「あの曲に会いたい」シリーズ(その16) ー Mother
ふとした瞬間に、耳の奥で鳴り出すメロディ。
どこかの喫茶店で、通りのスピーカーから、あるいは記憶の片隅から――
「あの曲、もう一度聴きたいな」と思うことがあります。
このシリーズは、そんな“音の記憶”をたどるエッセイ(ほとんど独り言…)です。
1960年代から80年代の曲を中心に、ジャンルも国境も問わず、ロックもポップスも歌謡曲もフォークも、何でもありです。
え? 私の年齢? それはヒミツです。
シリーズタイトルは、NHKの番組『あの人に会いたい』のパクリです。(;'∀')
でも、「あの曲が聴きたいなぁ」と思うときって、曲を聴くのと同時に――
当時その曲を聴いていた“自分”に会いに行くような感覚も、どこかにある気がします。
(こじつけ感ツヨっ!)
投稿は不定期で~す。(;^ω^)
Mother
1970年にリリースされたジョン・レノンのアルバム
《John Lennon/Plastic Ono Band》(邦題:《ジョンの魂》)の冒頭を飾る曲です。
重く、厳かな教会の鐘の音で始まります。
これは、まるで葬儀の鐘のようにも聴こえます。
このアルバムを最初に聴いた時の印象は「剥き出しのジョン」でした。
ジョンが「ビートルズという夢」から抜け出し、
必死に現実と向き合おうとする姿勢が、全身むきだしで記録された作品だと思ったのです。
その象徴が《Mother》。
この曲、私にグッサリと刺さりました。
シンプルでストレート。
私でも理解できるほど容易な英語の歌詞の中に凄まじいパワーを感じたのです。
うわっ、これがジョンの凄さだ!
そう思いましたね。
歌詞はジョンの母親との関係、父親との関係を静かに振り返り、
そして「さよなら」と告げます。
さらに、こう続きます。
「子どもたちよ、私がして来た事を真似しちゃいけない。
私は歩けもしないのに走ろうとしたんだ。」
そして「母さん、おいて行かないで! 父さん、帰ってきて!」と絶叫しながらフェードアウトしていきます。
ビートルズという伝説の中心にいながらも、
それでも自分の人生が幸せだったとは言い切れない――
そう言っているようにも感じました。
この辛辣な言葉を、ピアノ・ベース・ドラム(リンゴです!)だけのシンプルな演奏に乗せて、
ジョンは凄まじい迫力で絶叫します。
私は、完全にやられてしまいました。
ところが――後に知ったのです。
インタビューでジョン自身が、
《Mother》は、アルバムで最も“キャッチー”な曲だ。
と言っていたことを。
「え? キャッチー?そんな軽い言葉で言い表しちゃうの!?」と戸惑いました。
けれど今は、こう思います。
キレッキレの言葉、シンプルな音、そして絶叫。
それらが一体となって、聴く人に突き刺さる。
つまり、“突き刺さるようにキャッチー”に仕上げた曲だったのだと。
そして、冒頭の鐘の音。
あれは一体、何の鐘だったのでしょう。
ビートルズという幻想を葬る鐘だったのでしょうか。
それとも──ジョン自身が
ようやく“自分を生き始めるため”の鐘 だったのでしょうか…
※この曲は動画サイトなどで検索すると聴けます。
(検索ワード:「John Lennon Mother」)




