第一皇子視点11 男避けにアオイに自分の色を纏わせました。
俺はアオイを婚約者にすべく案を色々考えては父にダメ出しを食らっていた。
そもそもこの帝国は俺の弟のウィルが継ぐことになっていたのだ。
それが俺の婚約者のアスカが死んでしまって王配で外に出る予定だった俺の扱いが中途半端になってしまってから、国内貴族によって俺が皇太子レースに担ぎ出されたのだ。
俺は今まではそれを避けていた。アオイをこの国に留めたければ皇太子になるしかないと父に言われたが、完全には納得していなかった。
ウィルの下に臣籍降下して公爵としてウイルを助けても何ら問題はないのではないかと思ったのだ。
それを最初の案にして提出したら、一瞬で父によって却下されてしまった。
「お前がそうしたとしよう。ウィルもそれを認めたと。
しかし、俺がアリストン王国の指導者ならば、キンロスに手を回して、聖女を取り戻そうとする。
アリストンから度々聖女を返してくれと泣きこまれて、更にキンロス国王やその娘のウィルの母の側妃たちがウィルに頼み込んでみろ。いつまでもウイルが突っぱねられると思うか?」
「いや、それはそうですが、いくらウイルでも俺達のことを考えてくれて」
「お前は甘いな。まあ、別に俺は良いが、最後に妻を取られて、この地でウィルにこき使われて朽ち果てるお前の姿しか思いつかないな」
父は笑ってくれたのだ。
「いや、そんな事はさせない」
「ほう、そう俺達の言葉を無視した結果、お前の聖女はどうなった?」
「……」
俺は父に何も言えなかった。
そうだ。俺は聖女に守りの首輪を渡さないで、聖女は死んだのだ。
俺の聖女はヒールが使えるから安全だという愚かな考えが招いた結果だった。
俺は再度現状を考えてみた。
今のところアリストル王国に大きな動きはない。
聖女として召喚されたリンとか言う女は今のところ問題なくこなしているようだ。
ただ、アリストンと我が国との国境のあたりに魔物の出現件数が多少増えてきた程度だ。
そして、キンロスからは早速に王子が婚約者として派遣されたと聞く。
まあ、リンなどどうでも良いが、もし、リンが偽物でアオイを寄越せと言ってきたら面倒だ。というか、絶対に渡さない。俺は断固拒否する。
やはりそのためには力をつけるしか無いのか?
その王配を出そうとするキンロス王国の方が何かときな臭い。
20年前の大戦で、我が帝国は侵攻してきたキンロスを完膚なきまでに叩いた。
その講和のために、キンロスはヴァーノンの地を始め多くの土地を我が帝国に割譲、父の側妃としてアレシア元王女が人質も兼ねて輿入れしてきたのだ。
父は既に母と結婚しており、嫌がったようだが、仕方なく娶り今に至っているそうだ。
そして、母の子供は俺と妹のキャサリンだけで、アレシア妃の子供がウィルで子供はこの3人だった。
男は俺とウィルだけだったが、本来はどう考えても俺が皇太子になる予定だったのだ。ウイルの母親は敗戦国の王女なのだから。帝国としてはその子を皇太子につける理由はなかったのだ。
それが俺が10歳の時に、アリストン王国の前々聖女が40歳という若さで事故で亡くなったので、急遽アスカが召喚されて俺がその婚約者とされたのだ。
前々聖女が少なくとも60まで生きてくれれば俺は普通に皇太子になっていたのだ。
ここに何らかの悪意が働いたと見るべきなのかもしれない。
考えたら聖女が二代続いて事故死など本来は有り得ない事なのだのだ。
そのキンロスは最近、やたらと軍備を増強しようとしているらしい。
国境近辺もいろいろときな臭いと聞く。
それを聞きつけて国内の貴族共が俺を押してくるのだ。
キンロスが静かにしていたら弟で決まっていたかもしれないのに。
そんな事を考えながら作業していた俺に、アオイが高等学園の中から出てこないと一報が入ったのだ。
馬車には陰で護衛も付けている。その護衛からの連絡だ。
今日は入学式で朝からアオイはエイミー等をつけて学園に行っていたのだ。
結局アオイは3クラスあるうちの一番下のCクラスになっていた。まあ、俺の婚約者となろうとしている奴らの多くいるAクラスにいるよりも良いかと思ったのだが、そこで何かトラブルでもあったのだろうか?
俺は直ちに探させるように連絡した。
学園の中まで護衛をいれるのは憚られた。
基本学園の中は全て学園に任せるのが基本だった。そのために学園には独自に騎士が派遣されているのだ。でも、考えたら学園長は第二王子派だったか。俺は少し不安になってきた。
小一時間ほどしてアオイを見つけたと連絡があってほっとした。
帰ってきたアオイは元気みたいでほっとした。別に襲われたとかではないらしい。
ただ、何をしていたかが問題だった。
何でもアオイは決闘の介添人をしていたそうだ。
なぜアオイが決闘の介添人なんかしてたんだ?
というか決闘なんて未だに学園でやっているのか? 少なくとも俺がいたときは1件もなかったはずだ。
それもヒールを使って怪我した奴らを治療したと言う。
そんなの勝手に喧嘩した奴らが悪いんじゃないか?
アオイはクラスの男の子に頼まれて決闘の介添人をやったらしい。
おいおい、待て! 普通介添人って男が好きな子に頼むんじゃないのか?
俺はその時、初めて気付いた。
考えたら学園には男も多くいるのだ。女性たちに絡まれることはなくても今度は男性たちが別な意味でアオイに絡んでいるのではないか?
何しろ、最近のアオイは最初に会った頃の青白さが消えて、血色も良くて結構見た目もよいのだ。いや、可愛いのだ!
それを髪を括ることによって多少は隠せたと思っていたのだが、それでは全然足りなかったのだ。
それにアオイは今は髪を降ろしていた。
なんとアオイはその男の腕に自分のリボンを巻いてやったと言うではないか。
俺は完全に切れていた。
許せない!
俺のアオイの物をまとうなんて!
俺は母の言うことを聞いてアオイを学園に入れたのが間違いだと思い知らされた。
でも今更どうしようもない……。
そうだ!
こうなったらやるしか無いだろう!
俺はアオイの荷物を全て俺の色で染めることにしたのだ。
そうすれば男たちも多少は躊躇するはずだ。
そして全てに防御の魔術を入れたのだ。
でも、今度はこれが原因で今度はアオイが女どもに絡まれることになるなんて夢にも思ってもいなかったのだ。






