エピソード 26
そして、ミカエル特製ハンバーグがメインディシュとなった夕食。
四人分の材料しかないという理由で当然のように悪魔の皿には申しわけ程度の野菜が載るだけ。
まあ、ここまでは予定どおりだったのだが、その直後三人の天使にとって想定外の事態が発生する。
「私はもうひとり分食べる」
そう。
薫子がまたわがままを言い出したのである。
顔を見合わせる天使たち。
「薫子。太るぞ」
もちろんガブリエルのその言葉にはピンクのスリッパがお見舞いされる。
……まあ、そうなるとは思った。
ふたり分の心の声が宙に舞ったところで、いいアイデアを思いついたのはウリエル。
「薫子。提案なのだが、無礼なことを言ったガブリエルのハンバーグを薫子に進呈するのはどうだろうか?」
自分のハンバーグは増えれば誰の分が減ろうが問題などない薫子はすぐさま同意するものの、納得できないのはガブリエルである。
怒号を上げかけるものの、ミカエルが耳元でなにやら囁くとガブリエルはニヤリと笑い大きく頷く。
「わかった」
「では、私の分を薫子に進呈しよう」
「そして、私はウリエルのハンバーグを貰う」
そう言った瞬間、ウリエルのハンバーグを摘まみ上げるとそのまま口の中に放り込む一瞬の早業を披露する。
「くそっ。ガブリエルのアホが」
ウリエルは地団駄を踏むものの、口に入ってしまったものは取り出せない。
当然そうなれば狙うのはミカエルの……。
となるところなのだが、タッチの差でミカエルはハンバーグを守り切って自身の口の中へ。
「ふたりとも絶対に殺す」
ウリエルの殺意むき出しの言葉と、それを聞き流し悠々と食事をするふたりの天使。
「……おまえたちはいつもこんなことをやっているのか?」
そのあまりにも低レベルの争いに堅物悪魔は実にもっともらしい感想を口にした。