エピソード 14
すでに前例があるとおり、彼らの自信と誇りは一瞬で崩れる。
部屋に到着直後。
「お仕置きタ~~イム」
そう宣言した薫子が手にしたのはもちろんピンクのスリッパ。
「そこになおれ」
「こうか」
「お昼前の軽い運動だと思ってお付き合いしましょうか」
薫子の命令にふたりは余裕綽々で応じる。
もちろんこの後やってくるスリッパを軽くかわし、ついでに生意気な小娘の腕を軽くひねってやろうなどと考えていたわけであるのだが、現実はといえば……。
「ぐへぇ」
「ぎひょヘ」
とても天使とは思えぬ声を上げたふたりが頬を押さえる。
「ふたりともまだまだお仕置きは終わっていない」
「やめろ……オェ……」
「死ぬ」
「なんだ。そのスリッパは」
「鉛でも仕込んで……でも、それならあれだけ片手に振り回せるはずが……」
……そうだ。
ふたりの悲鳴を聞きながらミカエルは呟く。
……あれは普通のスリッパ。だが、あの衝撃は異常。ひ弱なウリエルはともかく、頑丈なことが取り柄のガブリエルがあれだけ痛がるのだから。
……そもそもあの程度のスピードのスリッパを我々天使が避けられないことがおかしい。
……いったいどんな仕掛けがあるのだ。




