衝撃の病・黒死病に対して聖女の力でヒールで対抗しました
本日二話目です。
私の眼の前で倒れた男の子に私が駆け寄ろうとしたら、クリフが
「近寄るな! この子は黒死病だ」
そう言い放ったのだ。
その途端に騎士たちが慌てて立ち上がる。
「黒死病?」
私は何のことかよく判らなかった。
子供の体をよく見ると黒い斑点がたくさんあった。
「強力な伝染病だ。近寄ったらお前も感染するぞ」
クリフが怒鳴リ声で注意してきた。
でも、病弱でいつ死んでもおかしくないと言われていた私の前で、男の子をバイキンみたいに扱うのは酷い!
「クリフ、その言い方は酷いわよ。この子も好きでその病気にかかったのではないのに」
私がきっとして言うと
「何言っているんだ。アオイ! 黒死病は致死率が5割を超える怖い伝染病なんだぞ。
下手したら近寄っただけでも掛かる可能性があると言われているんだ。悪いことは言わないから絶対に近寄るな」
クリフはそう言うと私を男の子から離したのだ。
「クリフ様。いかが致しますか」
「これは本当にまずい。道理でこの村の人が少ないと思ったんだ。皆やられたのかもしれない」
「殿下、直ちにこの村を閉鎖しなければ」
ケンが言い出した。
「そうだな。トム、お前は直ちにこの領主に知らせてくれ」
「はい、判りました」
トムが慌てて駆け出した。
私の後ろでクリフが指示を出しているが、私はこの男の子を見捨てる訳にはいかなかった。
「頼むよ。お母ちゃんが……」
男の子が何か言っている。
私はその子を見捨てるわけにはいかなかいと思ったのだ。
クリフが近付くなと言っていたが、それは無理だ。
私はゆっくりと男の子に近付くと男の子を抱きしめていたのだ。
「ジム、お前は、この村に境界線を引け。中に入った者は皆と一緒に隔離だ」
「じゃあ、アオイ様も隔離で?」
「えっ?」
後ろでかたずを飲み込む音が聞こえた。
「アオイ! 何をしているんだ」
クリフが私の方を振り返って叫んできた。
「すみません。殿下。私はこの子を見捨てるわけにはいきません」
私ははっきりと言ったのだ。
「何やっているんだよ。病にヒールは効かないんだぞ」
クリフが叫んできたが、私はこの子を見捨てるなんてことは出来なかった。
「殿下、ここでお別れです。今までありがとうございました」
私はクリフに分かれを告げたのだ。
「おい、待て、アオイ!」
「殿下、ダメです。離れて下さい」
「ええい、お前ら離せ」
クリフがこちらに来ようとして、ケンらに必死に止められていた。
私は男の子を抱いて、男の子が歩いてきた家の方に歩いて行った。
そうだ。あのまま前の世界にいれば、死ぬまで1年って言われていたのだ。この子らの看病して死んだとしても、そんなに変わらないはずだ。
私を召喚した奴らは私を聖女だとは認めていなかったみたいだが、この世界の神様にもらった命だ。この世界のために使って良いはずだ。今まで、寝たきりで馬に乗って旅をするなんて夢のまた夢だった。雪を抱いて光り輝く山も見えたし、魚釣りも出来た。
それは、長生きしていろんなことをもっとやりたかったが、でも、今でも、十分に楽しめたのだ。
見目麗しい皇子様とも知り合いになれたし、一緒に馬にも乗せてくれたのだ。
もう、思い残すことは無かった……
目頭が熱くなったが、気の所為だ。
ぽとりと男の子の顔に涙が落ちた。
「あれ、何故か涙が落ちるんだけど」
ジュワーーーーと一瞬で涙は蒸発したみたいだけれど、何か黒い痣が少し軽くなったような気がした。
「お姉ちゃんも悲しいの?」
男の子が聞いてきた。
「そうかな。そんな事は無いと思うけれど」
「俺は悲しい。お父さんとお母さんが……」
子供も涙を流していた。
「大丈夫。私がなんとかしてあげるから」
私は確信があるわけではないが、子供に言い切っていたのだ。
「何しろ私は世界一の聖女様なんだから、絶対に治してあげるね」
私は胸を叩いたのだ。
「本当、お姉ちゃん」
「任せて!」
私は自信はまったくなかったが、子供を元気づけるために言い張ったのだ。
男の子の家では母親と父親が熱で苦しんでいた。
「お母ちゃん」
男の子も意識が朦朧としてきたみたいだった。
黒死病って確かペスト菌が原因のはずだ。ウイルスをやっつけて皆の免疫細胞を強化すれば良いはずだ。そうだ、私は出来るはずだ。
「頑張れアオイ」
私は自分に暗示をかけたのだ。
私はこころの中で病原菌を撃滅して免疫細胞を活発化しようとイメージすると、手をかざしたのだ。
そして、
「ヒール!」
と叫んでいた。
私の手から金の光が飛び出して男の子の体を覆う、
その光は男の子の体の中に入って、菌をやっつけて、免疫を活発化するようにしているはずだ。
でも、怪我と違って、ちゃんと治っているかどうかは見ても判らなかった。
それをお父さんとお母さんそして、妹にもかけたのだ。
効果があったかどうかは判らなかった。
なんか皆顔が火照ってきて、熱が上がって来たみたいだ。
ひょっとして逆効果だったろうか?
皆の頭の上のタオルを交換する。
「頑張って!」
私は男の子の額を撫でた。
私はそうして夜通し看病したのだった。
そして、気付いたらいつの間にか倒れるように寝ていたのだ。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
続きは明日です。
作品が15を超えたので、作品一覧のホームページ作成しました。
https://tosshiii.wixsite.com/6furusato
良かったら参考に見て下さい。
ここに載っているお話は作者が三回は読んだものなので、面白いこと請け合います!
自画自賛……
慣れないことするから5時間以上かかってしまいました……