たくみのターン
今度は3人での帰り道。
たくみのおねだりからのゆいこのハグでドキドキさせます。
私立なろラジ高校に通うゆいことたくみとひろし。三人はいつも一緒に帰宅していた。
一年生のゆいこは図書委員、三年生のひろしは図書室で受験勉強、たくみも同じく三年生なのだが特待生のため引退しなかった部活のバスケで帰宅時間がだいたい同じ位だったからだ。
それはある秋の日の帰り道、通学路の途中にある公園に差し掛かったときのことだった。
「だいたいあいつら下手なくせに指示もちゃんと聞かないんだよなぁ」
その日の部活の練習中、思うように動けなかったらしいたくみは少し荒れて地面の落ち葉を蹴りながら後輩の愚痴を言っていた。
「どうしたら強くなれるかの想像力が足りないんだよ!」
そう言い放つたくみに
「想像力が足りないのはたくみだろう。指示の理由はちゃんと説明してるのか?みんながみんなお前の感覚を理解できる訳じゃないんだぞ。」
ひろしは諭すように言った。
正論を言われカチンと来たたくみが語気を荒げて反論する。
「あーあー頭が良いやつの言うことは違うねぇ。だけどな!運動神経のないやつは引っ込んでろよ!」
「お前の八つ当たりには付き合ってられないな。」
たくみを一瞥して冷静にそう言うと、ひろしはスタスタと先に帰っていった。
そのやり取りを黙って見ていたゆいこは、たくみを公園のベンチに座らせ、自販機でスポーツドリンクを買って渡しながら静かにたずねた。
「ねぇ、たくみ実は落ち込んでるんでしょ?
卒業までに後輩たちにちゃんとゆっくり理論的に技術を教えたいって言ってたもんね。
今までたくみについてきてくれた子達になにか残したいって。」
そう話すゆいこにたくみは驚いた顔を見せる。
そして静かに俯き、呟いた。
「…落ち込んでると思うなら慰めろよ」
ゆいこは下を向くたくみの正面に立ち、抱き締め、まるで子供をあやすようにたくみの頭を撫でた。
いつもなら怒るはずのたくみがおとなしく撫でられている。本当に落ち込んでいるようだった。
ここでは外の雑踏も聞こえないようで、秋の虫の声が響いている。
しばらくそうしていると
「…ごめん、ありがと。」
抱き締められたままの状態でたくみが呟いた。
「ほら、もう離れろよ。まったく、もう子供じゃないんだから。油断も隙もないな。」
いつの間にか戻ってきたひろしがゆいこを引き剥がしながらぼやいた。
いつも明るいたくみが落ち込んでるのを見て何とかしてあげたいと思ったとはいえ、ゆいこは今更ながら自分の行動に顔が赤くなった。
その顔を二人に、特にたくみに見られないようにゆいこはその日3人の先頭を歩いて帰った。
自分の思わぬ行動に動揺するゆいこ、たくみを抱き締めさせるきっかけを作ってしまったひろし、ゆいこが自分を見ていてくれた事が嬉しいたくみ。
3人の眠れぬ夜は更けていくのだった。
トライアングルレッスンなのでトライアングルのまま終わります。
楽しんでいただけたなら幸いです。
書いていて私はとっても楽しかったです。