エピソード 12
薫子とミカエルの前に現れたのは二メートルはあると思われる大柄の男と彼よりは背が低いもののそれでも十分に長身といえるミカエルと同じくらいの年齢と思われる外国人。
もちろん彼らがこうやって姿を現わした目的は十分にわかっている。
わかっているが、これからおこなわれることを考えれば、少しでも嫌味の前渡しをしておきたいミカエルが口を開く。
「やあ、ガブリエルにウリエル。このような君たちに似つかわしくない場所で顔を合わせるとは思わなかったよ。それで、このような場所を徘徊している理由は何かな」
「ふん」
そのひとことでミカエルの嫌味を簡単に払いのけたガブリエルはまずミカエル、続いて薫子を眺める。
「貴様があまり遅いので見に来たのだ。そうしたらこの様だ」
「貴様、いつ筆頭天使から家政夫に職替えしたのだ?」
「しかも、仕えるのがこんな小娘。こんなところを悪魔どもに見られたら天使の恥になる」
ガブリエルに続いてミカエルに話しかけたウリエルの視線は遠くにある。
「そして、仕事は終わったのか?」
「終わったらこんなことにはなっていないだろう。少しは頭を使ってくれたまえ。ふたりとも」
「ご歓談中のところをすいませんが……」
「私は非常に忙しいのです」
「買い物を続けますよ」
「……そうだ」
「あなたたちも天使なのでしょう。一応名前を聞いておこうかしら」
「私はガブリエル。こっちはウリエル」
「ウリエルです。ちなみに私の好みは巨乳なのであなたは完全な守備範囲外」
「なるほど」
その言葉とともに、薫子はあの時と同じ笑みを浮かべる。
「ウリエル。今の言葉はよく覚えておくわね。ちなみにガブリエルと名乗ったそっちのゴリラ男の好みは?」
「言ってくれるな。まあ、私はウリエルほどのこだわりはないが……」
「すべてが貧相なおまえは私の好みではないことはたしかだ」
「なるほど」
「よくわかった」
「では、ふたりともミカエルの手伝いをしなさい」