高等学園の入学式の後いきなり決闘の介添人をさせられることになりました
帝国高等学園。
帝国の最高学府だ。
基本は16歳から18歳までの貴族の子弟や優秀な庶民の子供が通うことになる。最も大半は貴族の子弟や文官や女官の子弟だ。文官や女官と言っても多くがその親や親族が貴族だそうだ。
この高等学園に通う大半は貴族の子供か親類の子供だ。残りは本当に裕福な商人や武人の子供。何のつてもない平民は、おそらく私くらいではないだろうか? 本当に場違い感が凄いんだけど……
そんな私は今入学式に参列していた。
入学式はどでかい講堂で行われていた。
なんか武道館みたいな大きさだ。流石最高学府は違う。
私は初めての高校の入学式だ。以前は熱が出て、出られなかった。
周りの皆には陳腐な内容で眠りたいのかも知れないが私には新鮮だった。
「皆さんは選抜試験を経て、無事にこの高等学園の生徒になれたのです。全世界の学生が羨むこの高等学園の生徒になれたのです!
そんな皆さんの前途は洋々です。卒業後は努力次第では宮廷のどの部署でも入ることは出きるでしょう」
なるほどなるほど、この学園に入れば就職で困ることはないのか! あの難しい入学試験に受かって良かった。
私は大きく頷いたのだ。
「よく言うわ! そんなの嘘よ」
私の横の気の強そうな女がボソリと呟いた。
ええええ! そうなの?
私は女をまじまじと見た。
「何よ! あんた、あんな学園長の嘘っぱち、信じているの?」
女は心底馬鹿にしたように私を見た。
「この学園には色々な身分の生徒がいらっしゃいます。しかし、学園にいる間は皆さん平等なのです。それは皇子殿下であろうと、皇女殿下であろうと同じです」
「はあ、そんなの建前に決まっているでしょう!」
その子の声は結構、響いてしまった。皆こちらをチラリと見る。
「そこ、静かに!」
何故か、そこにマイヤー先生が現れたんだけど、何故ここにいる?
その子はマイヤー先生に怒られても平然としているんだけど、私は日頃の癖でシャキッと背筋を伸ばしたのだ!
マイヤー先生は私を見て、少し、嫌な笑みを浮かべたが、その後で態度を改めないその子を睨み付けていた。
そして次は生徒会長のその皇女様だった。制服を着てもとても綺麗だ。私は思わず見つめてしまった。
「この高等学園に入学された新入生の皆さん。学園長が仰ったように、この学園の中では、皆平等です」
皇女様は全員を見渡した。
「そして、親の地位や身分、あるいは本人の持つその特殊な能力等によっても一切、優遇される事はありません。この事は肝に命じておいて下さい」
殿下が言うところの親の地位や身分で優遇されないのは良くわかったが、本人の持つ特殊な能力って何だろう? それで優遇されるってまた判らない。今年の新入生の中には余程魔術で優れた者がいるんだろうか?
私はキョロキョロしたけれど、それらしい人は見当たらなかった。
そんな私を、皇女殿下が睨んでいたような気がするのは気のせいだろうか?
良く判らなかった。
皇女殿下のお祝いの言葉の後の新入生の挨拶は第二皇子殿下だった。
「キャー」
「見て見て」
「第二皇子殿下よ」
凄まじい人気だった。
特に女の子の人気がすごかった。
「静粛に」
マイヤー先生の一言で皆、口をつぐんだ。
皇子様は皆が騒ぐように容姿端麗で金髪碧眼だった。
「学園の先生方、そして、多くの先輩方、私達一年生は今日から学園の一員になりました。学園長先生や、生徒会長がおっしゃるように皆気分一新して、親の地位や役職や自らの能力に奢ることなき用に精一杯がんばります」
挨拶が終わった後はクラスごとだ。
私はC組だった。
見た感じ、A組は第2皇子殿下やコーデリア公爵令嬢、カロライン辺境伯令嬢など、高位貴族の集まりみたいだった。Bクラスは子爵家や男爵家が多く、私達のC組はその他の寄せ集めみたいだった。
皇子様達と一緒だったらどうしようと危惧していたので、違っていて本当に良かった。
そして、嫌味な試験官が入ってきたのだ。
げっ、私がお湯をかけた先生だ。
先生は入ってくるなり私を一瞬睨んだが、視線を逸らすと皆を見渡した。
「諸君おはよう。私がこのクラスの担任のドーバーだ。君たちは試験で見かけたものも多かろう。この一年間君たちの担任になるからよろしく頼む」
神経質な姿は相変わらずだが、きちんと挨拶は出来るんだ。
私は大変失礼なことを考えていた。
「では順番に自己紹介からしていってくれ。まずは試験の時に私にお湯をぶっかけてくれたアオイからだ」
先生の言葉にどっと笑う者もいた。
「はい!」
いきなりトップバッターかよと思わないまでもなかったが、左の一番前に座っているのだから仕方がないか
「チハヤ・アオイです。南部から来ました。攻撃魔術はほとんど使えないので、一から頑張って覚えていこうと思います」
「そうだな。間違っても他の者にお湯をぶっかけたりしないように」
ドーバー先生は、まだ、入試の時に私にお湯をかけられたことを根に持っているみたいだ。
次は私の横にいていろいろ煩かった女だ。
「私は南部のヴァーノンから来た、ポーラ・ヴァーノンです」
「ヴァーノン族だ!」
皆驚いてポーラを見ているんだけど。
ヴァーノン族って何なんだろう?
後でエイミーに聞いたら、南に蟠踞していた種族の一つで50年ほど前に帝国に征伐されて従うようになったのだとか。
勇敢果敢に帝国の大軍相手によく戦ったそうだ。
ポーラの刺々しい態度は未だに帝国の事を良く思っていないからかもしれなかった。
「俺はエイブラハム・バレー。北部のバレー族の出身だ」
次の男は巨体だった。180はあるだろう。いかにもがっしりした体つきだった。
「騎士を目指してこの学園に来ました。皆ともどんどん手合わせ願えたら嬉しい」
不敵な笑みを浮かべているんだけど。
バレー族も良く帝国に反旗を翻していたんだとか。ここ100年は帝国付き従っているらしい。
なんか、危険な生徒が多いような気がするのは私だけか?
「ボビー・アラコンだ。俺は文官を目指している。宜しく」
次の男も巨体なんだが、文官と言うよりはどちらかと言うと騎士という感じだった。
「えっ、お前も騎士目指しているんじゃないのか?」
前の席のバレー族の男が声をかけていた。
「いや、俺は違う」
ボビーの顔は幾分引きつっていた。
「そんな立派な体していてか」
「余計な世話だ。帝国の貴族はバレーの蛮族みたいに喧嘩だけでなくて頭も使うんだよ」
「何だと貴様やるのか」
ボビーの言葉にいきなりエイブが激昂したのだ。
いきなり襟首を掴む。
「何だとやるのか」
二人は立ちあがって睨みつけていた。
私は二人をただ呆然と見ていた。高校ってこんなふうに普通に喧嘩とかするんだ。
通っていなかったから知らなかった。
後でエイミーに聞いたらそんな事は普通はありえないとのことだった。
「止めろ二人共。いきなり停学になりたいのか」
慌てて先生が止める。
「ふんっ覚えていろよ」
「止めろと言っている」
ドーバー先生が二人を引き離していた。
しかし、それだけでは終わらなかったのだ。
授業が終わった後だ。
二人はいきなり睨み合ったのだ。
「そこのひよっこ、良くもバレー族をバカにしてくれたな」
「ふんっ、そもそも貴様が余計なことを言ってくるからだろうが」
「判った、決闘だ」
「よし、受けてやる」
二人はやる気満々みたいだった。
「そこの女。俺の介添をしてくれ」
エイブはいきなり横を見てポーラに声をかけたのだ。
「な、なんでいきなりそんな事しなければ行けないのよ」
ポーラが慌てて文句を言っている。
「ヴァーノン族の女なら良く知っているだろう」
ポーラはエイブの言葉に唖然としていた。私は完全に他人事だった。
ここまでは。
「なら、そこのアオイとか言ったか。お前が俺の介添人になってくれ」
ええええ! いきなり? 介添人って何なのよ。
私には良く判らないんだけど……
どうするアオイ。
続きは明朝です






