第一皇子視点3 寝られずにむしゃくしゃしていたので、辺境伯に全力で挑みました
俺はアオイが風呂に入っている間は暇なので、ここまでのことを考えた。
無理してアオイを庇おうとして瀕死の重傷を負った俺はアオイにヒールで治されたみたいだった。まさか、アオイがヒールを使えるとは思ってもいなかった。それも死にそうな人間をここまで治すなんて強力なヒールは普通は出来ない。
アオイは凛とかいう友人と一緒に召喚されたそうだが、その凛に裏切られて放り出されていたそうだ。凛が聖女であると。でも、アオイがこんな強力なヒールを使えたということはアオイの方が聖女の可能性はあった。
それを知った凛という女が魅了か何かで皆を虜にしてアオイを追い出したのかもしれなかった。
そうでないといくら聖女でないと判ってもいきなり召喚した者を何も持たせずに王宮の外に放りだした意味が判らなかった。
もう連れてきてしまったから今更アリストンに返すつもりはなかったが……
風呂上がりのアオイを見て俺は驚いた。ガウンからはみ出ている足がとても煽情的なのだ。それに濡れた黒髪も……
「髪乾かしてやろう」
俺はそう言って誤魔化すとアオイの髪を乾かしてやった。
「凄い!ドライヤー当てているみたい」
アオイははしゃいでくれた。
今まで子供だと思っていたのに、何なのだ。これは。聖女の力なのか?
アオイがとても女らしいのだ。
「部屋は一応アオイの分も用意されているんだけど、どうする?」
俺は誤魔化すために聞いていた。普通は大人の男と女は部屋は別々のはずなのだ。
でも、アオイは寂しそうだ。
「寂しければ一緒に寝るか」
俺は思わずそう言ってしまった。でも、後でとても後悔したのだ。
「もしよければ……」
アオイがそうしてほしそうに俺を見た。
「じゃあ、俺はソファーでも寝ようか?」
俺はそう言った。何故か今までみたいにくっついて寝てはいけないと本能が警鈴を鳴らしていたのだ。
「出来たら今日は一緒に寝たい」
アオイがとんでもないことを言って来た。
「いや、俺は良いが……」
俺はまともにアオイを見られなかった。今までは子供だと思っていたのに、何故かとても意識してしまうのだ。
そんな俺の心も知らずにアオイは俺に抱きついてきたのだ。
ちょっ、ちょっと待ってくれ!
俺はアオイの事が気になって眠るどころではなかった。
それにアオイは寝相は良くはなく、俺の上にのしかかってきたりガウンがはだけたり……
俺はその度にアオイをもとに戻すのだが、本当に地獄だった。
アオイが気になってほとんど寝れなかったのだ……
**
翌朝、一番鶏が鳴くと俺は剣を持って鍛錬するために外に出たのだ。
部屋の前にいたケンにそのまま部屋の前でアオイを守ってもらうことにして俺は階下に降りた。
「殿下もひどいよな。あんないたいけな子供を抱くなんて」
そんな俺にジムの大声が聞こえた。
「良く言うよ。お前も抱きたいと思っているんだろう」
これはトムの声だ。
「俺も殿下みたいにあの子をアンアン言わせたい」
俺はそう言っているジムの頭を思いっきり叩いていた。
「痛い! 殿下!」
ジムは驚いた顔をした。
「いかがされたんですか。殿下、その目の隈は」
「ああ、いいなあ、俺達のことも考えずにあの子と朝まで盛っていたんですね」
そう言う、ジムを再度叩いていた。
「貴様らな。俺は貴様らみたいなロリコンじゃない! あんな子供を抱くわけ無いだろうが」
「でも、なぜ目に隈を」
トムが聞かなくてもいいのに聞いてきたのだ。
「お前、それはあれだ。健康な女が横にいればだな」
「襲いたいのに、周りを気にして襲えなかったいう……痛い!」
俺は馬鹿なこを言い出すシムを再度張り倒していた。
まあ、ジムの言う事は図星だったが、そんな事を認めるわけにもいかなかった。
俺は二人を相手に徹底的に鍛錬してやった。もやもやした自身の心を叩きつけてやったのだ。
二人が倒れて立ち上がれなくなるまで、鍛錬してしまった。
「殿下、やっぱり欲求不満だったんだ」
ジムは相変わらず口は減っていなかったが……
「さすが殿下、なかなかの腕をしていらっしゃいますな」
そこに辺境伯がやってきた。
「お相手、宜しいか」
「是非に」
願っても無い事だった。辺境伯は若い時はこの国一番の剣聖とか言われていた人物だ。まだ十分な力はあろう。
俺はまだまだやり足らないらしい。
俺は辺境伯と早速剣を交えた。
さすが辺境伯、楽々と俺の剣を受けてくれた。
「さすが殿下、なかなかの腕前ですな」
辺境伯は俺の剣を受けながら言ってくれた。
まだまだ余裕はあるみたいだ。
普通は適当にやり過ごすのだが、今日は寝不足でなおかつ欲求不満らしい。
ここは全開で行っても良いだろう。
俺はやることにした。
「では、そろそろ行くぞ」
俺は魔術で剣を強化する。
「ほう、中々やられるみたいですな」
辺境伯もニヤリと笑うと強化してきた。
それでなくっちゃいけない。
「喰らえ」
俺はそう叫ぶと一気に剣を辺境伯に叩きつけていた。
「何を」
辺境伯も強化した剣で受けてくれるが
ガキンっ
辺境伯の剣が真っ二つに折れていた。
「えっ」
辺境伯が驚いた顔をしていた。
「すまん、少し力を入れすぎたか」
「いえいえ、凄まじいお力ですな。ここまでとは思ってもいませんでした。完敗です」
辺境伯はさばさばした顔をしていた。
俺は久々の力全開で戦えたので満足したのだが、
「しかし、殿下、若いという事は良い事ですが、やり過ぎは良くないですぞ」
何か辺境伯まで変な事を言い出すんだが……
「いや、辺境伯」
「出来たらアオイ様と一緒に朝食にお越しいただきたいのですが、難しそうですか」
俺が言い訳しようとしたが、辺境伯は話題を変えてきた。
こいつ、俺が盛って朝までアオイを寝させなかったとか余計なことを考えてやがる。
だから、違うって。俺は一切手を出せなかったからこんなに目の隈を作っているのに!
こいつらどいつもこいつもそれかよ、と思わないまでもなかったが、のほほんとしたアオイの顔を見せたら疑いは嫌でも晴れるだろうと俺は安易にそれを受けたのだ。
更にややこしいことになるなんて思ってもいなかったのだ。
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