63日目(異世界)
暗闇で目覚める。
MPは全快だ。
早速土魔法で穴を掘り進めていこう。
ズリズリと土をかけ分けて進む。
「あぁ、狭間君。
すまないが頼む」
「わかりました」
昨日よりも【土魔法】のスキルレベルが大幅に上がっている。
おそらく今日はかなり進めるはずだ。
「進む方向はどうしましょう」
「そうだな、ある程度離れてから外に出ないと奴らに見つかるだろう。
かといって、ここも見つからないとは限らないからな……」
「ですよね……」
「今日はMP的にも昨日の半分くらいしか進めないだろう」
「いえ、昨日の倍は進めるはずです」
「それは無い。
MPは半分も回復していないだろう?」
「……いえ」
ここは隠している場合じゃないな。
「MPは全快です。
僕はMPが毎朝全快するんです」
「……そうか」
「驚かないんですか?」
「いや、本当かどうかわからないしな。
掘り進めてみればわかることだ」
「はい。
進みましょう」
◇
15mくらいは進んだだろうか。
暗闇で距離感や方向感覚が無い。
「驚いたな……
本当に昨日より進むとは」
「はい、MPはまだ半分以上あります」
「おいおい、昨日の倍どころではないな」
「そうですね、【土魔法】のスキルも上がっています」
「フッ……
キミは変わった人間だとは思っていたがこれは嬉しい誤算だ。
希望が見えてきたな」
「でも方向がよくわかりませんね。
できるだけ奴らの巣穴から離れたほうがいいとは思うんですが」
「今横穴を進んでいる感じだろうな。
このあとあの巣穴と平行に掘り進めばおそらく外に出られるはずだ」
「わかるんですか?」
「まぁな。
【方位】というスキルだ。
ソロやパーティリーダーが覚えることが多いスキルだ」
「おぉ、すごく便利ですね」
「いや、方位磁針というアイテムがあれば必要のないスキルだ。
あまり需要はないだろう。
今はアイテムが無いから助かるが」
なるほど。
パーティに一人方位磁針を持っている人間がいればそれほど必要ないのか。
「どうします?
このまま進みますか?」
「そうだな。
残りの体力や食料で考えよう。
狭間君、毒の実はまだあるのか?」
「はい、あと7つあります。
1日1つ食べるとして、3日くらいはもつと思います」
毒の実は糖分が高いから、1日一粒食べればなんとかもつ。
空腹には変わりないが。
「……いいのか?」
「何がです?」
「いや、俺が半分もらってもいいのか?」
「もちろんですよ」
「すまないな。
この状況では俺は役に立ちそうもない」
「僕だけでは方向がわかりませんし、【土魔法】について教えてくれたのはノーツさんですから」
「わかった。
頼む……」
「そうだな。
今日一日くらいはこのまま進もう。
理想的には巣穴の出口から100mくらいは離れたい。
それでもダブルに見つかったら追いつかれるだろうが……」
「了解です」
それからさらに5mくらい進む。
「ん?
ちょっと待ってくれ」
「なんでしょう?」
「場所を代わってくれ。
【土魔法】を習得したようだ」
「おぉ、ナイスタイミングですね」
「一日中土の中にいたことで習得したんだろうな」
なるほど、こういう習得条件もあるのか。
「ただ、俺はMPも少ないし【土魔法】のスキルも今覚えたばかりで0だからな。
まぁやらないよりはマシだろう」
ノーツさんはそう言うと【土魔法】を発動させる。
3mくらい進んだだろうか。
「ダメだ。
MPが尽きた。
代わってくれ」
「わかりました」
僕はノーツさんと場所を入れ替わり、再び掘り進む。
「ノーツさん……」
「どうした?」
「硬い場所に突き当たったようです。
方向を変えたほうがいいですか?」
「……そうだな。
岩に突き当たったというところか」
「だと思います」
「そうすると、できることは限られる。
俺は【土魔法】には詳しくないが、迂回して進むのと、岩を【土魔法】で崩すのでどちらがMPを節約できる?」
「感覚的な予想ですが、迂回したほうがいいかもしれません。
硬いものを崩すよりも、柔らかい土をほったほうがMPが節約できそうです。
ただ、岩の厚さや幅がわからないので大きさによっては……」
「そうか……
賭けだな」
「そうだ。
ちょっと確認してみます」
僕は岩盤に手をあて、魔力操作で周辺を探る。
【魔力操作】が以前よりも上がっていることと【土魔法】のスキルが上がっていることもあり、魔力を流すと周辺がなんとなくわかる。
「これだ……」
僕は岩の下を掘り、岩自体を下げる。
【魔力操作】で多少離れた場所でも【土魔法】で掘ることができる。
「迂回するでも、破壊するでもなくずらすことができました。
MPを節約することができたと思います」
「やるな……」
◇
それから更に掘り進める。
ノーツさんと合わせて40mくらい進んだだろうか。
「MPが尽きました」
「昨日よりもかなり進むことができたようだな。
今日も体力を温存するためにできるだけ動かないようにしておこう」
「わかりました」
僕は【ストレージ】から毒の実を出し入れする。
「どうした?
なにかしているのか?」
ノーツさんに聞かれる。
「はい、【ストレージ】とSP強化のために毒の実を出し入れしています」
「フッ……
キミはこんなときにまで修行か」
そのあとSPも使い切った。
狭間圏
【聖職者:Lv18】
HP:172/172
MP:0/439【聖職者:+48】
SP:0/54(↑+3)
力:21
耐久:40
俊敏:37【聖職者:−2】
器用:14
魔力:29【聖職者:+38】
神聖:65【聖職者:+48】
【土魔法:Lv16(↑+2) 鉱脈探知:Lv0(New)】
【ストレージ:Lv10(↑+1)】
【etc.(25)】




