エピソード 9
「なぜ僕が二本で、君が五本になるのか説明してもらいたいのだが……」
連続してスリッパが直撃した左頬を撫でながらミカエルが尋ねる。
「僕が三本。君が四本ならまだ理解もできるが、君が五本というのはどうも納得……」
「じゃあ、聞くけど、なぜあなたは自分の皿に四本置いたの?」
「それはつくったのは僕だし、なにしろ僕は男だか……イダっ」
またもスリッパ直撃である。
「食事中にスリッパはダメでしょう」
「大丈夫。これは対天使おしおき用スリッパだから」
「何それ?」
「見せてもらっていいかな?」
そう言って差し出されたらスリッパも眺める。
……おかしい。
……あの痛みは尋常ではない。並みの人間なら死んでいる。てっきり金属製かと思ったのが……。
……仕掛けなど何もない安物のスリッパだ。
とりあえずスリッパを返し、それから話を本題に戻す。
「それで……」
「男だから多く取った?そういうところがダメなのでしょうが」
そして、お仕置きのスリッパ。
「男だから女よりも余計にソーセージを食べていいというのはこの世界では通用品断りだから」
「じゃあ、五本というのは?」
「それはもちろん」
「私がそれだけ食べたかったからに決まっているでしょう」