ひろしのターン
無事たくみとひろしと同じなろ高生になったゆいこ
いつもは3人で帰っていたが、ひろしと二人で帰ることになった通学路でアクシデントが起こる。
ひろしのハグにゆいこがドキドキします。
私立なろラジ高校に通うゆいことたくみとひろし。
幼なじみの三人はいつも一緒に帰宅していた。
一年生のゆいこは図書委員として図書室の司書の仕事、三年生のひろしは図書室で受験勉強、同じく三年生のたくみは特待生として部活のバスケで放課後を過ごし、帰宅時間がだいたい同じ位だったからだ。
ある初夏の日、たくみが部活の試合で遠征に行くことなり、ゆいこは1週間ひろしと二人きりで帰宅することになった。
最初は物珍しい二人での帰宅に会話も弾んだが、だんだん話題も少なくなり最終日にはちょっとした沈黙が漂うようになっていた。
日が長くなってきたとはいえ梅雨前のこの時期、6時にはもう辺りは暗い。
爽やかな夜風に吹かれゆったりとした沈黙の中、夜の散歩のように二人で帰っていく。
ゆいこはこの空間が好きだったが、ひろしがどう思っているか気が気でなかった。
(騒がしいたくみも入れた3人って言うバランスが良かったのね)とゆいこが思っていると、丁度遠征先のたくみから電話がかかってきた。
「もしもーし、今帰りの時間だろ?
どうだ?俺がいなくて寂しいだろ?」
電話口からたくみの笑い声が聞こえた。
ひろしに内容を伝え、久し振りに3人での会話を楽しみながら歩く。
電話に夢中になっていたその時、ゆいこが歩道の段差に躓き転びかけた。
「きゃ!」
「どうした?」
「うん、躓きそうになっ…ちゃっ…て……」
その時咄嗟にひろしが斜め後ろから抱き抱えるようにゆいこを支えた。そしてゆいこが体勢を直してもひろしはそのまま抱き締めて離さなかった。
それどころかひろしの腕に更に力が入る。
「じゃ、じゃあ気を付けて帰ってきてね!」
「お、おい。ほんとに大丈夫…」
慌てたゆいこが途中で電話を切ってしまうと、やっとひろしは抱き締める腕の力を緩めた。
「ごめん。せっかく二人きりで帰れるチャンスで、しかも今日はその最後の日なのに、ゆいこがあんまり楽しそうにたくみと夢中で電話してるからつい。」
顔を真っ赤にしながら横を向くひろしにつられて、ゆいこも自分の顔が赤くなるのを感じた。
「か、帰ろうか?」
ひろしが切り出しながら離れる。
「う、うん。帰ろう、帰ろう。」
ゆいこは真っ赤な顔を下を向いて隠して同意した。
それから二人はゆいこの家まで黙って歩いた。
せっかくの爽やかな夜風も今は沈黙が重かった。
「今日のことはもう謝らないから、お休み。」
ゆいこの家の前に着くやいなやそう言うとひろしは走って帰っていった。
「えっ?お、お休みなさい!」
ゆいこはあっという間に小さくなるひろしの後ろ姿に呼び掛けた。
突然のハグを受けたゆいこと、急に電話を切られてしまったたくみと、突然の告白をしてしまったひろし。
それぞれの眠れぬ夜が更けていった。
たくみは遠征先で眠れたのでしょうか?
バスケはハードなので可哀想ですね。
読んでいただきありがとうございました。
次は2月25日投稿予定です。