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74日目(異世界)前編


昨日から教会で生活することになった。

宿舎は同じ敷地内にあり、教会の職員達が住んでいる。


昨日イヴォンさんに言われたとおり、朝は食堂へやってきた。

なんだかすごくいい匂いがする。


食堂に長いテーブルが用意されており、どこに座ってもいい。

座ると、シスターたちが食事を運んでくれる。

昨日の夜も宿舎の食堂でご飯を食べた。


夜は魔物の肉がメインでかなり美味かった。

日本でもなかなか味わえないレベルだ。


朝はパンとスープとサラダだ。

パンは焼き立てで、スープがとにかく美味い。

魔物の肉を使っているのだろうか。


ここって教会だよな……

やはり魔石という高級品を扱っているだけあって生活レベルが高い。


いたるところに魔石が使われている。

特にインフラが完璧だ。


部屋の入口にある魔石に触れると天井が光る。

普通に電気のようだ。

それからトイレは水洗で、水道もある。

水道と言っても、管の先に魔石がついており、それに触れると水が流れる仕組みだ。

そしてトイレが洋式のトイレだ。

形が日本のトイレと全く同じなんだが、これって僕以外の異世界人が作ったよな……絶対。


あとは風呂があるらしいけど、MP消費が激しいので現在は使っていないらしい。

風呂についている魔石にMPを使えばお湯が出るそうだが、風呂をいっぱいにするためにはそれなりのMPが消費されてしまう。

現在住んでいる人たちはそれほどMPに余裕が無いんだろうか。


さらに気になるのが、宿舎に住んでいる人が多いことだ。

たしか、教会で働く条件というのは結構厳しかったと思う。

領民であること、それから【ハイヒール】以上の回復魔法が使えることだ。


この人達全員が【ハイヒール】以上の回復魔法を使えるとは思えない。

というのは、子供が多いからだ。

教会といえば、孤児の世話をしているというイメージだったが明らかにそうではない。

身なりが整っていて、とても孤児には見えない。


むしろ、この中で一番みすぼらしい格好をしているのは僕だ。

あと、明らかに前衛のような見た目の人間もいる。

護衛かな?


そんなことを考えながら朝食を食べていると、イヴォンさんがやってきた。


「やぁ狭間さん、おはようございます」

「イヴォンさん、おはようございます」


「食事中に申し訳ないのですが、こちらへ来ていただいても?」

「はい、了解です」


僕は長いテーブルの先、部屋の奥までイヴォンさんと移動する。


「おはようございます。

今日から我が教会の宿舎で一緒に生活をする、狭間さんです。

狭間さんはフリーの教会職員として来られました」

「狭間です。

よろしくお願いします」



「おぉ……フリーか」

「若いのに凄いな」


なんだかざわついている。

フリーの教会職員とはどういうことだろうか。


「では、朝食がすみましたら応接室へ来てください」

「はい、よろしくお願いします」








僕は朝食を食べた後、応接室へ向かう。


「狭間です、失礼します」

「どうぞ」


「宿舎はいかがでしたか?」

「いや、最高ですね。

魔石ってあんな使い方があるんですね」


「そうですね。

一般的にはあのような使用はしないのですが、教会は特別です。

他の街でも教会の施設は概ね同じように魔石を使っています」

「それは凄い……」


「では早速で申し訳ないのですが、今後の仕事について説明させていただきますね」

「はい、よろしくお願いします」


あれ?

魔石に魔法を撃ち込むのと、重傷者の治療だけじゃないのかな?


「まずは、昨日説明したとおり、魔石への魔法の補充と、治療室での重傷者の治療です。

こちらはできる限りやっていただこうと思います」

「はい、僕の方も是非お願いしたいです」


「それから、もう一つは貴族のステータス、及びジョブレベル上げです」

「貴族ですか……」


なんだろう……

貴族ってあんまり良いイメージ無いよな。


「えぇ、現在この教会には約50人の人間が生活しています。

私を含め、主に魔法を中心に使用し、魔石の補充などをする人間が7人。

狭間さんもこの中に入っています。

それから前衛のベテランの方が5人。

私以外のこれらの人間がフリーの教会職員となります。

仕事をした分だけ報酬を支払いますが、基本的には自由にしていただいています」


僕はそのフリーの教会職員というわけか。


「そして、料理や掃除、魔石の販売などをする職員が8人。

その他は全て貴族のご子息、ご息女です」


おぉ、やっぱり結構人いたよな。

てか身なりがキレイだとは思っていたが、子供はみんな貴族だったのね。

孤児とは対極なわけだ。


「貴族の子供はステータスやジョブを上げるためにここにいます。

8歳から12歳位までは教会で鍛えるわけです。

狭間さん、もう部屋の魔石の扱いは慣れましたか?」

「はい、とても便利で驚きました」


「そうなんです。

便利なのですが、ここの宿舎では生活をするために魔石が必要になります。

そして魔石を使う度にMPを消費するので、生活するだけでMPが徐々に成長していくのです」


なるほどそれは凄いな。


「ただし、他のステータスやジョブを上げるためには魔物と戦う必要があります。

そこでフリーの教会職員の方には定期的に狩りに同伴していただきます。

そうすると、狩りの最中に盗賊などに襲われる心配はまずありません。

我々と戦うよりも、簡単にお金を稼ぐ方法などいくらでもありますから」


おぉ、凄い自信だ。

だからフリーの教会職員には制限があるのか。

強くないとダメなのね。


「えっと、狩りについていくのは強制なんでしょうか」

「いえいえ、もちろん任意ですし、報酬も支払われます」


それは良かった。

毎回貴族の狩りに付き合わされるとかあんまりやりたくない。


「1日の狩りで3000セペタの報酬、それからドロップアイテムは全て護衛の方のものになります。

それから数日間に渡るものだと、追加で報酬が出ます」

「おぉ、ドロップアイテム全てですか」


すげぇな。

完全に金持ち相手の商売ではないだろうか。


「はい、彼らには30日間ごとに20万セペタほどのお金を頂いています。

そういったステータス上げの料金も含まれていますので。

ちなみに狭間さんの場合、こちらに住んでいただくことで教会の安全性が向上していますので少し安くなっています」

「そうなんですね、ありがとうございます」


なんてこった。

もう完全に貴族の家ではないか。


「ちなみに今日も狩りがありますが、ご同行していただけますか?」

「はい、行ってみたいです」


「それは助かります。

では早速パーティと顔合わせをしましょう」




外に出ると、狩りに出る準備をしている子どもたちと大人が二人いた。

「今日は狭間さんが同行してくださいます。

ラルフさん、お願いしますね」

「はいよ」


ラルフと呼ばれた人は50代だろうか。

身長は175cmくらい。

白髪混じりの長い髪をして、顔にはいくつか傷跡がある。

歴戦の戦士って感じだ。


「狭間です。

よろしくお願いします」

「ラルフだ。

今は冒険者を引退してここで生活してる。

見りゃわかると思うが前衛だ。

んでこっちが後衛、あんたと同じ回復だな」


「ウォルターです。

私も回復です」

「よろしくお願いします」


ウォルターさんも50代だろうか。

165cmくらいで、同じく白髪交じりだ。

優しそうで、回復魔法が得意そうだ。


「では、あとはお願いしますね」

「おぅ」

イヴォンさんはそういうと教会へ戻っていった。


「いつもは俺とウォルターの2人だけだからな。

それでも余裕だ。

あんたは初めてだから、一通り流れを見ておいてくれ。

それから使える魔法を一通り教えてくれ」


僕は一通り使える魔法とスキルレベルを教えた。


「なるほど、こりゃいいな。

狭間、お前今日は回復しなくていいから、ガキどもに補助魔法をかけまくってくれ」

「はい、わかりました」


そうか目的は子どもたちのジョブ、ステータス上げだから彼らができるだけ安全な方がいいわけだ。

そして、1つ気になることを聞いておく。


「すみません、狩り中はジョブを【聖職者】にしておけばいいですか?」

「ん?

いや、どうせ雑魚だから好きなのでいいぞ」


よっしゃ!

ジョブを【薬師】にしておこう。


「わかりました。

ありがとうございます」


「それじゃいくぞ」

「「「はい!」」」


子供たちが大きく返事をする。

貴族の子供って生意気なイメージだったけど、全くそんなこと無いな。

親元を離れて教会で生活しているからだろうか。


教会の外には馬車が用意してあり、その荷台に何人も乗り込む。


「ぇ?

馬車で行くんですか?」

「あたりめぇだろ。

この人数分馬用意すんの大変だろ?」


「いや、歩かないんですか?」

「そういや狩場まで歩くなんてしばらくねぇな」


マジかよ……

馬車で狩りとかガチ貴族だな。


そして僕の装備がダントツでみすぼらしい……

この様子だと流石に買い替えないとヤバいかもしれない。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公が現代の方で動けるようになってからの構想があるのか気になります [一言] 主人公に経験値バフの補助魔法とかあったら手がつけられ無くなりそうだなって思いました笑 これからも読ませて…
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