60日目(異世界)
朝から気分が良い。
メインの狩りも終わったし、清々しい朝だ。
「ぁ、ノーツさん。
おはようございます!」
「……おい、あまり大きな声を出さないでくれ。
頭がガンガンする」
「二日酔いですか?」
「まぁな……
しかし狭間くん、君は全然平気なんだな。
昨日結構飲まされていただろうに」
「えぇ、僕自身も意外でした」
「よぉ狭間!
おめぇなかなか飲めるヤツなんだな!」
「おはようございます!
オルランドさん!」
オルランドさんは昨日ノーツさん以上に飲んだのにピンピンしている。
「ったくうるせぇな……」
「うっぷ……」
カーシーさんやラウールさんは気分が悪そうだ。
ぁ、アルコールって毒なんだろうか。
「そうだ。
【アンチポイズン】してみてもいいですか?」
「あぁ、頼む。
何でも良いから試してくれ」
「【アンチポイズン】!」
ぁ、発動してる……
「おぉ!
気分がスッキリするぞ!
もう一発頼む!」
「はい、【アンチポイズン】!」
どうやら【アンチポイズン】が効いているようだ。
この世界の毒は、痛みがあり、HPにダイレクトにダメージがあるようだったよな。
二日酔いに【アンチポイズン】が効くなら、普通の食中毒とかにも効くんだろうか。
ん?
てことは、僕がアルコールに強いのは【毒耐性】のおかげか?
「おぃ……
俺にも頼む……」
「ぁ、はい。
【アンチポイズン】!」
僕はノーツさん、ラウールさん、カーシーさんを解毒していく。
「しかし、こんなMPの使い方すんのは良くないだろ。
次から気をつけようぜ」
ノーツさんがきっちり反省する。
「それ、毎回言ってるよな……」
「オルランドのせいな」
「なっ!
俺は二日酔いになってねぇぞ!」
「帰りのルートってどうなるんですか?」
僕は空気を読まずに聞いてみる。
「あぁ、来た道と同じだよ。
もうシングルヘッドもいないだろう。
割と安全に帰れるはずだ」
「おぉ、もうシングルヘッドはいないんですか?」
「まぁな、ダブルを狩ってしまえばほとんど出てこない。
去年もそんな感じだった」
「なるほど、それじゃポイズンフラワーの割合があがりますね!」
「おいおい……
さすがは毒喰らいだな」
ラウールさんが呆れている。
「ぁ、そうだ。
騎士団の方で毒の実は余ってるそうだぞ。
もらってきたらどうだ?」
「そうですね!
行ってきます!」
騎士団のテントの方へ行く。
あの少し大きなテントが騎士団長のテントだろうか。
「すみません、どなたかいらっしゃいますか?」
「おや、君は?」
騎士団長がどっしり座っていた。
「もし毒の実が余っていたら、譲っていただきたいんですが……」
「あぁ、君はたしか【エリアヒール】を使っていた者だな?」
「はい、そうです」
「【アンチポイズン】は使えたりするか?」
「はい、使えます」
「そうか、それじゃ二日酔いの騎士たちに使いに行こう。
それが終わったら毒の実をやろう」
「おぉ!
ありがとうございます!」
にしても騎士団長はビシッとしてるな。
「団長は二日酔いにはならないんですか?」
「あぁ、俺は職務があるからな。
何時でも動けるようにしてある。
しかし、昨日のように大型の魔物を倒した日は団員たちには羽を伸ばしてもらいたい。
だから団員は二日酔いになることもある。
今日はそれも想定して、このままここで野営の予定だ。
それに昨日の狩りでMPが枯渇しているからな。
安全のために、だいたいこうなる」
おぉ、すげぇ……
自分はピンピンしてるのに、団員のために1日潰すのか。
人格者だな。
「二日酔いの奴らは集まれ!
毒を抜いてもらえるぞ!」
「おぉ!
ありがてぇ」
「団長の声で頭痛い……」
騎士の方々がぞろぞろと集まる。
「【アンチポイズン】!
【アンチポイズン】!
【アンチポイズン】!」
僕は【アンチポイズン】を連発する。
「こっちも頼むぜ……」
どうやら団長の声は冒険者たちのテントにも聞こえていたようだ。
「【アンチポイズン】!
【アンチポイズン】!
【アンチポイズン】!」
ちなみに、二日酔い冒険者の中にはショーンもいた。
僕は大量の毒の実をもらい、ノーツさんたちのところへ帰る。
「おい、どうする?
例年はここでもう1日野営だろ?」
「まぁな。
回復職のMPが回復しきってないだろう」
「二日酔いがなければ、大した魔物も出ないし出発しちまってもいいじゃねぇか?」
「そうだな、他のパーティリーダーに相談してくるよ」
ノーツさんは他のパーティのテントの方へ相談しに行った。
「今日はこのまま野営だそうだ。
脅威の魔物はいないし、二日酔いも治ったが昨日の疲れもあるからな。
念の為にMPを回復するパーティがほとんどらしい。
狭間君のMPはどうだ?」
げ……
どうしようか。
実は結構あるのだが。
「まだあるっちゃありますね……」
どうにも微妙な返答になってしまう。
「すごいな。
昨日あれだけ【エリアヒール】を使って、さっきだって【アンチポイズン】を使っていただろう。
俺たちも念の為今日はここで野営のほうがいいかと思っていたんだが……」
「そうだな。
やめとこう。
狭間のMPだって有限だろ?」
カーシーさんが気を使ってくれる。
「そうですね。
念の為に休んでおきます」
毎日MPが全快していることは言えない。
なんだかウソをついている気分になってしまうな。
「よし、俺たちも野営だ。
明日にはある程度回復職のMPが回復するはずだ。
今日の酒はほどほどにな」
「ったくもう酒なんて残ってねぇよ」
うぉぅ。
僕があれだけ必死で運んだ酒がもうないのか。
昨日みんなどんだけ飲んだんだろうか。
◇
ということで、特にやることも無く、ショーンのところへ来た。
「おぅ!
さっきは助かったぜ」
「ショーンもお酒には弱いんだね」
「まぁな。
けど、勝利の酒はやめられねぇだろ」
そういうものなのだろうか。
「んで、今日からまた修行ってことか?」
「うん、頼むよ」
「お前さっきも魔法使ってたけどMP大丈夫なのか?」
「ぁ〜……
まぁ程々にはあるよ」
「よし、じゃぁいくぜ?」
「来い!」
◇
今日もひたすらボコボコにされた。
「まるで攻撃が見えないよ……
どうなってるわけ?」
「へっへぇ〜……
昨日ダブルを2匹仕留めただろ?
久々にジョブが上がったわけよ」
マジかよ。
じゃぁさらに強くなったってことか。
「そういえば、ショーンのジョブは何なの?」
「あぁ、言ってなかったか。
【流水槍術士】ってやつだな」
おぉ、強そうだ。
「すごそうだね。
【見習い槍術士】から習得するの?」
「まぁな。
「【見習い槍術士】【槍術士】【上級槍術士】ってのを使ってたら出てきたんだよ」
先は長いな……
「スキルもそうだけど、水属性なの?」
「だな。
【濁流槍】とか【清流槍】には水属性がついてる」
凄いな。
属性付きの技とか強そうだ。
「お前も昨日相当ジョブ上がったろ?」
「うん、【見習い聖職者】から【聖職者】になれたよ」
「は?
お前【見習い聖職者】でそのMP量だったのか?
【エリアヒール】も使ってたし、とことんデタラメだな」
「そうなの?」
「そりゃそうだろ。
相変わらずよくわかんねぇ野郎だな……」
「まぁいいや。
もう少し耐久上げに付き合ってよ」
「わかった、明日のMP残しとけよ」
その後ショーンにさらにボコボコにされたのだった。
狭間圏
【聖職者:Lv18】
HP:107/157(↑+7)
MP:21/431【聖職者:+38】
SP:2/36(↑+1)
力:21
耐久:34(↑+3)
俊敏:36(↑+1)【聖職者:−2】
器用:14
魔力:28【聖職者:+30】
神聖:61(↑+2)【聖職者:+35】
【回復魔法:Lv26(↑+1) ヒール:Lv24(↑+1) アンチポイズン:Lv7(↑+2)】
【盾:Lv10(↑+1) ガード:Lv6(↑+1)】
【etc.(18)】




