王妃様のお茶会に行く途中で老婆とぶつかってしまって弾き飛ばしてしまいました
マイヤー先生の二時間のシゴキは地獄だった。
それも昼食の時の食事マナーの時間が一番私には堪えた。
何しろ、前の世界では病弱で余り食べ物も食べられなかったのだ。でも、その反動か、それとも環境が変わったせいか、自分で知らぬ間にヒールで治しているのか、この世界に来てから、どれを食べても美味しいのだ。それが本当に嬉しくて、たくさん食べていたのだ。
それなのに、マイナー先生の礼儀作法マナーの指導が入って食べるどころでは無かった。
そう、ほとんど食べられなかったのだ。
「動きが優雅でない」とか、「音がうるさい」とか
どうしても少しは音は出てしまうと思うのだ。
出なければ、それは忍者だ。
果てはまだまだ全然ですねと言われて……一からさせられて本当に食べた気がしなかった。
「女なのでこれだけ食べられたら十分でしょう」
と言い切ってくれたんだけど、いつも私の食べている量の5分の一も食べられなかった。
それも動作一つ一つケチをつけられて本当に食べた気がしなかった。
「もう最悪!」
と言って終わった後、マイヤー先生が本当にいなくなったのを確認してから、私は机に突っ伏していたら、
「アオイ様、時間がありません」
とエイミーに急き立てられて、窮屈なドレスを着せられたんだけど……。
休憩する暇もなかった。
今回は落ちついた青いドレスだった。
私は休む間もなく、迎えに来た皇后様の侍女の先導のもと王妃様の部屋に向かったのだ。
最後に礼儀作法の練習させられたから、貴族の特徴とか覚えた事が頭の中から消し飛んでいないか気になったけれど、確認する時間もなかった。
まあ、最悪は笑って誤魔化すしかないかと考えながら歩いていると、いきなり横からおばあちゃんが飛び出してきて私とぶつかったのだ。
ドンと私はおばあちゃんを弾き飛ばしてしまったのだ。
おばあちゃんは盛大にコケて地面に倒れてしまった。
手に持っていた切り花を地面に盛大にばらまいていた。
「ごめんなさい。おばあちゃん、大丈夫ですか」
私は慌てておばあちゃんに駆け寄った。おばあちゃんは侍女のお仕着せを着ていた。こんな年寄になっても王宮で働いているんだと私は一瞬感心した。
でも、今はそれどころでなくて、慌てておばあちゃんを起こそうとするが、
「痛ててて」
おばあちゃんが手を押さえて言うんだけど、
「大変。手を骨折したかもしれないわ」
私は慌てて、おばあちゃんの手を見た。
「どうしてくれるんだい。あんたがいきなり飛び出してきたから、手の骨が折れてしまったじゃないか」
おばあちゃんが言ってくれた。
いきなり飛び出してきたのはおばあちゃんではないかと思わないでも無かったが、お年寄りは目も悪いものだ。考え事して歩いていた私が悪いと思った。
「ちょっと、あなた。下級侍女の分際で、何を言っているの。今飛び出してきたのあなたの方でしょう」
皇后様の侍女がおばあちゃんに叱責しているんだけど。
「まあ、今のは他所見していた私も悪いわ」
私はそう言うと、
「すぐにお医者様に見せた方が良いわ。エイミー、医務室の場所は判る。私がお連れするわ」
「そのような事はアオイ様がされることではありません。そんな事をしていては皇后様のお茶会に遅れてしまいます」
皇后様の侍女が言ってくれるが、
「皇后様のお茶会は逃げないけれど、このおばあちゃんの怪我は一刻も早く治す必要があるわ」
「そんな! アオイ様は下級侍女の体と皇后様のご用とどちらを取られるというのですか?」
侍女が言ってくれるけれど、私はその言葉にカチンと来たのだ。
「そんなの決まっているじゃない。このおばあちゃんの体よ」
私はそう侍女に言い切ったのだ。
「な、なんということを言われるのですか? アオイ様は皇后様の用よりもこんな身分の低い下級侍女の体を気にされるのですか? 後で叱責を受けるのはアオイ様ですよ」
侍女が叫んでくるんだけど。
「何を言っているの? 私が皇后様に叱責されるわけはないわよ。反対に皇后様は褒めてくださるわ」
「はあああ? 何を言っているのですか。そんな訳無いでしょう」
私の言葉に侍女が反論したが、
「皇后様は慈悲深いお方なのよ。私が怪我をしたおばあちゃんを看護するために遅れても何も文句は言われないわ。逆に途中で怪我した使用人を見捨てて行った事が皇后様に知れた方が叱責されるわよ。違う?」
私が侍女を見ると
「えっ、いやそれは……」
侍女は私のこの言葉には反論できないみたいで、口をパクパクしていた。まあ、反論できるわけはないのだ。反論したら皇后様は慈悲深くないとなってしまうのだから。
「あっはっはっは」
いきなり私達を見ておばあちゃんが笑い出した。
「あんた、アオイって言うのかい。なかなか面白い性格しているよ。私はとても気に入った」
おばあちゃんがそう言うとシャキンと立ち上がってくれたんだけど……
「おばあちゃん、怪我は?」
私が慌てて聞くと、
「怪我はあんたらの掛け合いを見ていたら自然と治ってしまったよ」
おばあちゃんはそう言って立ち去って行ったのだ。
私達は唖然としてそれを見送るしか無かったのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
老婆の正体は?
続きは明朝です。






