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聖女のお墓にお参りして皇子と一緒に帝国に帰りました

アリストン軍は勝手に開いた城門に驚き、帝国軍に突入されてあっさりと降伏した。凛と王子もあっさりと捕まったのだ。なんでも工作員を前もって潜り込ませていたのだとか。クリフもなかなかやる。


「お前ら、判っているのか? 俺はキンロス王国の第一王子だぞ!」

「離せ、離しなさいよ! 私は聖女よ」

ロープで縛られて私達の前に引き出された王子と凛が叫んでいた。


「葵、あんた、覚えていないさいよ。こんな事してただで済むと思っているの?」

「おっと、すまんな」

凛が私に突っかかろうとして、カルヴィんさんが出した足に蹴躓いて盛大に転けていた。


「あんた、何してくれるのよ!」

凛はカルヴィンさんを睨みつけていた。さすが気の強い凛なだけはある。カルヴインさんはそんな凛をゴキブリを見るかのように見下していたが……


「口だけは立派な偽聖女だな。その口で本当の聖女様を王宮から叩き出して、聖女に成りすましたんだからすごいよな」

クリフが呆れていた。


「何を言っているのよ。私が本当の聖女よ!」

凛が言い張るんだけど。


「ふん、癒やし魔術が使えない聖女がいるわけ無いだろう」

「なんですって!」

凛がいきり立つがクリフは冷静だ。


「まあ、お前の場合は聖女と言うよりは魔女の間違いだよな。もっとも余計な魔術を使おうにももう使えまい。その首輪は全ての魔術が無効になるからな」

凛の首には黒い首輪がつけられていた。


「ちょっと、これ奴隷の首輪じゃないの。こんなの私につけて許されると思っているの?」

凛が主張するが、


「余計なことを出来ないようにつけさせてもらった。

まあ、お前の罪は、聖女様をこの宮殿から追放した件と二回の誘拐した件だ。その他余罪もあると思うからじっくりと取り調べを受けてもらう」

「何言っているのよ。聖女の私をこんな事して許されると思っているの? 偽聖女はそいつよ」

凛が私を睨みつけたが、


「黙らっしゃい!」

「ヒィィィ」

怒ったカルヴィンさんの一喝の前に流石の凛も怯えて黙った。


「次に聖女様を侮辱したらただではすまさん」

カルヴィンさんの形相の凄さにさすがの凛も頷くしか出来無かった。


「クリフォード、貴様、こんなことをして我が祖父のキンロス王が黙っていると思うなよ」

王子のアラムが今度はクリフに突っかかってきたけれど……


「ふんっ、勝手にしろ、貴様には前聖女アスカ様の殺害の件でじっくりと聞きたい事がある」

クリフはアラムを睨みつけていた。


「何を言う。その件には俺は全く関わっていないぞ。それは死んだシリル等が勝手にやったことで」

「そうか、やはりキンロスが絡んでいたんだな」

「えっ、いや、それは現地の独断で……」

クリフの言葉にアラムは慌てたが、後の祭りだった。


「じっくりと詳しいことは聞かせてもらうぞ。連れて行け!」

兵士達が二人を地下牢に連れて行った。




後で聞いた所によると異世界人の凛は癒やし魔術は使えなかったが、人を思い通り動かす魅了の魔術は使えたのだとか。それで周りの男達を思い通り動かして、私をこの王宮から追放したんだそうだ。


そうか、それで私は何も調べられることもなくて、聖女ではないとこの王宮から追い出されたんだ。

まあ、右も左も判らない私は図太い凛と違って、こんなところにいたら何をされていたか判らないけれど。助けてくれたのが、人の好いクリフで良かった。


「まあ、本人は魅了しているとは知らなかったみたいだがな」

クリフが教えてくれた。


色々と口うるさかった大司教も、アラム王子をそそのかして殺させたのだとか。

二人共私の誘拐の件にも関わっているので、終身で鉱山で働かされるそうだ。

まあ、処刑されないだけましだ。クリフは処刑したそうだったけれど、さすがに元聖女を処刑するのは色々まずいらしい。私も凛には酷い目にあったけれど、死んで欲しいわけではない。




帝国によるアリストン王国制圧の報はあっという間にこの世界に広がって、クリフは国王陛下から叱責の使者を受けていた。


なんでも、キンロスや近隣諸国から聖女の国を攻撃したと非難轟々で、陛下も自分の意向を無視して単独で制圧したクリフには怒り心頭なんだとか。

苦り切った口調で、第2皇子の婚約者のチェルシーの父のポウナル公爵が書面を読み上げたのだ。


でも、陛下の使者の横には皇太后様からの使者もいて、それが重鎮でホワイトを育て上げたボールドウィン公爵だった。

「『よくやったクリフ! 元婚約者の聖女様を殺害した腐りきったアリストン王国を制圧した功は計り知れない。死んだ前皇帝陛下も墓の下で喜んでおられるだろう』と皇太后様はとてもお喜びであった」

と、最大限褒めそやしたのだ。


「閣下、流石にそれは陛下に対して失礼なのでは」

ポウナル公爵が年上で重鎮の公爵に苦言を呈したが、


「何を言うのだ。陛下も諸外国の手前、苦言を挺せねば形が整わないから叱責されているだけで、心の底では今回のキンロスの立ち回りには怒り心頭であらせられること間違いないわ。当然、心の奥では殿下を褒め称えられているに違いないとの皇后様のお言葉じゃ」

皇太后様がでてくるとポウナル公爵も何も言えないようで黙ってしまったけれど……

やはり、帝国で一番強いのは今も皇太后様みたいだった。


自分の娘がキンロス王の血を引く第二皇子の婚約者なので、色々言いたいこともあるだろうポウナル公爵も、重鎮のボールドウィン公爵が二言目には皇太后様と言うから、結局、あまり何も言えずにスゴスゴと帰って行ったのだ。






そして私は今、クリフと一緒に前聖女のアスカさんのお墓の前に来ている。


アスカさんはキンロスの陰謀が張り巡らされたこの王宮に嫌気が指して、逃げ出そうとした所を大司教やキンロスの元王族のシリルらによって殺されたらしい。


最後はクリフの名前を呼んでおられたらしい……


クリフは私につけた護りの首輪をさっさとアスカに渡さなかったのが、心残りだと言っていた。


まあ、アスカさんが殺されなかったら、私がこの世界に呼ばれることもなかったはずだし、呼ばれなかったら前の世界で病弱な私は今頃死んでいたかもしれないし、クリフにも会えなかった。


それを考えると私はなんとも言えなかった。


クリフが懸命に祈っている横で、私もアスカさんの冥福を祈ったのだ。


私が顔を上げた横でクリフはまだ何か祈っていた。


やっぱりクリフは、まだアスカさんに未練があるのだろう……

そう思うと少し悲しかった。


クリフが顔をあげた。


「もう良いの? もっと祈っていても良いのよ。しばらくここに来ることはないんだから」

私が言った。そう、私達はこれから帝国の帝都に帰るのだ。


そのお別れにここに来たのだ。


「いいんだ。アスカにはこれからはアオイとちゃんとやっていくからって報告していたんだ」

「えっ、良いの? 好きだったんでしょ」

私が聞くと


「まあ、好きっていうか、年がだいぶ開いていたから恋人というよりは姉上って感じだったな。俺は姉はいなかったから」

クリフが言うんだけど。


「アスカさんが姉なら、じゃあ私は妹?」

「うーん、妹は既に生意気なのがいるからな。アオイには色々迷惑をかけたけれど」

そう言えば皇女殿下はクリフの地の繋がった妹だった。どちらかと言うとブラコンで私は色々いじめられたけれど……


「アオイはどちらかと言うとペットかな」

私はクリフの言様にさすがにムットした。


「ちょっとペットってどういうことよ!」

たしかに私はアスカさんに比べれば貧乳だし、背も低いし痩せているかもしれないけれど、ペットってなんだ! 人間でもないではないか!


さすがの私も怒り心頭でクリフをほって先に歩き出したのだ。


本当にクリフは失礼だ!


「冗談だよ」

ずんずん歩いていたら、いきなり後ろからヒョイって抱き上げられた。


「えっ、ええええ!」

いわゆるお姫様抱っこっていうやつだ。


「ちょっと、クリフ、恥ずかしいから止めて!」

私は真っ赤になって叫んだんだけど……


「じゃあ、許してくれる?」

「えっ、それは……」

「じゃあ無理だ」

「嘘、ちょっと止めてよ!」

私の悲鳴はクリフに完全に無視されたのだ。


そのまま、ホワイトのところまでずうーーーーっとお姫様抱っこされていったのだ。


「まあまあ、仲の良いことですな」

「本当に」

ゴードン先生とカルヴィンさんが笑ってくれたけど……


それどころじゃなくて助けて!

私の心の悲鳴は無視された。


皆の生暖かい視線が私達に注がれていたのだった。





おしまい


ここまで読んで頂いてありがとうございました。

本編はとりあえず完結です。

今後は閑話等あげていくつもりです。

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公爵令嬢で第一王子の婚約者であるフランはゲームの中で聖女を虐めて、サマーパーティーで王子から婚約破棄されるらしい。
しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。

しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。

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