馬車の中で皇女様から兄にあまり近付くなと釘を刺されました
明けましておめでとうございます‼️
昨日の夜から二年参りで京都伏見稲荷山に登ってきました。
鳥居で日本の観光名所第1位になったところです
雨でしたが人はたくさんいました。
今年も宜しくお願いします。
馬車はさすが皇女殿下の馬車で、とても豪勢だった。
私は内装に圧倒された……いや、そう言えばクリフと一緒に乗った馬車はもっと豪勢だったような気がするから、内装に圧倒されたんじゃない。皇女殿下と皇子殿下の前に緊張したのだ。
「アオイさん。私がこの国の第一皇女であなたの通う学園の生徒会長のキャサリンよ」
キャサリン殿下はそう言うと私を見られた。
「俺は知っていると思うけれどこの国の第二皇子のウィルフレッドだ」
見目麗しい、笑顔で挨拶された。
「私はミルコープ辺境伯家の遠縁のアオイです」
私はお二人に頭を下げた。
「ミルコープ辺境伯の遠縁って、辺境伯の隠し子って事?」
いきなりウィルフレッド殿下がとんでもないことをおっしゃられたんだけど
「違います」
私は思いっきり否定した。
「えっ、違うの? そう噂になっていたけれど」
ウィルフレッド殿下が驚いて聞いて来られるんだけど、
「それは絶対に違いますから」
私はそんな噂になっているなんて知らなかった。
「だって、娘のカロラインがあなたを避けているって聞いたから、てっきりそうかと」
キャサリン殿下までおっしゃるんだけど。
「それだけは絶対にあり得ませんから」
私は辺境伯の名誉のために否定したのだ。
「じゃあ、ボールドウィン公爵の隠し子って事? クララ様がとてもアオイさんの事を気にかけていると聞いたから」
ウィルフレッド殿下がおっしゃるけれど
「あなた何言っているのよ。クララ叔母さまが隠し子なんて許すわけないじゃない。それだったらこの子は今頃殺されているわよ」
キャサリン殿下がとんでもないことをおっしゃるんだけど、確かに殺されると言うのは大げさかもしれないけれど、クララ様ならやりかねない、と私は思ったのだ。
「皇女殿下のおっしゃる通りです」
私が頷くと
「その頷きはクララ様が公爵の隠し子を見つけ次第殺すと言う事に対して?」
「違います。私が公爵様の隠し子ではないという事に対してです」
私はムッとしてウィルフレッド殿下に言った。
「じゃあ、君は何なのさ。何故、兄上がそれだけ君に構うんだい」
「あなた、知らないの? この子は癒し魔術の使い手よ。サフォーク村の流行り病を治したって聞いたわ」
キャサリン殿下がおっしゃるけれど、その話は極秘ではないのか? まあ、皇女殿下なら知っていて当然かもしれないけれど。
「その噂は聞いたけれど、基本的に癒し魔術では流行り病は治せないよ。俺は兄上がこの子の価値を高めるためにそんな噂をでっち上げた
のかなと思ったんだけど」
皇子殿下は私を頭上から下まで見てくたれた。
「でも、言っちゃなんだけど、この子の容姿は普通だし、胸も前の婚約者の聖女様に比べて貧相だよね」
ウィルフレッド殿下はとても辛らつな事を言ってくれるんだけど、胸が無くて悪かったですね。
私はさすがにムッとした。
前の聖女は胸があったんだ。
「でも、この子にかけるお兄様の熱意は前の聖女とは全然違うわよ。護りの首輪をしているし、髪飾りはお兄様の髪の色だし。聞いたわよ、特大のお兄様の似顔絵のストラップもつけているんでしょ」
「だからわからないんだ。兄上が何故アオイさんにそこまで執着するのか」
ウィルフレッド殿下は心底不思議そうに私を見てくれるんだけど、私も不思議だ。
もっとも私が聖女でその私を守ろうとしてくれていることだけは判った。
でも、それをここで言うわけにはいかない。
馬車は話をする間に学園の前の馬車だまりの中に入って行った。
「まあ、いいわ。私はお兄さまが何故あなたの事を気に入ったか知らないけれど、お兄さまの婚約者は絶対に私の親友のアマンダなのよ。だから、あなたはこれ以上お兄さまには近寄らないで」
皇女殿下はそう言うと馬車を降りて行った。
「ああ、怖い怖い、本当に姉上は怖いよね」
ウィルフレッド殿下が肩をすくめておっしゃられた。
「俺としては兄上が皇太子になった方が良いと思うんだよな。でも、お母さまらが煩いんだよね。お母様らは君が兄上の婚約者になった方が良いって言うんだけど。
ただ、帝国の皇子の婚約者は身分の低い君には難しいんじゃないかな。どこかに逃げたいと思う事があったらいつでも言ってよ。ちゃんと逃がしてあげるから」
そう言うと笑って殿下も出て行かれた。
後には二人に釘を刺された私が茫然と残っていたのだ。






