俺の相棒
「イヤーすっかり忘れてたわ。タイトルなのに!ゴメンねっ★」
なんだか相棒も「いいよ」と言って許してくれたような気がする。お前ホント良いヤツだなあ。
思えばこの世界で俺の唯一の財産であり友だ。 まあジューサーミキサーだけどな。
「液状になりさえすれば、このゲキマズ食糧様も何とかなるだろう。よし早速」
俺はザ・スムージー(相棒)の蓋を開ける。
「ん?容器の中が仕切りみたいなので3つに区切られてるな。…刃物とかも付いてないけど、どうやって混ぜるんだろうな?」
俺は頭を捻りながらも人の後頭部みたいな見た目の木の実(鬼酸っぱい)を1個摘まみあげ、ミキサーに近づけると、木の実がヒュウウン!と光になってミキサーの中に吸い込まれたのだ!
「うおっ! あ、そういえばコレ。マジックアイテムだったのすっかり忘れてたな。なるほどこうやって仕切られた容器に納められんのね? なるほど、なるほど」
取り敢えずものは試しだ。もう1個木の実をミキサーの中に入れる。
今度は犬の尻のような形をしたヤツ(塩分濃度高過ぎ)だ。
まあ味の期待なんかしない。もう味わったからな(キリッ)
「よし蓋をしてっと。 スイッチ・オン!」
何故か宝石のような形になってしまったミキサーの電源スイッチを押す。
スイッチが光り、その瞬間体から力が一瞬抜ける。
「なるほどこれがMPを消費するってやつか。どれ」
俺はステータスボードを出す。
HP: 3/6 (-1:空腹感)
MP: 2/3 (-1:空腹感)
なるほど消費するMPは1か。となると今日使ってもあと1回かな?それとも止めるか。
あの似非関西弁妖精がMPもなくなるとヤバいって言ってたしなあ。うーん
「ギュウイイイン!!」
ミキサーはとても物理を無視したかの様な動きでジュースを作っていく。
ああ、こんな形にはなっちまったが、ようやくお前を使うことができたな?相棒。
いつのまにか俺の頬を温かいものが流れ落ちていった。
「チーン。 ポシュン!」
いきなりミキサーからボトルが飛び出し、感傷に浸っていた俺の頭に直撃した。
「痛っ ビックリするなあ、もお~。…おお、本当にボトルに入ってるんだな。アレだ、何か知らんがプロテインをシャカシャカするヤツに似てるな? というか中身がなみなみ入ってるけど、木の実2個から作れる量(500ミリリットル)じゃあないと思うが。 まあそこはマジックアイテムだ、余計なツッコミは入れないに限る」
俺はボトルのキャップを開ける。すると不思議なことにキャップが消滅した。 なるほど、…飲み切れと。そういう事か。
なるべく味合わないようにすればいい!よし行くぞ!俺は行くぞったら行くぞ、オイ!!
「南無八幡台菩薩っ!!」
俺は一気にジュースをあおった。
ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクっ。
…アレ?酸っぱくない? しょっぱくもないぞ?
ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクっ。
というか美味いぞっ!懐かしいというか、ホップの苦みが効いているというか…
「プハァっ!」
俺は勢いよく地面にボトルを叩きつける。
「ビールじゃあねえかっ?!」
飲み切ったボトルは消滅していた。
何というか炭酸の無いノンアルコールビールを飲んだ気分だ。どういう事だ?
しかし、そんな疑問を遮るように、俺は何とも言えない多幸感に急に包まれ、そのまま気絶するように眠ってしまった。