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「悪魔と天使が喧嘩する話」

作者: 結晶蜘蛛


 高層ビルが建て並ぶ街。

 陽光の下で、人間がまばらに歩いている。

 私――コハエルは天使らしく白鳥の羽を広げて、空を飛んでいた。

 天使として私の使命は死んだ人間を天界に導くこと。

 それとは別に悪魔に魂を取られないようにするのも重要なことなの。


「いた! 今日こそ逃がさないんだから!」


 悪魔のザルヴェスクを発見し、そばに降り立った。

 悪魔の癖して天使のように色白で髪まで白いザルヴェスク

 彼は私を見ると面倒くさそうに顔をしかめた。


「うわ、てめェかよ。ほら、面倒だから帰っタ帰っタ……」


 しっしっと手を振ってくるザルヴェスク。

 失礼な動作に、私はまなじりをつり上げる。


「なによ、その態度は! 私が来たらダメっていうの!」

「天使と悪魔は敵対してるんだからあたりまえだロ。むしろ、近づいてきているお前が例外なんだヨ」

「私はあなたが人間の魂を奪わないように監視しているのよ!」

「なおさら仕事の邪魔ダ。ほら、どっか行ケ」

「嫌よ!」

「何でだヨ……」


 髪をくしゃくしゃとかき乱すザルヴェスク。


「あ、あなたが人の魂をさらって魔界にもっていったら私たちが困るんだから!」

「それはさっきも聞いたようナ……」

「なに、実力行使に出る気? 私を押し倒して服をはいで、悪魔らしい情欲をあたしにぶつける気なんでしょ! 泣き叫ぶ私の言葉なんて無視して、なぶりものにした挙句、ねっとりと言葉でせめて精神をさいなむつもりね、この悪魔!」

「おイ、変な風にヒートアップしているゾ。戻って来イ、この駄目天使」

「あなたの好きにはさせないんだから!」

「さっきかラ、どう見てもオレの方が一方的な被害者だろうガ!!」


 しゃべりすぎたからだろうか、息があがる。

 ザルヴェスクと一緒に居ると胸が高鳴ってしまって、うまく言葉が喋れない。


「ねぇ……ザルヴェスク、昇天しない? そうすれば一緒に居られるよ」

「いヤ、別に天使になりたいわけじゃないんだガ……」

「でも、だって、じゃあ、なんで……あのとき、別の悪魔に襲われてた私を助けてくれたの? そのまま放っておいたら私は死んでたよ。怪我の治療までしてくれて……」

「……覚えてないのカ」

「え?」

「いヤ……ただの気まぐれみたいなもんダ」


 そういって、ザルヴェスクは蝙蝠の羽を広げて飛んで行ってしまった。

 速度がはやく、追いつけそうにもない。

 私は一人取り残された気になり、しょんぼりと下を見つめることしかできなかった。



「アー、やっちまった」


 オレは悪魔ザルヴェスク。

 先ほど天使コハエルを置いて飛んで逃げちまっタ。


「あいつと顔を合わすときっ恥ずかしいんだよナ」


 頬が赤くなっていか気になるガ、空に鏡なんておいてあるはずがなイ。


「それにしても覚えてないカ……」

 

 胸に痛みがはしル。

 オレが悪魔として人間から魂を奪おうとしていたとき、退魔師に気づかれ祓われかけたことがあル。

 半死半生のオレを助けてくれたのがコハエルだっタ


『悪魔だって、死にかけてるのなら助けるべきじゃない!』

『魂を奪われそうなら退けるだけで十分でしょ?』


 まったく笑ってしまうぐらい甘い女ダ。

 天界と魔界は天地開闢以来、争っていル。

 その戦力増強のために悪魔は人の魂を奪っているのだガ……。

 そんな敵を助けるなどとハ……。

 だけド、あの日以来、コハエルの顔をまともに見れなくなってしまっタ。

 まったく、彼女が堕天してくれないものカ……。

 オレの悩みはしばらく続きそうだっタ。

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