胸の大きな公爵令嬢に抱きつかれて皇子は鼻の下を伸ばしていたので無視したら、ホワイトに乗せられて意地悪されました
ボールドウィン公爵のこのチーズケーキは絶品で前の世界でもこんなおいしいケーキは食べたことは無かった。
私は馬車の中でも、ボールドウィン公爵に数々のいろんなケーキを出されて、ただひたすら餌付けされたのだ。
本当に美味しかった。
公爵領の領都は帝国の公爵家だけあって結構な大都市だった。
その端に広大な敷地の中に公爵邸は鎮座していた。
「公爵様。流石公爵家。お庭もものすごく広いのですね」
私が驚いて言うと
「そうだぞ。小娘。我が公爵邸の庭の広さは帝国ひろしと言えども王宮に次いで広いからの。なにせ庭の中にまで放牧場が有るのだ」
自慢気に公爵は言ってくれた。
「お庭にまで牛を放牧しておられるのですか?」
新鮮な牛乳が飲み放題ではないか、クリームも美味しそうだ。
私は舌なめずりしそうになった。
「牛だけではないぞ。馬や羊、鶏までいるのだ」
「すごいですね」
「小娘、公爵家の凄さが理解できたか?」
「さすがボールドウィン公爵家ですね。このケーキ絶品です。もう一つ食べてもいいですか」
私は公爵の機嫌が良くなったので、頼んでみた。
「良いぞ良いぞ、いくらでも食べればよい。食べればその分胸も出るのだ」
「本当ですか?」
「そうだ。我が孫娘のを見れば良い。我がボールドウィン家の牛の乳で育っただけあって出るところは出ているぞ」
自慢して公爵は言ってくれた。
そう、その公爵自慢の孫娘が館についた時に出迎えてくれたのだ。
「お祖父様、お帰りなさい」
馬車が止まるか止まらないかのうちに扉を開けてその孫娘と思しき女の子が顔を出した。
でも、彼女は全くその公爵を見ていなかった。当然、私なんか眼中にもなかった。
「あれ、殿下は?」
「おいおいお客様の前で何だ。殿下ならあちらだ」
馬を飛び降りて慌ててこちらにかけてこようとしているクリフが目に付いた。
「あっ、殿下、お久しぶりです」
そんなクリフの腕に娘が抱きつかんばかりにすがりついたのだ。
そして、私にはその娘の大きな胸がクリフの腕にはっきりと押し付けられるのが見えたのだ。
なるほど、確かにボールドウィン産の娘の胸は大きくなるらしい……
心なしかクリフの目が驚いて見開かれたような気がした。
私はむっとしたのだ。
「閣下、早速、閣下の自慢の放牧場を見せてくださいませ」
私は公爵の手を取って上目遣いにお願いしたのだった。
「おう、良かろうて、ヒューム。この小娘が放牧場を見たいそうじゃ。一緒に来てくれるかの」
「はい、喜んで」
ヒューム騎士団長が進んで案内してくれることになったのだ。
公爵令嬢に胸を押し付けられたクリフは私達を追って来ようとしたが、娘に更に胸を押し付けられて立ち止まっていた。ふんっ、胸なしって私の事をけなしていただけあって、クリフは豊満な胸の女が好きらしい。
私は抱きつかんばかりに公爵に寄り添って放牧場に連れて行ってもらったのだ。
屋敷の中には広大な放牧場があった。
さすが、特産が酪農と馬のボールドウィン公爵家だ。広大な敷地には馬が放牧されていた。
のんびりと生えている牧草を食べていた。のどかな風景だ。
そんな私の方に早速放されたのかホワイトが駆け寄って来た。
「ホワイト」
ホワイトが顔を寄せて来たので、抱きしめる。
「ほう、ホワイトが懐くとは珍しい」
公爵が驚いて私をみてくれた。
「えっ、ホワイトって人懐こいですよね」
私が言うと
「何を言う小娘。こいつは悍馬での。中々人には懐かずに調教するのが大変じゃったのじゃ」
「えっ、そうなんですか?」
私にはいつも懐いてくれたホワイトが悍馬ってのが信じられなかった。
「そうじゃ。この騎士団長と他の皆がどれだけ苦労したことか」
顎を撫でて公爵が話してくれた。
「と言うかホワイトはこの公爵領で育てられたのですか?」
「そうだ。ホワイトとはこの牧場で出会ったんだよ」
そこに何故か、孫娘を腕にくっつけたクリフが現れた。
「そうなんだ。ホワイトは久し振りに故郷に帰って来れて嬉しいの?」
私はクリフは無視してホワイトに語りかけた。
ホワイトは心なしか頷いてくれたみたいだ。
「せっかく育てたこの悍馬を殿下に取られてしまいましたな」
横からヒューム騎士団長が言ってくれた。
「殿下。ホワイトを私にも紹介してください!」
横から孫娘が言ってくれた。
「紹介ってコーデリア嬢、ホワイトは元々君の所の馬だろう?」
「孫娘は滅多に牧場には近寄りませんでな」
公爵が言い訳してくれたんだけど、
「そうなのか? まあ、紹介するのはやぶさかでないが」
私はクリフの言葉に少しモヤっと来たが、ホワイトを撫でていた手を離してあげたのだ。
「ホワイト、こちらがこの牧場の孫娘のコーデリア嬢だ」
「ホワイト、よろしくね」
コーデリアが手を伸ばそうとすると
「ヒヒーン!」
といういななきを上げてホワイトが棹立ちになるんだけど……
私は唖然とした。
コーデリアなんてびっくりしてひっくり返っていた。
「おい、ホワイト!」
慌ててクリフが押さえようとするが、ホワイトは頭を振って暴れている。
「ホワイト!」
私が叫ぶと急に大人しくなって私に寄って来た。
「ほう、小娘は殿下よりもホワイトの扱いに慣れておるな」
公爵が感心して言ってくれるんだけど。
鼻を私に押し付けてくる。
「よしよし」
私はホワイトの頭を撫でてやった。
「ホワイト! 酷いじゃないか」
後ろからクリフが来るが私は無視した。
「あれ、アオイ、何か機嫌が悪そうだな」
「ふんっ、どうせ私は貧乳ですよ」
私が口を尖らせて言うと、
「何だよそれは」
クリフはそう言って少し困惑したようだが、ニヤリと笑ってくれた。
「えっ、ちょっとクリフ」
クリフは慌てる私を後ろから抱きあげてくれて、そのままホワイトの上に横座りで押し上げてくれると飛び乗ってくれたんだけど……
「ちょっと、クリフ、落ちるわ」
私は必死にクリフにしがみついた。
だって鞍も何もないのだ。普通は落ちる。
「大丈夫だ。俺にしがみついていろ」
そう言うと、クリフはホワイトを走らせ始めたのだ。
「いや、ダメ、怖い」
「大丈夫だったら」
クリフが言ってくれるが。
まあ、しっかりとクリフに抱きとめられて落ちることは無いと思うし、いつものホワイトだから問題ないと思うんだけど。
「きゃっ、怖い」
「大丈夫だ。ちゃんと抱いているから」
「キャッ、そんな事言ったって」
「大丈夫だったら」
でも、クリフは意地悪に私を抱いてホワイトを走らせるので揺れるのだ。
私はキャッキャッ言ってクリフにしがみついているしか出来なかった。
本当にクリフは意地悪だ。
そんな私達を孫娘がこちらを射殺すように睨んでいたのは知らなかったのだ。
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続きは今夜の予定です