エピソード 23
「……これは驚いた」
ルシファーは笑った。
「この世界にいるうちにそれに気づいた人間と会ったのは初めてだよ」
「地獄に来てから、我々悪魔が地獄の支配者ではなく単なる番人であることを悟るのだが」
「そうなの?」
「ああ」
「一応言っておけば、我々は罪の重さに合わせて罰を与える」
「それに対してミカエルたち馬鹿天使どもが地獄を管理していたときは本当にひどかった」
「遊び半分で罰を与え、苦しむ者たちを見ながら宴会をしていたのだから」
「仕方ないだろう。暇なんだから」
「そうそう。あのようなところの番人は僕らには不向き。堅物悪魔がやるべき仕事」
ルシファーの言葉に遠くから反論するミカエルとウリエルの声は悪魔の言葉が正しいことを証明していた。
「まあ、そういうことで悪魔と天使はこの世界で思われているものとは違う。真逆と言ってもいい」
「それで、肝心の要件だが……」
「保留ね」
「はあ?」
「だから、保留と言ったの。今の話が本当でも私には関係のないこと。私を連れていきたかったら、私を満足させなさい」
「そして、せっかく天使と悪魔が揃ったのだから、どちらがより私を満足させられるか。それに勝った方と同行しましょう」