表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/312

74日目(異世界)後編


街からやや離れた狩場へ到着した。

以前僕がソロで狩りをした森とは逆方向の高原だ。

見晴らしがよく奇襲を受けにくい場所で、ここが基本の狩場らしい。


「当たりはロックアルマジロとマッスルゴートだ。

残りのスライム、ゲルカメレオン、パラソルフラワーは雑魚で素材もクソだ。

訓練にはちょうどいいがな」


ラルフさんが説明してくれる。

魔物の代表スライムがこんなとこに出るのか。


「では補助をかけていきましょう。

【リヒール】」


ウォルターさんが子供たちに【リヒール】をかけていく。

HPを徐々に回復していく魔法だ。

まだどこにも怪我をしていないが【リヒール】をかけておくことで軽いけがならすぐに治る。


「では僕も」

僕も続いて【プロテクト】と【バイタルエイド】を全員にかけていく。

ちなみにジョブは【薬師】だ。


「おぅ、ほらいたぞ。

お前らいけ」

「「「はい!」」」


彼らは弓を構えると、矢を放ち、その先のスライムに当たる。

すると、周りの魔物たちがこっちに気づいたようで、ぞろぞろと集まってくる。


あのドロドロしたカメレオンがゲルカメレオン、ぷるぷるゼリーのようなのがスライム、大きな傘のような花の魔物がパラソルフラワーだろう。

どれも動きが遅い。

あの中ではゲルカメレオンが一番速いのか、徐々に距離をつめてくる。


が、子供たちが弓で攻撃をし、次々と倒していく。

これノーダメージじゃね?

補助意味なくね?


「よし、奥行くぞ!」

「「「はい!」」」


ラルフさんがそう言うと、子供たちは元気良く返事をする。

高原の奥にも同じ魔物がいる。

奥に入ると若干数が増えるくらいだ。


さっきまでは子供たちが全員弓だったが、比較的年上っぽい子供2人が剣を装備している。


「よしいいぞ、いけ」

「「「はい!」」」


ラルフさんが声を号令をだすと、子供たちが一斉に攻撃を始める。

剣を装備した2人だけが、やや前に出てさらにその前にラルフさんだ。


「では狭間さん、ここからは子供たちの補助を切らさないようにしてください。

特に前衛の2人には常に補助をかけておいてください」

「わかりました」


ウォルターさんが指示を出してくれる。


奥に行くにつれ、魔物の数が増えていく。

そして、弓の殲滅力より魔物の数が増えてくると、ラルフさんが1匹だけを前衛の子供2人に誘導し、残りは瞬殺する。


ラルフさんは両手に一本ずつ短剣にしては長いが、剣としては短いような剣を装備している。

双剣というヤツだろうか。

動きが速く、魔物を瞬殺してしまう。

倒す気になればすぐにこの辺りの魔物を殲滅してしまうだろう。


上手に立ち回って、1匹だけを子供たちに攻撃させている。

僕は一応補助魔法をかけ続けているが、子供たちはほぼ攻撃をくらっていないのであまり意味がない。


なんだろう……

接待狩りだな、これは。

確かにこの狩りの仕方なら、安全かつ効率よくステータスとジョブレベルを上げられるだろう。

しかしステータスとジョブだけが上がっても上手く立ち回れないよな。

まぁ貴族だからいいのかもしれないが……


そして、そういう僕だって補助魔法をちょこちょこかけているだけで、そのほかは何もしていない。

ラルフさんとウォルターさんに全員で寄生しているような感じだ。

今回は狩りの流れを把握する目的もあるからな。

次からは前衛一人と僕一人、残りは子供たちってこともありえるか。


「おい……

止まれ……

マッスルゴートだ」

ラルフさんが声をひそめて言う。


彼が指差した先にはムキムキのヤギがいた。

ちょっと強そうだ。


「俺が突っ込んでぶっ殺してくるから、あとの雑魚はお前らが殺れ」

子供たちは無言でうなずく。


そう言うと、ラルフさんはザッと踏み込み、一瞬で間合いをつめる。

豪快に双剣を振り回し、マッスルゴートに撃ち込んでいる。

ひたすら首から上だけを攻撃しているな。

左右、それから後ろに回り込んでは飛び上がり、首から上だけを攻撃している。


そして、子供たちも弓で攻撃を続けている。

数名攻撃魔法を使っている子供もいる。


「狭間さん、攻撃魔法はあります?」

「はい、少しなら使えます」


僕はウォルターさんに答える。


「では前衛の2人に3匹以上魔物が近づいたら倒してください」

「わかりました」


前衛の子供に3匹目の魔物が近づいていたので、【エアブレード】を撃っておく。

動きが遅いので当てるのは簡単だ。

耐久力もそれほど高くない。

これだったら、【エアブレード】よりもまだスキルの低い【ファイアボール】や【ショットストーン】でも倒せるだろう。

僕はこれを機に、【エアブレード】以外の攻撃魔法を試してみる。


パラソルフラワーとスライムには【ファイアボール】が有効だ。

それからゲルカメレオンには【ショットストーン】。

そして【ウォーターガン】はどの魔物にもあまり効いていないが、【氷結】と【ファイアアロー】はどの魔物にも結構効いている。

でもやっぱり【エアブレード】が僕の攻撃魔法の中では突出して威力がある。

まぁスキルレベルが違うからな。


ほどなくして、ラルフさんがマッスルゴートを仕留めたようだ。

他の魔物もあっさりと殲滅させる。

残った二匹は子供たちが頑張って戦っている。


その様子でラルフさんはさっさとマッスルゴートの解体を始める。

「よし、帰るか」

「ぇ?

もう帰るんですか?」

「えぇ、もうすぐお昼ですからね」


ウォルターさんが笑顔で答えてくれる。

そうか、昼前には帰るんだな。


本当に接待狩りだったな。

というより体育の授業だ。

これで3000セペタももらって良いのだろうか。


「おい、マッスルゴートはだいたい1500くらいで売れるぞ。

一人500だが、どうする?

お前買うか?」

「ぇ?

僕がですか?」

僕が買って店に売りに行けってことかな?


「マッスルゴートの革は軽く丈夫で防具の素材として良いんですよ。

狭間さんが買い取って、加工してもらえばそのまま防具を購入するよりも安くすみますよ?」

「なるほど、そういうことでしたか。

それでしたら是非購入させてください」


あぁ、僕の装備を見て買い替えたほうが良いだろうってね……

その通りです、はい。


「おぅ、じゃぁ帰ったらな」

「ありがとうございます」


今考えると、首から上だけを狙っていたのは素材のためだったのか。

ぶっきら棒だけど優しいなラルフさん。







教会へ帰ると報酬の3000セペタをもらい、ラルフさんとウォルターさんに500ずつ渡す。

それから狩りではいくつかの小さな魔石が出た。

3cmくらいの魔石で200セペタくらいになるらしい。


そして、魔石の販売所へ行き、昨日病室で補充した【ヒール】50回分の料金も手に入れた。

補充分の料金は2500セペタだ。


ただただ病室で【ヒール】を補充するだけで優雅に生活できてしまう……

けれどそんなのはつまらない。

装備も買い替えたいし、できる限りステータスやジョブも強化したい。


今昼でMPもまだまだある。

まだ稼げるが、MPを使って稼ぐと回復量に矛盾が出てしまう。

どうしたものか……


僕のMP回復量を知っているカルディさんに相談してみようか。








「というわけなんです」

「なるほど、なるほど。

確かにMPを乱用するのはあまりよろしく無さそうですね。

とりあえずMPが余っているのでしたら、今日も毒の実を仕入れているので【アンチポイズン】をお願いします」


「おぉ!

そうでした!」

僕は毒の実に片っ端から【アンチポイズン】をかけていく。


「では20個分、1000セペタですね」

「ありがとうございます」


「いえいえ、こちらこそ」

「でも、もう買い手がついたんですか?」


「いいえ、昨日の分はうちで少しずつ消費することにしました。

妻、娘ともに大変に気に入ってしまいまして」

「なるほど、確かに女性の方が好きな味かもしれませんね」


「それでMPはどうです?」

「はい、だいぶ減りましたがまだまだ残っていますね」


「そうですか。

ではしばらく毒の実は買い足しておきましょう。

今日はそうですね……

【土魔法】の【創造】でお皿やカップを作っていただきましょうか。

それほど高くはありませんが、買い取りますよ」

「おぉ、ありがとうございます」



「できるだけ細かい装飾をつけるように心がけてください。

そのほうがスキルレベルが上がると思います。

それから離れた場所に作ろうとすれば【魔力操作】の向上にも繋がりますよ」

「なるほど、ありがとうございます!」


やっぱりカルディさんは凄いな。

何でも知っている。


それから皿とカップ、花瓶などを作りまくった。

お陰でMPをほぼ消費することができた。


「ではそれら全てで300セペタで買い取ります」

「おぉ!

ありがとうございます!」


「そうですね。

【創造】のスキルが上がってくれば、ガラス製品が作れるそうです。

そうなればもっと高価格で買い取ることができます。

頑張ってくださいね」

「はい!」


ガラス製品か。

教会でガラスが使われていたけれど、【土魔法】からできていたのかもしれないな。


「それから、午前中は【薬師】で狩りに参加したのですね?」

「はい、狩りと言ってもただ付いて行って【補助魔法】を使っていただけですが……」


「ではステータスを確認してみてください」

「はい」

僕はステータスを確認する。


おぉ!

【薬師:Lv6】になっている。

【毒薬生成:Lv0(New)】も習得したようだ。


「新しいスキルはでていませんか?」

「【毒薬生成】が出ています」


「おぉ……【ポーション生成】よりも先に【毒薬生成】が出たんですね……」

「はい」


微妙なリアクションだな。

【毒薬生成】よりも【ポーション生成】のほうが有用なんだろうか。


「あぁ……そうですね。

【毒薬生成】には、毒草か毒の実が必要なんです。

毒の実は先程使い切ってしまいましたので、毒草で試してみましょう」

カルディさんは奥の部屋へ行き、30cmくらいある袋を持ってきた。


「50枚くらいでしょうね。

ではこの毒草に【毒薬生成】を使ってみてください。

こちらの小瓶を意識してくださいね」

「はい、やってみます。

【毒薬生成】!」


僕がそう言うと、1枚の毒草がふわっと消え小瓶に紫色の液体が少しだけ溜まる。


「成功ですね。

50枚で小瓶1つくらいの毒薬が生成されると思いますので、残りも同様にやってみましょう」

「はい、【毒薬生成】!」


それから10回くらい【毒薬生成】を使った。

「すみません、SPが切れました」


小瓶の20%くらいしか毒薬ができていない。

【薬師】のスキルはMPではなくSPを消費するので、僕はそれほど使うことができないな。

それから【薬師】のスキルを使うってことは【ストレージ】の強化ができなくなるってことだ。

ん〜……

ちょっと微妙だな。


「ありがとうございます。

こちらはまた狭間さんのSPが回復したらやってもらいましょう」

「でも、カルディさんも【薬師】のジョブをお持ちなんですよね?」


「えぇ、でも【薬師】の【ポーション生成】や【毒薬生成】ではSPを消費できないんです。

前に少しお話した【錬金術師】は知っていますか?」

「はい、教会の魔石は【錬金術師】が加工しているんですよね?」


「そうですね。

私も【錬金術師】のジョブを持っています。

そして【錬金術師】のスキルも【薬師】と同じくMPではなくSP消費になります」

「なるほど……」


「今この街で【錬金術師】は私しかいません。

ですから魔石の加工は私が教会でやっているんですよ」

「おぉ!

カルディさんだけなんですね」


「えぇ、ですから最近【薬師】の【ポーション生成】や【毒薬生成】ができていません。

ですので狭間さん、SPが回復したらまたうちでスキルを使ってください」

「はい!

もちろんです!」


「それから、もう少し【薬師】を上げれば【ポーション生成】が出ると思いますので、狩りのときはできるだけ【薬師】でお願いします」

「そうですね。了解しました」


装備を買い替えるまでは、この生活が続きそうだな。


狭間圏はざまけん

【薬師:Lv6(↑+6)】

HP:246/246

MP:4/464

SP:4/83(↑+4)【薬師:+62】

力:21【薬師:−15】

耐久:58【薬師:−15】

俊敏:37【薬師:−15】

器用:14【薬師:−15】

魔力:32(↑+1)

神聖:72(↑+1)

【魔力操作:Lv43(↑+1)】

【炎魔法:Lv35 ファイアボール:Lv2(↑+1) ファイアアロー:Lv1(↑+1)】

【水魔法:Lv32 ウォーターガン:Lv1(↑+1) 氷結:Lv1(↑+1)】

【土魔法:Lv25(↑+1) 創造:Lv14(↑+2) ショットストーン:Lv1(↑+1)】

【風魔法:Lv30 エアブレード:Lv9】

【回復魔法:Lv37 アンチポイズン:Lv11(↑+1)】

【補助魔法:Lv25(↑+1) プロテクト:Lv51(↑+1) バイタルエイド:Lv51(↑+1)】

【毒薬生成:Lv1(New ↑+1)】

【etc.(20)】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 薬師の−ステータスがえぐい。 でも、なかなかあがらないSP爆上げですね。
[一言] これしれっと錬金術師宣言してるけど超機密情報だよね いわば教会の金のなる木
[気になる点] カルディって強さの順位で非公開だったけど、 まあ普通に考えて、トリプルヘッドより上だよな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ