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第19話

20230409公開




 『知恵持つ栄光の人ハイランテ・クラマス・エンラ』文明にも星座は有る。

 もちろん、地球とは全く異なる宇宙(宙域)なので、記憶の中の星座とは全然違うものだ。


 そんな『大いなる地(ガイノス)』の星座の中でも、異彩を放っているのが、肉眼で見る限り狂いの無い五芒星を描く『五連巨星星座(パナタ・ガムナ)』だ。

 冬の星座で、地球の星座で言うオリオン座以上にメジャーな星座だ。

 5つの頂点に1等星相当の星が輝き、交点を5つの3等星相当の星が占める。

 覚醒後、初めて見た時は意味も無く背筋が寒くなった。

 人為的かと疑う程に幾何学的な星座など、思わず神の御業かと思っても仕方ないだろう。


 それ故に、『五連巨星星座(パナタ・ガムナ)』は『知恵持つ栄光の人ハイランテ・クラマス・エンラ』にとっても特別な星座になっている。


 ハイランテ人は特別宗教に傾倒していない。

 強いて言えば、精神的なバックボーンとして存在している程度だ。

 割と共存している各宗教だが、『五連巨星星座(パナタ・ガムナ)』が必ず登場する。


 最大の規模の宗教の教義にも当然だが『五連巨星星座(パナタ・ガムナ)』が深く関わっている。

 その教義では、『大いなる地(ガイノス)』を創造した神は、完成した世界に満足して、次の世界を創る為に『五連巨星星座(パナタ・ガムナ)』の方面に去ったそうだ。

 そして、今も『大いなる地(ガイノス)』を見てくれている証として、『五連巨星星座(パナタ・ガムナ)』を正確な五芒星として留め置いてくれているそうだ。

 神の眼差しに応えるべく、誇り高き人類種としての人生を過ごせ、と言うのが根幹の宗教だ。


 まあ、具体的には法典を見る限り、一言で言えば善を為せ、という感じだ。

 それが長年の間に拗れてか、古くから存在する貴族家では、誇りが過ぎて傲岸不遜になっている様にも思える。


 もし、五芒星が崩れたなら、その時は『大いなる地(ガイノス)』そのものがその存在意義を失う時だそうだ。

 そうなった時には救済は無く、最後の時を己の罪を噛み締めて終末の時を過ごせ、と言う、救いの無い教義は日本人的には奇異に映る。



 今、俺は『三日月みかづき』に騎乗して、『五連巨星星座城塞(ダム・パナタ・ガムナ)』群と俗称される砦群に向かっている。

 『知恵持つ栄光の人ハイランテ・クラマス・エンラ』にとって、この砦群を抜かれる事は滅亡への下り坂を転がり落ちる事と同義だ。


 さすがに位置関係では五芒星を描いていない。前後2段で相互に支援が出来る様な配置だ。

 『五連巨星星座城塞(ダム・パナタ・ガムナ)』と呼ばれる理由は、城塞が函館市に在る五稜郭の様な形をしているからだ。

 元々、五稜郭の形は銃火器が発達した事に対応して誕生した造形だ。

 先見の妙が有ると言うべきか、それとも不利だった中距離攻撃手段の差を埋めようとしたのか、『五連巨星星座城塞(ダム・パナタ・ガムナ)』は銃が登場した今も、防備力が高い城塞と言える。


 ちなみに、我が『ニィフゥネ』領の村も完成すれば、小高い丘を中心とした『五連巨星星座城塞(ダム・パナタ・ガムナ)』の形状になる予定だ。

 現状では内側の五角形部分に収まる村の中心部分が仮の形ながら完成した段階だ。

 まあ、5つの堡塁や水壕の工事が始まったばかりなので、完成にはまだまだ掛かる予定だが、前倒しも視野に入れないといけないかもしれない。



 で、俺が『五連巨星星座城塞(ダム・パナタ・ガムナ)』群に向かっている理由だが、ゼントリウス大公の前線視察の同行を是非にと誘われたからだ。

 こういう所は、ミッドガラン王国の国王よりも若いからか腰が軽い。

 いや、武人肌と言える性質も影響しているか。

 よく考えたら、俺はミッドガラン王よりもゼントリウス大公と顔を合わせた数の方が多いな。

 まあ、『ニィフゥネ』領がミッドガラン王国最辺境故にゼントリウス公国の公都の方が近いからな。

 ゼントリウス大公自身も武人肌と言う事で気が合うしな。



 視察のお供という訳では無いが、ミッドガラン王国第10大隊の2個中隊が同行している。

 その部隊は休養の為に公都に下がっていたが、『五連巨星星座城塞(ダム・パナタ・ガムナ)』群に復帰する為に俺と一緒に移動中だ。


 第10大隊と俺の付き合いは古い。

 まあ、古いと言っても部隊が新設された2年前からの付き合いだが。

 今でこそ、第10大隊はゼントリウス公国からも頼りにされる部隊になったが、最初はひどかった。

 『先進型魔矢アドヴァス・マグ・ルー』専用魔杖を装備した最初の部隊の片一方なんだが、新設故に兵の質が良くなくて、魔法を教授する王命を受けた俺は苦労したもんだ。



「ログナス卿、いつ見ても惚れ惚れしますな、その『三日月みかづき』は。2歳竜とは思えない立派な竜体に、落ち着きですね。どうすればそんな騎竜レクセガウスを得られるのですか?」


 そう声を掛けて来たのは、ミッドガラン王国第10大隊第5中隊のルック中隊長だ。

 彼も騎竜レクセガウスに騎乗しているが、そろそろ年老いて来ている軍竜だ。

 もちろん、軍から貸与されているから選べないんだろうが、『三日月みかづき』を羨ましがるのも分かる。『三日月みかづき』と違って老竜だから肌の艶や肉の張りが良くないからな。


「まあ、偶々ですからね、参考になりませんよ。この仔の母親は気性が荒く、暴れ竜と言って良かったんですよ。未だに謎なんですが、いつの間にか妊娠していて、産んだのがこの仔だけだったせいで、通常よりも大きな仔竜でした。で、何故か母竜に気に入られていた自分が育児放棄した母竜の代わりに育てたら、こんな立派な騎竜レクセガウスに育ってくれたという訳です」

「なるほど。確かに1頭だけ産まれるって、まれなケースですね」



 いや、ほんと、父竜はどいつなんだろう?




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