皇太后様らに慰めてもらい、気を落ち着けたけれど、最後にクリフが抱きしめてくれました
私は伯爵を皇太后様が撃退して頂けた後、皇太后さまの同年の公爵夫人や前公爵夫人、それに侯爵夫人、前侯爵夫人に囲まれて、慰められていた。
「まあ、あなたは気にしなくても良いわ。クリフが暴走しただけだから」
「まあ、殿下もまだまだ青いのね」
「それだけこの子が愛されているからじゃないの?」
「まあ、アオイさんも隅に置けないわね」
私は妖艶なおば様方に囲まれて、もうタジタジだった。
「それはそうと、あの学園長、生意気よね」
「何なら、私の主人から怒鳴り込ませましてよ」
クララ様がおっしゃるんだけど、
「ふん、あの子、私の二年後輩なんだけど、昔虐められて泣いたいたのを私達が助けてあげたことがあるのに、なんて事をしてくれるのかしら」
「あの子の奥さん、あの生意気な伯爵令嬢じゃなかったかしら」
「ああ、あの」
皆納得した様に言ってくれるんだけど。
「奥さんがあれだから、ああなのね。いいわ、明日のお茶会に呼んでいるから、皆でじっくりと話をしてやりましょう」
皇后さまが嬉しそうにおっしゃるんだけど、
えっ! 学園長この中にくることにしたんだ。
私はさすがに学園長が可哀そうになった。
「それよりも、アオイさん。あなたに昨日やってもらったマッサージとても気持ちよかったわ。出来たらまた少しやってもらえないかしら」
「ちょっと、クララ、今日は私の番なのよ」
「えっ、皇太后様。今日は私がやって頂く番だと昨日おっしゃっていただけましたのに」
皆さんがおっしゃるんだけど。
病弱だった私は日本ではマッサージなんて自分からはできなかったが、何故か母が私にやってくれていたのだ。
もう二度と、前の世界には戻れないみたいだから、母にはお返し、出来ないけれど、おばあちゃん達にならできるかなとやってみたのだ。
何か私の手からは癒し魔術が漏れ出ているみたいで、皆調子が良くなっているみたいなのだ。
まあ、私の身元保証人は皇太后様なので、そのお礼を兼ねてしているんだけど。
今日の事件の時に、A組の担任が思わず、責任を取って私の身元保証人を呼べと言って、学園長がなにも考えずに頷いてしまったのだ。
だから、悪いのは学園長だ。黙っていたマイヤー先生は共犯みたいだけど。
と言うか、生徒の後見人が誰かなんか目を通しておくべきだと思うんだけど。
学園長は絶対に私の後見人がクリフだと思っていたんだと思う。
担任は絶対に知らなかったと思うけれど。
さすがに一般の先生が皇子様を呼べなど言わないだろう。
学園長もクリフは今は皇子だけど、いずれは皇帝になるのに、そんな感じで良いんだろうか?
まあ、第二皇子殿下がなるかもしれないけれど、どう見てもクリフの方が皇帝にはふさわしいと思うけれど。
まあ、第二皇子殿下にはお会いしたことは無いから、私の欲目だけれど……
クリフの性格からして根に持つと思うんだけど……。
そう、クリフは細かいこともいつまでも覚えていそうな気がする。
それに、仇は絶対に晴らすと思うのだ。北の方の寂れた所に飛ばされるとか……
まあ、その頃は私は関係ないからどうでもいいんだけど。
そう、平民の私はクリフの横には立てないのだ。
それは、今日も伯爵や令嬢たちに散々言われたから良く判っているのに……
なんかそれを考えると少し悲しくなってきた。
何か無性にクリフに会いたくなった。
今日もクリフは伯爵に襲われそうになった時に飛んできて助けてくれたし……
その時に怖くて思わずクリフに抱きついてしまったけれど……
クリフの体は大きいし頼りがいがある。それに必ず私を守ってくれるのだ。
でも、クリフの婚約者が決まれば二度と親しく話すことも抱きつくこともできないはずだ。
本来、帝国の皇子殿下に抱きつくなんて絶対にしてはいけないのだ。
私は部屋の前の小さな庭の前で、そこに座ってしまった。
ぼうっとして、今までの事を少し思い出していたのだ。この世界に来てからほとんどクリフと一緒に過ごせていたのに、今はあまり一緒にいられない。というか、本来なら一緒にはいられないのだ。
夕日の庭が綺麗だったけど、今の私にはあまり目にはいらなかった。
そんな夕日の中影が落ちた。
はっとしてそちらを見ると
「どうした? アオイ」
そこにはクリフが立っていたのだ。
「クリフ」
私は驚いてクリフを見た。
「泣いていたのか、アオイ。どうした?」
「クリフ」
私はたまらなくなって思いっきりクリフを抱きしめていた。
「ごめん、今だけ、今だけこうしていたの」
私はクリフに頼んだのだ。
クリフは私が落ち着くまで何も言わずに抱きしめてくれていた。
今だけだ。
今だけ、私は思いっきりクリフを堪能したのだ。
 






