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61 結婚式

 パレードが終わり、リリアはセルの瞳と同じ色のドレスから真っ白なウェディングドレスに着替えた。それから、王城で一番広い会場にリリアとセルはやって来た。会場内には防御魔法が至る所に張り巡らせられ、騎士たちがあちこちに配備されている。結婚式には上流貴族たちが参列し、その中にはガイザーの姿もあった。


 壇上には国王がいる。リリアとセルは、国王の前へ来ると、深々とお辞儀をした。


「パレードから無事帰還して何よりだ。さて、早速だが結婚式を始めるとしよう」


 そう言って、国王は片手を上げる。すると、会場の端にいた従者の一人がうやうやしくリリアとセルの前に来て、小箱を開ける。そこには、指輪が二つ並んでいた。


 セルが一つを取り出し、リリアの左手をそっと取る。そして、薬指にはめた。すると指輪が一瞬強い光を放つ。今度はリリアが小箱の中の指輪を取り出し、セルの左手を取って薬指へはめた。同じように、指輪が一瞬強く光る。それを確認すると、国王が厳かに口を開いた。


「聖女リリアと騎士セルの婚姻の儀を行う。聖女リリアはいかなる時も騎士セルと共にあり、騎士セルは聖女リリアを全ての災いから守る。いついかなる時も支え合い、最期のその時まで愛を持ってお互いを思い合うことを、二人は誓えるか」

「誓います」

「誓います」


 リリアとセルが宣誓を行うと、国王は満足そうにうなずく。


「それでは、誓いのキスを」


(はっ、誓いのキス!そっか、参列者のみんなに、セルとのキスを、見られちゃうの!?)


 参列者だけではない。この結婚式は、魔法で国中にリアルタイムで放送されているのだ。二人を祝う国民の多くに、二人のキスが見られてしまう。


 困惑する様子を隠し切れないリリアを見てセルは一瞬だけ目を細めると、何事もないかのようにリリアのベールをそっと上げた。そして、セルは静かにリリアの顔へ自分の顔を近づける。


(ええい、これも聖女リリアとしてすべきことなのよ!)


 覚悟を決めてリリアがぎゅっと目を瞑ると、セルの大きな手がリリアの頬を覆う。そして、小さく唇が触れると、すぐにセルは顔を離した。


「手で見えないように隠したから大丈夫だ。俺たちのキスを、大勢にみられるのは癪に障るからな」


 顔を離す直前、セルはフッと微笑みながら小声で言う。


(セル、もしかして私に気をつかってそうしてくれたの?)


 セルの機転に、リリアは思わず顔をほんのりと赤らめる。そんな二人の様子に、会場からキスが見えなくて残念がる声や、逆にセルをほめたたえるような声が聞こえて来た。


「それでは、二人に盛大な祝福を!」

「祝福を!」


 国王の声と共に、ゴーンゴーンと遠くから鐘の音が聞こえる。結婚式に合わせて、教会が鐘を鳴らしたのだ。会場ではたくさんの拍手とおめでとうの声があがり、リリアとセルはみんなの方を見てお辞儀をした。





「はい、こっち見てください!あ、いいですね!はい、それじゃ今度は二人で顔を近づけて、ああ、頬をくっつけましょうか。そう!そうです!」


 結婚式が終わると、リリアとセルは別室に案内され、今度は写真撮影が行われた。この撮影は二人のための写真でもあるが、国民へ配るノベルティのひとつとして撮ることにもなっている。


 さまざまなポーズを二人でこなし、そのたびにカメラマンは意気揚々と二人をほめたたえている。


「ああ、お二人共本当に美しいですよ!そう!いいですね!それじゃ今度は向き合って、見つめ合いましょう!リリア様、照れないで!がんばって!そう!いいですね!」


(うう、すごく恥ずかしい……)


 カメラマンはいつもノベルティグッズ用の写真を撮ってくれる女性カメラマンなので、慣れている。だが、いつもは一人で撮るものを今回はセルと二人で、しかも密着したり見つめ合ったりするのだ。照れるなという方が無理である。


「はーい、これで最後のショットです。そう!こっちに目線を、はい!そうです、いいですね!はい、ありがとうございました!お二人共ほんとうに良かったですよ!おめでとうございました!お二人の記念すべき姿を撮ることができて、本当に幸せです。ありがとうございます」

「そんな、こちらこそ、ありがとうございます」


 リリアがそう言って微笑むと、セルもカメラマンへお辞儀をする。


「いつもリリアを美しく撮ってくださり、ありがとうございます」

「いえ!リリア様が美しいのは当たり前ですよ!その美しさをきちんと引き出せているなら光栄です。しかも今回はお二人そろってですから、私も緊張しましたよ。でも、本当にお美しくて仲睦まじい様子が撮れたので、フォトブック楽しみにしててください!」

「ノベルティグッズ用の写真は、こちらで選んでも?」

「もちろんです!お二人が納得のいく一枚を、ぜひ選んでください」


 カメラマンの返事に、セルはホッとした様子だ。そんなセルをリリアが不思議そうに見ていると、セルはリリアを見て気にしなくていいよと微笑んだ。


 きっと旦那さんとしてこだわりがあるのだろうな、リリア様とても愛されているんだな、と、カメラマンはセルの様子を見ながらにっこりと満面の笑みを浮かべた。


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