムズい)
アメリカのポップグループ、カーペンターズのカレンさんの声質にも、同じものを感じてしまうのでした。
※この曲は動画サイトなどで検索すると聴けます。
(検索ワード:「ロマンス 岩崎ひろみ」)




