エピソード 27
天使たちがライバルの前で醜態を晒してから二時間後、ついにその時がやってくる。
「今日は色々忙しくて疲れたので寝ることにします」
「ということで、今日は四人で寝ることになりました」
「ん?」
もちろん薫子の言葉ができないのは新入りであるルシファーであり、昨晩の悪夢を経験している三人はさらなる環境悪化をもたらした彼を睨みつける。
「本来であれば、この場で貴様を殺したいところなのだが、せっかくだ。殺す前に貴様にも本当の地獄を味合わせてやる」
「賛成」
「僕もその意見に賛成。そして、いつも自分が正しいと思っているルシファーの泣顔を見たいと思う」
三人はそう言うが、肝心な部分を意図的に抜いてある。
当然その意味がわからないルシファーはその挑発に乗ってしまう。
「ハンバーグの取り合いなどしている馬鹿天使にこの私が負けるはずがないだろう。言っておくが、本当の地獄とは私が管理している場所のことを言うのだ。おまえたちがいう地獄などそれに比べれば天国のような場所だ」
そして、さらに言葉を続ける。
いや。
続けてしまう。
「まあ、おまえたちが言う本当の地獄などたかが知れているが、とりあえず見せてもらおうか。その本当の地獄とやらを」
むろん。その言葉を待っていたのは三人の天使たち。
「地獄を見てから逃げるなよ」
「くどい。悪魔に二言はない。さっさとみせてもらおうか」
ルシファーが自身の死刑執行書にサインをしたのを確認したところで、三人の天使は頷く。
「では、見てもらおうか」
「貴様たち悪魔が知らぬ本当の地獄を」
ガブリエルはそう言って押し入れの襖を勢いよく開けた。