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第8話 

20230309公開



 晩餐会も大概だったが、晩餐会の後はもっと大変だった。

 何が大変って、一躍「時の人」になった俺と縁を繋ごうとする爵位持ちが殺到したからだ。

 獲物に殺到するピラニアの大群を思い出したくらいだ。

 もし、俺が平民階級だったら、まあ、本当はそっちの可能性の方が高かったんだが、為す術もなくピラニアの様な爵位持ちに喰い散らかされたと思うな。

 ログナス二等級爵家の一家によるバリア様様だな。本当に頭が上がらない。

 まあ、ログナス家一族となると、恩恵は微妙だがな。

 国王の覚えがめでたい俺を、血を引いた嫡男のグイカ君の代わりに据えようと言う馬鹿な企てを考えている輩が少数ながら居るからな。

 本当に迷惑な話だ。


 で、今は明日の予定をカーヌ卿から聞いている最中だ。

 ちなみに、ルークとサーシャは先に寝ている。日本で言うと夜の10時過ぎだし、沢山の人が居る場に初めて出たせいで疲れていたからな。



「陛下主催の有力な爵位持ちの方のみ参加の朝食会の後、場所を移して新型の『魔矢マグ・ルー』の披露の場が設けられます。魔法の説明と試射、その後質疑応答の時間を取ります。また、新たな魔法にふさわしい名前を陛下から賜る予定です。ここまでで何か質問が有りますか?」

「参加者は何人くらいを想定しているのだろうか?」

「近衛師団及び第10大隊の参加者を含めて30人までに収まる人数を予定しております」

「分かった。ザック、何か有るか?」

「その間は家族は一緒に居られるのでしょうか?」

「はい、その予定です。他に何か質問は有りますでしょうか?」


 幾つか追加の質疑応答が終わって、カーヌ卿が慇懃に頭を下げて退出していった。

 こうして、王都訪問の初日は終了した。

 さすがに疲れた。

 カーヌ卿に「のじゃ爺」は2度と戻って来ないかも知れないな。



 新型の魔法の名は『先進型魔矢アドヴァス・マグ・ルー』と名付けられた。

 ぶっつけ本番で行われた試射は、50ナグ(約55㍍)から始まり、200ナグ(約220㍍)まで続けられた。

 200ナグ(約220㍍)先の金属柱のまとに命中した時に響いた金属音にはかなりのどよめきとざわめきが起こった。

 有効射程もそうだが、明らかに違和感を感じたからだ。


 『先進型魔矢アドヴァス・マグ・ルー』の新たな特性が幾つか分かった。

 1つ目の特性は横風の影響を受けなかったのだ。

 これは大きな可能性を秘めていた。

 他の射手でも同じ特性が出るならば、扱える全員が軽く狙撃手になるという事だ。

 2つ目の特性は初速がやたらと速い、と言う事だ。

 『知恵持つ栄光の人ハイランテ・クラマス・エンラ』が使う弓矢の初速は、殺傷力が高くて重い鉄の鏃を使っているからせいぜい秒速で50㍍と言う所だろう。『別系魔矢アナド・マグ・ルー』を使って、秒速70㍍と言う所だろう。速さを実感する為に時速に換算すると時速180㌔と時速250㌔だ。プロ野球の投手でも時速160㌔強が最速だから、それよりも速く飛んで来る矢を避けるのは当然ながら難しくなる。

 そして1.4倍に加速すると言う事は、運動エネルギーは二乗するので約2倍に跳ね上がる。

 前線で喜ばれる訳だ。威力が上がるんだから。


 『先進型魔矢アドヴァス・マグ・ルー』は桁が違う。

 元々ザック君が想定していた速度は『別系魔矢アナド・マグ・ルー』相当だった。

 それに対して俺が放った『先進型魔矢アドヴァス・マグ・ルー』は秒速900㍍に迫った。

 89式5.56㍉小銃の曳光弾がイメージの基になったからな。

 いくら『虚体属性魔法』で疑似的に造られた弾頭だから軽いとはいえ、運動エネルギーが隔絶しているので貫通力が桁違いだ。

 初速が速いと言う事は敵の移動距離が短くなるのと同義だ。動いてる敵への命中率も上がるだろう。


 それと、今後追加で試験をする必要が有るが、木銃本来の照準からズレを大きく取った場合、射程距離が短くなることも分かった。

 真横に向けて撃つと、30ナグ(約33㍍)も飛ばなかったんだ。

 当然と言えば当然の様な気もするし、そんな使い方は想定していないんで構わないか。


 どうでも良いが、納得の新事実が判明した。

 碌に知らない爵位持ちに過剰な程に褒められるよりも、双子の弟と妹にキラキラした目で見られた方が何倍も嬉しかった事だ。

 当然と言えば当然なんだが、もしかして俺の精神が病んでいる証拠なのだろうか?


 その他で特筆すべき事としては、『先進型魔矢アドヴァス・マグ・ルー』専用の木銃の量産が決定した事だ。

 手先が器用だったとは言え素人のザック君が造った試作品だったから、強度や使い勝手、更には生産効率の面で改良が必要とされて、改良をされた木銃が完成次第に量産に移行する方針だ。

 

 2ヵ月後に迫っている嫡男のグイカ君の王立中央学園入学に備えた準備や、『先進型魔矢アドヴァス・マグ・ルー』を教授する予定の近衛師団と第10大隊の駐屯地への顔出しや、幾つかの会合、私用としての王都の視察などをしているとあっという間に帰郷の日を迎えた。


 1度、ログナスの領都に帰って、身の回りの品を整理して再度王都に戻って来る予定だ。

 2度手間で非効率だが、これはカーヌ卿の心配りだ。

 最後に故郷で家族団らんの時間を過ごす為にカーヌ卿が気を利かせたんだ。



お読み頂き誠に有難う御座います。


 第8話「『先進型魔矢アドヴァス・マグ・ルー』」をお送りしました。


 今後、ストックの加減次第ですが、更新は出来るだけ3の倍数の日にしたいと思います。

 今月は9日8話、12日9話、15日10話、18日11話、21日12話、24日13話、27日14話、30日15話、という感じで更新する事に前向きに善処したい所存です。


『お知らせ(^-^)』

 自慢では無いですが、作者はチンアナゴ顔負けの臆病者です。

 プランクトンの代わりに『ブックマーク』や『評価』、『いいねで応援』ボタンなどで応援を賜りますと、恐る恐る顔を出す(【更新する】)習性が有る事を念の為にお伝えしておきますね(^^)

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