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小国でありながら高い軍事力を持つレラノーク国にて、ここまで忙しくなるのは国王の戴冠式以来で、久しぶりの騒々しさにみんな城の中で各々遅れをとらないように仕事に没頭している。
急に忙しくなった原因は、数日前にきたある国からの嘆願書だった。
その国は東方にあるイーザン国。
我が国とひけをとらない軍事力があり、おもに魔法を使った攻撃を得意とする国だった。両国は西と東に位置しお互いに王が変わっても争わない平和な関係を築いていた。
そう、いにしえからの教えを守り。
両国は遠い昔、常にいがみあい、争いごとが絶えない国で、エルフの里を巻きこんで戦争を繰り返し、魔法を使えるエルフ達を軍事力の駒として使った。
しかしある時、裁きが下された。
人々の事にあまり興味がなかったエルフ達だったが強力な魔法で両国の土地を半分以上削りどす黒い空から諭した。
―争いを止めぬならこのまますべての土地を消し去ろう
―我ら一族の力を悪しきものに使うならその身をもって裁きを受けよ
凄まじい魔法で今にも国が滅びる危機に両国は慌てて和平を結び未来永劫教えを守ると誓い合った。ただ削りとられた土地は結界が張られ今も聖なる領域としてエルフの里とともに両国の間に鎮座している。
「イーザン国からの嘆願書の内容はどういったものでしたか?」
やる気が感じられない顔で部屋へ入ってきた団長が気になり、すぐさま質問をしてしまう。
「王太子が数日間、我が国を訪問するそうだ。その時に聖なる領域の視察と護衛をしてほしいそうだ」
「なぜ王太子が我が国の聖なる領域に興味を? イーザン国にも聖なる領域はあるはずでは?」
「あるにはあるが門はこちらの国にしかない。詳しいことは来日した日にわかるだろう」
聖なる領域の門はエルフ族にのみ開けることができ人々の侵入を今も拒んでいる。