59日目(異世界)前編
今日は朝から作戦会議だ。
各パーティのリーダーが騎士団長のところで説明を受けている。
僕たちのパーティリーダーはノーツさんだ。
ノーツさんが駆け寄ってくる。
どうやら作戦会議が終わったらしい。
「今騎士団長から説明があった。
まず、隊列だ。
俺たち盾戦士やタンクが先頭だ。
その後ろにオルランド、ラウールたちの前衛。
その更に後ろに物理攻撃の後衛、カーシーだな」
【盾戦士】ノーツさんが先頭、その後ろに【斧戦士】オルランドさん、【剣士】のラウールさん、さらに後ろに【アーチャー】のカーシーさんだ。
「一番うしろが回復だ。
狭間くんもそこだな。
それから回復のところには副団長が入るらしい。
副団長は【盾騎士】だ。
回復が狙われたときに守ってくれるそうだ」
「はい、わかりました。
ありがたいですね」
「戦闘については、隊列を守ったままシングルヘッドをひたすら狩る。
ダブルヘッドが出たら、騎士団長と槍使いのショーンで対応するようだ」
「あの槍使いか。
確かにあいつと騎士団長がいれば仮に2匹同時に出てきても倒しそうな勢いだな」
ラウールさんが軽く笑って言う。
「それから狭間くん、君は基本的に戦闘中は何もしないでくれ」
「ぇ?」
「魔物の発生には一定のリズムがある。
魔物の湧きが止まったら、副団長のところに怪我人が一気に集まる。
そのときに【エリアヒール】を頼む。
戦闘中は他の回復職に任せるんだ」
「なるほど、そういうことでしたか」
MP節約のためか。
確かにその作戦ならMPの消費は抑えられそうだ。
「作戦は聞いたか!」
大きな声が騎士の方から聞こえてくる。
「今年はシングルヘッドが多い!
ダブルが2匹出るかもしれん!
稼ぎどきだ!
我々で2匹仕留めれば、去年の2倍の報酬だぞ!
冒険者諸君!
共に来てくれ!」
「おぉぉ!」
騎士団長だ。
よく通るゴツい声だな。
思わず僕もみんなと叫んでしまった。
士気が上がるとはこういうことか。
ワクワクしてきた。
総勢40〜50人のパーティだ。
隊列を乱さないように進むと、最初の狩場が見える。
すげぇ……
シングルヘッドがわんさかいる。
「うぉぉぉ!!」
ノーツさんの【咆哮】だ。
こんなに敵がいるのに【咆哮】使って大丈夫なんだろうか。
と思った瞬間、他の盾職の人たちも叫んだり、光ったりしている。
恐らく魔物の注意を引きつけるスキルのたぐいだろう。
「ウガァッ!」
「ウゴォッ!」
ドドスッ!ドドスッ!
シングルヘッドの大群が先頭の盾集団に迫る。
バギンッ!
ザシュッ!
ドガッ!
凄まじい金属音が地響きと共に響き渡る。
前衛がスキルを使いまくっているのだろう。
「【ヒール】!」
「【ハイヒール】!」
「【プロテクト】!」
「【ヒール】!」
「【ヒール】!」
僕の周りの回復職も魔法を使いまくっている。
凄い勢いだな。
MPはどんどん減るだろう。
しかし、僕は見ているだけだ。
あぁ!
せめて【エアブレード】をブチかましたい!
僕は士気が上がり、高揚感のみがあるが何もできずに戦場を見ている。
騎士団長の武器は大剣だ。
両手でデカイ剣を振り回し、シングルヘッドの巨体を吹き飛ばしている。
騎士団長も相当な手練だろう。
【剣士】のラウールさんが1対1で仕留めたシングルヘッドを次々に吹き飛ばしている。
そしてショーンさんの動きも半端ではない。
あれは恐らくこの前使った【濁流槍】だ。
突きが早すぎて残像が見える。
その他の前衛も弓などの支援もあり、1対1、もしくは1対2くらいでシングルヘッドを圧倒している。
ジョブレベルの上昇が半端ではない。
あれだけいたシングルヘッドがあっという間に殲滅される。
「少しでもHPが減ったものはこっちへ来い!」
副団長が叫ぶと、前衛が小走りで集まる。
「無傷のものは急いで素材を回収してくれ!」
騎士団長が叫ぶ。
ぞろぞろと前衛が集まってきた。
「おい、【エリアヒール】頼む」
「はい!
【エリアヒール】!」
僕は【エリアヒール】を連発する。
次々と人が入れ替わり、全員の回復が終わる。
どうやら【エリアヒール】が使えるのは僕だけのようだ。
もしや、かなり良いスキルなのでは……
副団長が回復職の残りMPを確認する。
まだまだみんな残っているようだ。
僕のMPもまだかなりある。
「よし!
素材回収が終わったな!
呼吸を整え、最低限のSPを回復させろ!」
数分間の休憩が入る。
「次のエリアへ行くぞ!」
「おぉぉ!」
僕はまた勝手に叫びだしてしまう。
騎士団長はなにか士気を上げるスキルでも発動させているのだろうか。
次のエリアが見えてくる。
またもシングルヘッドがわんさかいる。
!!
いた!!
あれがダブルヘッドだ!
シングルヘッドより一回り大きく、鮮やかな銀色だ。
頭が二つあるだけでなく、手足が4本ずつある。
ボスキャラの威厳のようなものがあり、見るからにヤバそうだ。
ショーンさんと騎士団長が【盾戦士】よりもさらに前に出る。
彼らはうなずくとダブルヘッドに突っ込んでいく。
【盾戦士】たちが後から続き、叫びだす。
「うぉぉぉ!!」
魔物の、特にシングルヘッドたちの注意を引きつける。
「ウガァッ!」
「ウゴォッ!」
ドドスッ!ドドスッ!
地響きがする。
さっきと同じように、シングルヘッドたちが前衛と戦いだす。
違うのは、ショーンさんと騎士団長がシングルヘッド殲滅に加わっていないことだ。
ダブルヘッド相手に二人がかりで攻め立てている。
「【ヒール】!」
「【ヒール】!」
「【ハイヒール】!」
「【プロテクト】!」
周りの回復職が魔法を発動させる。
僕はというと、また何もしていない。
ダブルヘッドの方を見ると、ショーンさんと戦っている。
速すぎてよく見えない。
騎士団長は大剣を掲げている。
おぉ!
大剣が青白く光る!
来るぞ!
「【大地斬】!」
ドゴォォォ!
轟音とともに、地面が揺れる。
地面に数メートルの亀裂が走る。
なんてこった。
ものすげぇ威力だ。
ダブルヘッドに直撃だ。
「ウゴォォォ!!」
耳を劈くような唸り声を上げる。
まだ生きてるのか!?
ショーンさんが弱っているダブルヘッドに【濁流槍】を繰り出している。
周りの前衛も必死にシングルヘッドを殲滅している。
ショーンさんと騎士団長が殲滅に加わっていないので、先程より殲滅力が落ちているのだ。
「来るぞ!
2匹目だ!」
騎士団長が叫ぶ。
マジか!
ドドスッ!
ドドスッ!
奥からダブルヘッドがもう一体突進!
ドガッ!
ズザァー!
騎士団長を吹き飛ばす。
ちょっ!
これヤバくないか!?




