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第10話

20230315公開




「鈴木さん、一度、マラソンの記録を計ってみませんか? 多分、全部の装備を背負ったままでも3時間を切れますよ」


 

 ミリオタの元高校生の田所君が思わず言う程、今の俺の『魔体マグ・ラディ』は規格外だった。

 

 俺の装備を全部合わせると総重量30㎏にもなる。

 

 俺の装備は自衛隊で使っていた戦闘装着セットを参考に構成されている。

 戦闘服市街地用風クロスアーマー(鎧下?)・防弾セラミックプレート代わりの魔素供給銅板を収めたプレートキャリア・ベルトキット・ヘルメット・背嚢・雑嚢・水筒と水筒被い・応急キット・飯盒モドキ・保存食・メインアームの特製小銃型木銃とサイドアームの拳銃型木銃・コンバットナイフなどなどだ。

 これとは別に、遠征時には騎竜レクセガウスに運ばせる長剣や糧秣なども装備に加わる。

 


 元々、俺の身体に含まれている自由に使える『魔素マ・ソー』はかなり多い。正確に測る計測器が無いので、限界まで魔法を使った後で測った体重の減少量からの推測でしか無いが、一般的な大人の数倍は含有していると言われている。

 しかも、通電性が良いと言うべきか、『魔素マ・ソー』を体内で循環させる事で発動する『魔体マグ・ラディ』の効率もかなり高い。

 それだけの条件が揃ったおかげで、12歳の身体ながらフル装備状態でも時速換算で軽く10㌔以上の行軍速度を数時間は絞り出す。



「行ける気もするが、止めておこう。『三日月みかづき』がねる」


 俺は自分の愛竜の名前を出して断った。

 『三日月みかづき』というのは、地球で言う馬に当たる小型地竜レクセガウスの名前だ。名前の由来は額に三日月状の傷が有るからだ。

 小型地竜レクセガウスは2本脚で走る有名な肉食恐竜のラプトルの様な姿をしている。

 映画で見た様な恐ろし気な顔では無く、熱帯とかに居る様なゴツゴツとしたトカゲの様な顔でも無く、醬油顔と言うかシュっとした感じの優し気で、見方によっては可愛いらしいと言える二ホントカゲの様な顔をしている。

 瞬間最高速度は、騎乗した状態でも原付バイク並みの時速50㌔を叩き出し(おっと原チャリは時速30㌔以下でしか走れなかった筈だった)、急がずに長距離をゆっくり行く時は時速10㌔で走る。

 徒歩並みの速度で歩く時は少々コツが居るが、それでもかなり価値が高い動物だ。

 地球の恐竜と同じ様に卵で孵るが、ほとんど一度の産卵で2個の卵を産む。

 本当にごく稀に1個や3個の卵を産む時が有るが、通常との個体差が大きくなる。

 


 さて、そろそろ時間だ。

 もう一度、装備の拘束具に緩みが無いかを確認後に『三日月みかづき』に騎乗して、ログナス二等級爵領領軍の精鋭部隊が待つ演習場に向かう。

 ログナス二等級爵領領軍は約1000人ほど居るが、その内の150人を『魔杖竜騎兵』として育てている最中だ。


 騎竜レクセガウスを使った『竜騎兵』はこれまでも存在したし、輓馬的な扱いだった4足歩行の獣を最高速度の不利を承知で騎獣にした『獣騎兵』も母数の多さから今も現役だ。

 ただ残念ながら、これまでは『竜騎兵』も『獣騎兵』も主力足り得なかった。

 突破力に優れている筈の騎兵種がガラバナン人たちの後方部隊しか襲わない理由は、ガラバナン人が多数居る場所に近付くのを騎竜も騎獣も嫌がるからだ。もしかすると本能になってしまう程、昔はガラバナン人たちに狩られたのかもしれないな。

 一方、後方部隊ならゴボリン人が主体なので、問題無く襲えるという理由だった。



 今日使う演習場は高低差が有る丘陵地帯に造られていた。地形の低い場所に立てば50ナグ(約55㍍)先も見通せないくらいにデコボコとした地形だ。騎乗しても100ナグ(約110㍍)見渡せるかどうかだ。

 その丘陵地帯を走り抜けながら、ランダムに設置されているガラバナン人を模した高さ3㍍超の的を『先進型魔矢アドヴァス・マグ・ルー』で撃ち抜くと言うのが今日の課題だ。

 普通はこんな遭遇戦に近い戦闘は起きにくいと思うし、こんな訓練をする軍隊も無いだろう。騎兵種は平野部で最も威力を発揮するから、そういう地形で運用するのが常道だからだ。


 だが、俺は敢えてこの訓練を多用している。

 何と言うか、こっちの軍隊は咄嗟の判断を下すのが苦手なんだ。

 これまでは相互援護が可能な様に計算された砦群を利用した防御戦がメインで、後方への攻撃はサブという考えが主流だったから、戦況の変化がゆっくりだった、と言うのが原因だろう。

 これが平野部での会戦が多ければ、また違ったかもしれない。

 まあ、それを侵攻初期にして完敗したからこその、今の戦術なんだが。


 そして、その影響で騎兵種の戦訓が少ない。失われたと言って良いだろう。

 有るには有るが、かなりの部分が反撃の弱い対ゴボリン人部隊が占める。

 俺は、『あらゆる状況に対応出来る「魔杖竜騎兵」』を目標に掲げているから、対ガラバナン人部隊を視野に入れて、訓練内容からして工夫が必要なんだ。


 もちろん、安全には最大限の配慮をしている。

 殺傷力が高い制式木銃ではなく、自由魔素の含有量が少ない樹で造った魔流も魔圧も低い訓練用の木銃を使用している。

 防具の無い部分に当たってもケガをしないくらいだ。あざは出来るがな。

 



 本日のログナス二等級爵領領軍『魔杖竜騎兵』の訓練成果の判定は辛うじて「可」だった。

 最初の頃に比べれば、見れる様になって来たと思う。

 なんせ、最初の頃は咄嗟射撃が出来ずに的の前で急停止した事も有ったからな。

 最後方で訓練に付き添っていた俺は何とか隙間を駆け抜けて的を撃ち抜いたが、あの時はさすがに怒鳴り散らしたな。

 敵の目の前で停まってどうするんだ?

 騎兵が敵の目の前で棒立ちになったら、近接戦に滅法強いガラバナン人に簡単に殺されるだろう。



 さあて、明日は的を今日の倍の20個に増やして、難易度を上げる事にしよう。





お読み頂き誠に有難う御座います。


 第10話「魔杖竜騎兵委託訓練」をお送りしました。


 今後、ストックの加減次第ですが、更新は出来るだけ3の倍数の日にしたいと思います。

 今月は9日8話/投稿済み、12日9話/投稿済み、15日10話/投稿済み、18日11話、21日12話、24日13話、27日14話、30日15話、という感じで更新する事に前向きに善処したい所存です。


『お知らせ(^-^)』

 自慢では無いですが、作者はチンアナゴ顔負けの臆病者です。

 プランクトンの代わりに『ブックマーク』や『評価』、『いいねで応援』ボタンなどで応援を賜りますと、恐る恐る顔を出す(【更新する】)習性が有る事を念の為にお伝えしておきますね(^^)

 最近プランクトンが少なくて困窮しつつある作者です ort


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