エピソード 7
四時間後、ミカエルはスーパーにいた。
もちろん薫子も一緒だ。
「……なぜこうなったのだ?」
ミカエルがため息も交じりに口にした自らにやってきた悲しい現実。
その理由は当然あの会話の後にあった。
「……そう言えば、聞いていなかったけど、その自称天使はなぜ私のところへ来たのかしら」
「今頃になってそれかい」
薫子の言葉に盛大なツッコミを入れてから、ミカエルは考える。
……このまま帰ろうと思ったが、ルシファーが間違って成功するようなことになった場合、他の天使たちに袋叩きに遭う。
心の中でそう呟いたミカエルは暴力を振るいそうな面々の顔を思い出す。
……ガブリエル、ウリエル、ラファエル……。
……とりあえず話をしておくか。
……まあ、僕が失敗した交渉をルシファーが成功させられるはずもないが、何もしないで帰った場合はその可能性は残る。
……ルシファーが成功する目は潰しておくべきだな。
考えがまとまったミカエルが口を開く。
「実は……」
そこから語られたのは、盛大に端折りが入ったがもちろん彼女が次期神になるというあの話である。
「……それで、今の女神であるアリシア様から君を天国に連れて来いと言われて、僕がやってきたわけだ」
「なるほどね」
「わかった。行ってもいい」
「ただし、私が十分に満足させられたらという条件がつくけど。ということで、まずは美味しい朝食をつくって頂戴」
……よし。
……今回も貰った。
実はこの男は料理には自信があった。
だが、そのお驕りと、その油断から来た口の軽さが、彼の、というより全天使、いや、悪魔も含めて天界に住む者たちすべての悲劇の始まりだった。